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漢方の副作用の1つである肝障害の症状と頻度を医師が解説

漢方  

こんにちは。加藤隆佑です。

漢方を飲むときに、副作用で肝障害が、出現しないか不安になる方がいます。

また、主治医に漢方を飲んでいることを伝えると、「漢方は、肝障害がでることがあるから、オススメしない」と言われる方もいます。

しかし、漢方で、肝障害が出現することは、そんなに多いのでしょうか?

そのことについて、解説していきます。

肝障害が出現する事による症状は?

ほとんどの方は症状がなく、軽度の肝障害であることが、多いです。

しかし、肝機能障害が強いと、倦怠感、発熱、発疹、かゆみといった症状が出ることがあります。

放っておくと重症化し、命に関わることもありえるので、原因となる薬を止めることが、必要です。

薬剤性の肝障害が起きる理由は?

肝臓は、食物や薬物などの、代謝や解毒を行っている臓器です。そして、薬物が原因で起こる肝臓の炎症を、薬物性肝障害と呼びます。

実は、全ての薬物、漢方薬や健康食品、サプリメントで、薬剤性肝障害が生じる可能性があります。

そうような話を聞くと、とても不安になるかと思います。

しかし、漢方に限って言うと、実際に、肝障害を引き起こす頻度は、非常に低いのです。

実際に、どの程度の頻度で、肝障害が起きるかを、何個かの漢方を例に、説明いたします。

大建中湯という漢方による薬剤性肝障害の頻度は?

3269人を対象にした安全性を調べた調査があります。

肝障害が出現したのは、11例、つまり、0.4%でした。

また、肝障害以外にも、副作用は、出ていますが、計64例(約1.95%)に出現しただけでした。

そのうち、命に関わる副作用は1例だけであり、それ以外の副作用は、軽い副作用でした。

ちなみに、大建中湯は、手術のあとに、腸閉塞になることを防ぐことが期待できる漢方です。

芍薬甘草湯という漢方による薬剤性肝障害の頻度は?

2975人を対象にした安全性を調べた調査があります。

肝障害が出現したのは、1例(0.03%)だけでした。

また、肝障害以外にも、副作用は、出ていますが、計33例(約1.1%)に出現しただけでした。

そのうち、命に関わる副作用は1例だけであり、それ以外のものは、軽い副作用でした。

ちなみに、芍薬甘草湯は、副作用が出やすいから注意して扱うようにと教えられている漢方の1つです。

そのような漢方であっても、調査してみると、実際の副作用の頻度は、案外、低かったのです。

補足事項ですが、芍薬甘草湯は、痛みを取ることを得意とする漢方となります。

人参養英湯という漢方による薬剤性肝障害の頻度は?

808人を対象にした安全性を調べた調査があります。

肝障害の出現を、認めませんでした。

また、それ以外の副作用は、出ていますが、計25例(約3.09%)に出現しただけでした。

そのうち、命に関わる副作用は1例だけであり、それ以外のものは、命に関わらない軽い副作用でした。

補足事項ですが、人参養英湯は、免疫力と、体力をアップさせる力を持つ漢方です。

がんの治療においても、用いられることが多いです。

漢方薬の平均的な肝障害の頻度は?

これまで、個別の漢方に関しての、肝障害の頻度を説明いたしました。

漢方全体においても、頻度は約0.1パーセントとされています。

そして、発症時期は、1から2ヶ月目が最も多いです。3ヶ月以内に発症することが大半です。

原因となる漢方をとめると、ほとんどのケースにおいて、3ヶ月以内に肝機能はほぼ正常化します。

ちなみに、頻度は低いならが、漢方には、肝障害以外にも副作用はあります。

病院で処方される薬でも、薬剤性肝障害になる?

病院で処方される薬剤の方によって、肝障害を引き起こすことはあります。

たとえば、よく処方される胃薬の1つで、ガスターという薬があります。

ガスターによって、肝障害が出現する頻度は、0.65%です。

ガスターは、今回ご紹介しました、漢方よりも、肝障害を引き起こす可能性は、高いともいえます。

頻度的な視点からは、漢方による肝障害よりも、西洋薬による肝障害に、より注意を払わないといけないのかもしれません。

がんの治療中のおける漢方の役割とは?

漢方は、がんの治療において、重要な役目を果たします。

たとえば、以下のような効果が期待できます。

  • 抗がん剤の副作用の軽減
  • がんの増殖の制御

そして、漢方の副作用が原因で、がんの治療がスムーズに行えなくなる頻度は、めったにありません。

そうである以上、がんの治療において、漢方を加えない理由は、ないのです。

がんの治療中における漢方の効果については、こちらで詳しく説明しています。

 

 

 

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医

札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」と、「大腸がんと告知されたときに読む本」を出版。

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