胃がんの治療の流れ|症状と診断ならびに治療を医師が解説
こんにちは。加藤隆佑です。がん治療の専門医として、小樽協会病院で勤務しています。
さて、私の17年間の胃がん治療の経験を踏まえて、胃がんの治療の流れと、胃がんを克服するためのコツを書いていきます。
目次
胃がんの症状
胃がんは、かなり進行しても、症状がでない場合があります。代表的な症状は、胃の痛み、不快感、胸やけ、吐き気、食欲不振です。
しかし、これらは胃がんに特有の症状ではありません。食べ過ぎでも生じる症状です。検査をしなければ、診断はできませんので、医療機関を受診し、検査を受けましょう。
特に、体重が減るという症状の場合は、背景にがんを強く疑わせる症状なので、注意が必要です。
もし、胃がんであることが判明したら、胃がんが、どのくらい広がっているか(ステージ)を調べないといけません。
胃がんは、ステージによって、治療方針が異なるからです。
胃がんの診断と、ステージの決め方
胃カメラの検査により、胃がんを疑わせる病変があれば、病変から細胞を採取します。その結果より、胃がんであることが確定します。
胃がんがあることが確定したら、CT検査を受けてもらうことにより、ステージを決めることができます。
胃カメラの検査とCT検査より、以下の状況を把握できます。
- どの程度、胃の粘膜に、がんが、食い込んでいるか?
- 転移しているリンパ節の数
- 遠くの臓器(肺、肝臓、腹膜など)に転移しているか?
以上の情報をもとに、ステージは決定します。
ステージの詳細は以下の表の通りです。
ステージを決める最大の目的は、治療方針を決めることにあります。
複雑にみえるステージのことは気にしないで、あなたが、以下のうちの、どの段階にいるのかを、知っていただくことが、大切です。
- 内視鏡治療で治癒が望める段階
- 手術で治癒が望める段階
- 手術はできない段階であり、抗がん剤治療が必要な段階
次に、ステージ別の治療法を簡単に解説します。
胃がんのステージに応じた治療法
ステージ0の胃がんの治療方針
内視鏡的な治療で、切除します。それにより、治癒します。
胃がんステージ1
腹腔鏡もしくは開腹による手術で切除したら、治療は終了です。その後は、再発してこないか、外来で経過をみることになります。
胃がんステージ2
腹腔鏡もしくは開腹による手術で、胃がんを取り除きます。その後は、しばらくの間、抗がん剤によって、再発率を下げる治療を受けていただくことになります。
がんを手術で全部切除できたように見えても、その時点で、すでにがん細胞が別の臓器に転移している可能性があるからです。
術後の抗がん剤治療は、負担のない範囲で抗がん剤治療を受けることは大切です。
以下のような抗がん剤を、投与されることが多いです。
TS-1(ティーエスワン)という飲み薬を1年間
胃がんステージ3
腹腔鏡もしくは開腹による手術で、胃がんを取り除きます。その後は、しばらくの間、抗がん剤によって、再発率を下げる治療を受けていただくことになります。
がんを手術で全部切除できたように見えても、その時点で、すでにがん細胞が別の臓器に転移している可能性があるからです。
術後の抗がん剤治療は、負担のない範囲で抗がん剤治療を受けることは大切です。
このような治療により、再発率は、数%下がります。
しかし、それだけでは、十分な治療効果とは言えません。さらに、漢方や、薬膳的な食事といった東洋医学的なことを、加えましょう。
再発する確率を、さらに、0に近づけることができます。
この段階で、漢方や、食事療法を取り入れることは、非常に重要なのです。
例えば、愛知がんセンターから、以下のような報告があります。
877症例の胃がんの手術後の生存率と食生活の関連を検討。
豆腐を週に3回以上食べていると、再発などによるがん死の危険率が0.65に減り、生野菜を週3回以上摂取している場合の危険率は0.74になる。
上記のデータは、胃がんの再発率と、食事内容に関係があるというデータです。
データでも、食事が、がんの治療成績が良くすることは、示されているということです。
さて、胃の切除のために、思ったように食事が取れなくなることが、あります。また、ダンピング症候群で、悩まされることもあります。
そのような時も、食事療法を取り入れると良いです。
胃がんの手術後の体重減少を最低限にするコツ
胃がんで、胃を全摘すると、半年間で、平均、約10%の体重減少になると言われています。そして、そこから、少しずつ体重が増えるケースが多いです。
以下のような理由で、体重は減ります。
- 食欲低下
- 下痢
- 運動量の低下
体重減少を最小限にとどめたいところです。
最近になり、エレンタールという栄養剤を飲むと、体重の低下を最低限に抑えることができることが、判明しました。
主治医に、処方してもらいましょう。
また、漢方も、体重の低下を、抑えてくれます。
胃がんステージ4(もしくは再発)
肝臓、肺、腹膜、複数のリンパ節に、がん細胞がある状態のことです。この状態は、がん細胞が、体に広く散らばっていると予想されます。
手術による治療では、がんをすべて取り除けないために、抗がん剤治療が中心となります。
抗がん剤であれば、がんを倒す薬の成分を、体の血流にのって、体中にひろがったがん細胞に、行き渡らせることができるからです。
その治療により、体に広く散らばっているがんが、制御できたと予想される場合は、根治を目指した手術が、なされることも、あります。
胃がんは、完治を望める病気になりました。
胃がんは、以前に比べると、克服できる病気になってきました。
一方で、さらに、生存率をあげたり、再発率をさげるために、病院の治療に加えて、取り入れるべきことも、あります。
病院で受ける治療は大切ですが、それだけでは、十分ではないのです。
そのために、あなたに知って欲しいことがあります。
さらに高い確率で、完治の段階に、持ってこれるようになります。