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膵臓がんが再発した時の症状を、再発部位ごとに医師が解説!

こんにちは。加藤隆佑です。小樽協会病院というところで、がんを専門に診療をしています。

再発とは、手術などにより、いったんは治ったように見えたがんが、再び出現してきた状態をいいます。

そして、すい臓がんの手術後、一番気がかりなのが、再発しないかということです。

本日は、すい臓がんが再発したときの症状を、再発部位ごとに解説いたします。

同時に、すい臓がんが再発しやすい場所も、説明いたします。

すい臓がんが再発しやすい場所は?

膵臓がんが再発する場合には,腹膜再発、肝臓への再発、リンパ節への再発,手術をした近傍への再発、肺への再発が多いです。

そして、骨・脳などの臓器に再発することも、あります。

大半のケースにおいて、手術を終えて5年以内に再発しますが、5年後以降に再発することも珍しくありません。

10年を過ぎれば、再発の危険は、ほとんどないです。

腹膜播種として再発した場合の症状

お腹の中に、腹膜という部位があります。そこに、種がまかれるように、バラバラと、がんが広がることを腹膜播種(ふくまくはしゅ)と言います。

すい臓がんにおいては、腹膜播種の形態で再発することは、多いです。

腹痛や便秘といった症状が出ます。

腹膜播種がひどい状況になると、腹水がでて、お腹がはります。

お腹がはることがきっかけで、すい臓がんの再発がわかることは、珍しくありません。

すい臓がんの術後に、お腹がはるという症状がでたときには、早めに病院を受診しましょう。

もし、腹膜播種として再発した場合には、抗がん剤治療が中心となります。

そして、非常に強力に、腹膜播種を制御するための特殊な治療法が、あります。

お腹の中に、直接抗がん剤を投与するという方法です。

腹腔内化学療法と言われます。腹腔内のがん細胞を制御するのに、有効な治療法です。

それによって、腹膜播種が綺麗に、消えるケースも、あります。

問題点として、この治療法が広く普及はしておらず、一部の施設でしか行われていないことです。

すい臓がんで腹水多量で、お腹がパンパンになったときの対処法

腹水でお腹が張って辛いという症状をとるために、小さな針をお腹にさして、腹水を抜くことがあります。

腹水だけを抜くと、体の栄養成分も、抜けてしまうことが、注意点として、挙げられます。

そのことを避けるために、腹水を抜いた後に、腹水を「ろ過+濃縮」して、腹水の中の栄養分だけを体内に戻す、腹水ろ過濃縮再静注法(CART)を行うことがあります。

肝臓に再発した場合の症状とは?

「再発したがんが、肝臓の大半を、占拠した段階」に至ってから、肝臓に再発したことによる症状がでることが多いです。

例えば、黄疸といった症状です。

肝臓に再発しても、初期の段階では、症状はでないでしょう。

ちなみに、採血で肝機能障害が出現した時に、「肝臓に再発したからだろう」と心配される方が多いですが、そうではありません。

大半のケースは、がん以外の原因です。例えば、薬剤による肝機能障害などです。

ちなみに、肝臓に再発した場合は、抗がん剤治療で制御していくことになります。

もし、肝臓への再発の数が少数であり、肝臓以外にがんが存在せず、さらに、肝臓のがんの状態が長期間にわたって落ち着いているときは、以下の治療法が検討されることもあります。

  • 放射線治療
  • 手術

リンパ節に再発したときの症状

リンパ節に再発した場合であっても、初期の段階では、症状はありません。

しかし、リンパ節に再発したがんが、大きくなると、症状がでることがあります。

大きく腫れたリンパ節が、神経に触れれば、痛みがでます。

腫大したリンパ節が、臓器を圧排すれば、それに伴う症状が出ます。例えば、腫大したリンパ節が、胆汁の流れ道を、押しつぶせば、黄疸が出現するといった感じです。

どの部位のリンパ節に再発して、さらにそのリンパ節がどの程度、腫れるかによって、症状は異なります。

ちなみに、リンパ節に再発している癌は、抗がん剤治療で制御していくことになります。

もし、リンパ節への再発が、一部分だけにとどまるときは、放射線治療を検討することもあります。

肺に再発した場合の症状

がんが、肺のスペースをかなり占拠しないかぎりは、症状はほとんど出ません。

がんが大きくなると、以下のような症状が出現します。

  • 呼吸困難

ちなみに、肺に再発した場合は、抗がん剤治療で制御していくことになります。

もし、肺への再発の数が少数であり、肺以外にがんが存在しなければ、以下の治療法が検討されることもあります。

  • 放射線治療
  • 手術

局所再発したときの症状

もともと、がんがあった周囲に再発することを局所再発といいます。

局所再発したがんの症状が、周囲の臓器を圧迫することにより、痛みといった症状がでます。

治療としては、抗がん剤治療と同時に、放射線治療を検討します。

骨に再発している場合の症状

すい臓がんが、骨に再発することは、頻度は低いですが、ありえます。

症状として、骨の痛みや、骨折といったことが挙げられます。

さて、骨転移に対する治療としては、薬物療法と、放射線治療です。

薬物療法では、骨粗しょう症の治療薬を用います。骨の転移による骨折を予防するためです。具体的には、ビスフォスフォネート製剤やランマーク(デノスマブ)という名称の薬を服用します。

放射線治療では、痛みの緩和や、骨折の危険性が高い場合に、行われます。

同時に抗がん剤治療になります。

脳に再発した場合の症状

すい臓がんが脳に再発することは、頻度は低いですが、ありえます。

脳に膵臓がんが再発したときの症状は、頭痛・嘔吐・麻痺・けいれんなどですが、再発する場所によっても症状が異なります。

また、小さな再発巣でもけいれんなどの症状が出ることもあれば,相当大きくなるまで症状が出ない場合もあります。

さて、脳への再発には、放射線治療による効果が期待できます。

脳全体に放射線を照射する「全脳照射」と、再発がある部分にのみ放射線を照射する「定位放射線治療」があります。

ちなみに、「定位放射線治療」は、ピンポイント照射と言われ、高用量の放射線を、ピンポイントで当てます。

再発の個数が少ない場合は、「定位放射線治療」になります。再発の数が多い場合は、「全脳照射」になります。

「全脳照射」に「定位放射線治療」が併用されることもあります。

その治療により、脳に再発したがんを、完全に消すこともできます。

さて、膵臓がんの再発を早期に発見すると、膵臓がんを治癒にもっていける可能性は、高くなることが、あります。

だからこそ、膵臓がんの再発を疑わせる症状があるときには、早く病院を受診しましょう。

万が一、再発してしまったときの治療法の詳細はこちらです。

また、膵臓がんが再発することを回避するために、取り入れるべきことも、あります。

再発を回避する秘訣は、こちらで学ぶことができます。

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医

札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」と、「大腸がんと告知されたときに読む本」を出版。

加藤隆佑医師の論文

加藤隆佑医師のプロフィールの詳細はこちら

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