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胃がんの腹腔内化学療法の治療成績を医師が解説

こんにちは。加藤隆佑です。

胃がんが腹膜に転移している時の治療法の1つに、腹腔内化学療法は有効な治療方法の1つです。

その治療が、具体的にどのような治療なのか?どの程度の治療効果があるかについて、解説します。

腹腔内化学療法は、どのような治療法か?

腹腔内に、直接、抗がん剤を散布することにより、腹膜に転移しているがんを、制御することを試みる治療法です。

抗がん剤をお腹に中に注入するために、皮下にポートを埋め込む必要があります。

そうすることにより、お腹の中に、容易に抗がん剤を投与することができるようになります。

腹腔内化学療法のメリットは?

全身への抗がん剤投与と異なり、腹腔内への抗がん剤投与は局所的に抗がん剤の濃度を高く保つことができ、また全身の副作用を抑えることができます。 

しかし、実際は、全身への抗がん剤投与と並行して、腹腔内への抗がん剤投与が行われることが多いです。

例えば、以下のようなスケジュールでやられます。

 

21日を1サイクルとする。

1日目、8日目にパクリタキセルという抗がん剤を腹腔内と静脈内に投与

1日目から14日目まで、連日でTS−1という抗がん剤の内服

腹腔内に投与するパクリタキセルの量は、生理食塩水250ccに溶かして、体表面積あたり20ミリグラム

 

治療効果判定は?

ポートから腹水を採取して、がん細胞を確認できなくなったら、腹腔鏡を用いて、腹膜播種の状態を確認します。

その結果、腹膜播種が非常に改善していたら、胃のがんの部位を切除することを試みるケースが多いです。

腹腔内化学療法の治療実績は?

この治療を非常にたくさんやっている施設の最近の治療成績は以下の通りです。

胃がんと診断されて、腹膜にも転移していて、ステージ4の診断となった78例の患者さんに、腹腔内化学療法を併用した抗がん剤治療を受けていただく。

その結果、30%の患者さんに該当する23例の患者さんは、非常に良くなり、完治を目指した手術を受けることが、できるようになる。

手術後も、しばらくは、腹腔内にパクリタキセルを投与する治療を続ける。

23例のうち、13例は現在も、再発していない状態であり、13例のうちの3例は、抗がん剤もオフになっている状態。

また、手術後、がんが再発していない期間の中央値は、約27ヶ月

生存期間の中央値は、38ヶ月

平均、5ヶ月くらいの治療を受けて、手術になるケースが多い。

腹腔内化学療法は、非常に有効な治療法の1つですが、広くは普及はしていません。

保険診療にも、なってはいません。しかし、試みる価値が高い治療でも、あります。

このように、広くは普及はしていなくても、非常に有効な治療法というのは存在します。そのような治療を、うまく利用すると良いですね。

それ以外にも、こちらで、あなたが試みる価値が高い治療について学ぶことができます。

 

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医

札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」と、「大腸がんと告知されたときに読む本」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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