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アベマシクリブ(ベージニオ)のホルモン受容体陽性乳がんへの効果と副作用を解説

こんにちは。加藤隆佑です。

2018年の11月より「ホルモン受容体陽性で、再発やステージ4の乳がん」に対して、ベージニオというお薬が、処方できるようになりました。

一般名は、アベマシクリブです。

アベマシクリブ(ベージニオ)は、サイクリン依存性キナーゼであるCDK4およびCDK6を特異的に阻害することでがん細胞が増殖するのを制御する、内服の分子標的薬です。

ちなみに、バージニオと同じタイプのお薬はイブランス(パルボシクリブ)です。

ベージニオの効果と、臨床試験での結果について

ベージニオは、ホルモン受容体陽性HER2陰性の進行もしくは再発した乳がんの方に、用いられます。

そして、臨床試験では、良い治療効果が、でました。

「ベージニオ+(ホルモン療法の1種である)フルベストラント」併用療法は、フルベストラント単独よりも、より強力にがんを制御することが、できたのです。

ちなみに、ベージニオは、がんを劇的に縮小させることを目的に使うお薬ではありません。

がんの成長を長期間に渡って、とめることを、主な目的にします。

ベージニオの服用方法と副作用

ベージニオで、よくある服用方法は、以下の通りです。

「フルベストラントを併用しつつ、ベージニオを1回150mgを1日2回経口投与する。」

そして、よくある副作用は、以下の通りです。

  • 好中球減少:46%
  • 感染症:40%
  • 下痢:86%
  • 吐き気:45%
  • 疲労感:39%
  • 脱毛:15.6%

ベージニオの副作用で悩まされるならば、ベージニオを飲む量を減らすとよいです。

1回50 mg 1日2回(1日用量として100 mg)まで減らすことができます。

ちなみに、減量したとしても、治療成績が落ちることはないと、されています。

また、1回50mgに減量しても副作用に悩まされ続けるならば、薬を変更すべきです。

具体的には、「ベージニオと兄弟的な薬であるイブランスという薬剤」に、変更するとよいでしょう。

イブランスに関しては、こちらで詳しく解説しています。

ホルモン受容体陽性の再発乳がんの治療方針

最後に、最近のホルモン受容体陽性の再発乳がんの治療方針だけ、まとめます。

1)手術後にホルモン療法をしなかった場合

1次治療

アロマターゼ阻害薬、もしくは、「アロマターゼ阻害薬+イブランス」、もしくは「フルベストラント±(イブランスもしくはベージニオ)」

特に以下の場合は、アロマターゼ阻害薬ではなく、「イブランスもしくはベージニオ」を併用した治療にした方がよいとされています。

複数の内臓(3臓器以上)に転移している場合

2次治療

「フルベストラント±(イブランスもしくはベージニオ)」「アフィニトール±エキセメスタン」などこれまでの治療経過を踏まえて判断

2)手術後にタモキシフェンによるホルモン療法をして、早期に再発した場合

1次治療

アロマターゼ阻害薬、もしくは、「アロマターゼ阻害薬+イブランス」、もしくは「フルベストラント±(イブランスもしくはベージニオ)」

特に以下の場合は、アロマターゼ阻害薬ではなく、「イブランスもしくはベージニオ」を併用した治療にした方がよいとされています。

  • 複数の内臓(3臓器以上)に転移している場合
  • ホルモン療法治療中の再発

2次治療

「フルベストラント±(イブランスもしくはベージニオ)」「アフィニトール±エキセメスタン」など、これまでの治療経過を踏まえて判断

3)手術後にタモキシフェンによるホルモン療法をして、かなり時間を経過して再発した場合

1次治療

アロマターゼ阻害薬、もしくは、「アロマターゼ阻害薬+イブランス」、もしくは「フルベストラント±(イブランスもしくはベージニオ)」

特に以下の場合は、アロマターゼ阻害薬ではなく、「イブランスもしくはベージニオ」を併用した治療にした方がよいとされています。

複数の内臓(3臓器以上)に転移している場合

2次治療

「フルベストラント±(イブランスもしくはベージニオ)」「アフィニトール±エキセメスタン」など、これまでの治療経過を踏まえて判断

4)手術後にアナストロゾールもしくはレトロゾールによるホルモン療法をうけて、早期に再発した場合

1次治療

「フルベストラント±イブランス」、もしくは「アフィニトール±エキセメスタン」、もしくは「フルベストラント±ベージニオ」など

2次治療

これまでの治療経過を踏まえて判断

5)手術後にアナストロゾールもしくはレトロゾールによるホルモン療法をうけて、晩期に再発した場合

1次治療

アロマターゼ阻害薬、もしくは、「アロマターゼ阻害薬+イブランス」、もしくは「フルベストラント±(イブランスもしくはベージニオ)」

特に以下の場合は、アロマターゼ阻害薬ではなく、「イブランスもしくはベージニオ」を併用した治療にした方がよいとされています。

複数の内臓(3臓器以上)に転移している場合

2次治療

これまでの治療経過を踏まえて判断

イブランスという薬剤の効果がない人にベージニオは推奨できるのか?

イブランスとベージニオは兄弟的な薬です。

さて、イブランスによる治療を受けている方で、イブランスの効果が乏しくなった時のことを考えてみます。

そのようなときに、ベージニオに変更しても、治療効果は期待できないと予想されます。

しかし、一部の臨床試験では、4割くらいの方には、バージニオによる治療効果がでたという報告もあります。

イブランスの効果がでなくなったときに、状況が許されるならば、ベージニオへの変更も選択肢の1つになるのでしょう。

さて、再発やステージ4の乳がんで、加えるべき治療は、薬物療法だけではありません。

詳細はこちらで、学ぶことができます。

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医

札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」と、「大腸がんと告知されたときに読む本」を出版。

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