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乳がんの検査の方法と費用ならびに検査の期間を医師が解説!

こんにちは。加藤隆佑です。

ライフスタイルや食生活の変化により、乳がんにかかる日本人女性が急増しました。

約10人に1人がかかります。

40歳代という比較的若年層が、もっともかかりやすい傾向があります。女性ホルモンや遺伝が関係します。

特に、以下のような方は、かかりやすいです。

  • 出産経験がない、初産が高齢
  • 閉経後の肥満
  • 血縁者に乳がんになった人がいる

もし、あなたが、乳がんを疑わせる症状がある時は、検査を受けて欲しいです。

乳がんは、早期発見できれば、完治が望める病気だからです。

本日は、乳がんの診断のために、必要な検査と、検査の費用、ならびに検査の期間を、解説いたします。

さらに、私の17年間のがん治療の経験と、医学的なデータをもとに、乳がんを克服するコツを説明いたします。

乳がんの初期症状とは?

乳がんは、検診を受けて、指摘される場合や、自分で触った時に、しこりとして、気付くことが多いです。

一方で、遠くの臓器に転移したような進行した状態で、乳がんが見つかる場合もあります。進行した状態であっても、症状に乏しいときがあるのです。

乳がんと診断されたときに、腰、背中、肩の痛みが続く場合には、骨への転移が疑われます。

脇の下のリンパ節が腫れている場合は、リンパ節への転移が疑われます。

乳がんを疑う症状がある時に行われる検査とは?

マンモグラフィー検査と、超音波検査が行われます。

乳がんのマンモグラフィー検査とは?

乳房のレントゲンのことです。

立った状態で、乳房を圧迫して、通常のレントゲンより小さな物体を写し出す能力のある機械で、乳房のレントゲン写真を撮影します。

一人あたり5分くらいで、検査を終えます。ある程度の痛みを伴います。少し我慢していただくことになります。

圧迫をしっかりすることの利点は、以下の通りです。

  • 圧迫により乳房が薄く伸ばされ、乳がんを発見しやすくなる
  • 乳房の厚さが薄くなることで、被ばくを少なくすることができる。
  • 圧迫により乳房が固定され、ブレのない鮮明な写真を撮ることができる。

マンモグラフィーは、乳がんの非常に初期にでる石灰化を検出するのに、優れています。

放射線被曝を伴いますので、30歳未満の方は推奨されません。

また、若い方の乳房は、脂肪が少ないために、マンモグラフィーをしても、乳がんを見逃される危険が高くなります。

そういう意味合いにおいても、30歳未満にはマンモグラフィーは推奨されないでしょう。

高濃度乳房(デンブレスト)とは?

乳房には、乳腺と脂肪が混在しています。

そして、脂肪の割合が少ない乳房を、高濃度乳房(デンブレスト)と呼ばれます。

日本人女性の40歳以上の4割が、高濃度乳房(デンブレスト)と言われています。40歳未満の方ですと、その割合はもっと多いです。

そして、脂肪の割合がすくないと、マンモグラフィーにおいて乳がんを検出しにくくなることが、わかっています。

つまり、高濃度乳房(デンブレスト)の方は、マンモグラフィーで乳がんを指摘されなくても、実は乳がんが隠れている可能性が、高くなります。

したがって、高濃度乳房(デンブレスト)の方は、「マンモグラフィー+超音波検査」もしくは「超音波検査」を受ける方がよいでしょう。

また、マンモグラフィーの検査を受けた方は、ご自身が高濃度乳房なのかを、検査結果のときに聞いておいた方がよいです。

さて、先ほど、30歳未満の方は、マンモグラフィーを受けるべきではないと書きました。

その理由のもう1つが、乳がんにかかる確率を、跳ね上げてしまうことがあるからです。

そのことについては、こちらに詳しく書いています。

乳がんの超音波検査とは?

超音波検査は、超音波を発生する機械を用いて、仰向けに寝た状態で、乳房の中をくまなく観察します。

マンモグラフィのような痛みもありません。

しかし、検査時間がやや長くなります。

乳腺内の病変の描出に優れていています。

乳腺が豊富な20歳代、30歳代の女性は、マンモグラフィーではなく、超音波検査を受ける方が有効でしょう。

乳がんの検診は、どのような間隔で受ければ良い?

厚生労働省では、市町村が行う乳がん検診に対して、以下のような推奨をしています。

「40歳以上の女性の方は、2年に1回マンモグラフィーを受ける。」

しかし、「個人的に受ける検診(人間ドッグなど)」であれば、1年に1回の乳がん検診が、よりよいでしょう。

そして、毎年乳がんの検診を受けるのであれば、マンモグラフィーは被曝を伴うので、超音波検査がよいです。

私の意見になりますが、30歳以上の方は、毎年乳がんの検診を受けた方が良いと考えています。

さて、以上の検査により、乳がんが疑われた場合には、病理検査が必要となります。

乳がんの病理検査とは?

乳がんの細胞診検査

ベッドに横になり、手や超音波検査でしこりの位置を確認します。

そして、細い針を刺し、注射器で吸引して細胞を採取します。

麻酔をしないので少し痛みを伴いますが、簡便にできる検査です。結果が出るまで数日から一週間かかります。

ただし、細胞診において、がん細胞が検出されなくても、実はがんということがあります。

たとえば、「硬がん」「乳頭腫」という乳がんは、がん細胞と正常細胞が見分けにくく、乳がんと診断されにくいことがあります。

さらに、「線維腺腫」という良性のしこりは、細胞診では「悪性=乳がん」という結果がでてしまうことがあるため、注意が必要です。

また、授乳中の場合は、乳がんの診断が難しくなることがあります。

乳がんの組織診の検査

局所麻酔で、細胞診より太い針で組織をとる検査のことです。

細胞診より乳がんの診断がはっきりします。

検査の方法としては、ベッドに横になってもらい、しこり周囲に局所麻酔をします。

そして皮膚に数ミリの小さな切り傷をいれて、そこから針をさして、しこりに向かって針をさします。

乳がんが疑われる場合は、組織診と細胞診を同時に行うことが多いです。

もし乳がんであることが確定したら、乳がんの広がりを検査します。採血の検査も行われます。

乳がんにおける血液検査とは?

血液検査によって、以下のことがわかります。

腫瘍マーカー

乳がんではCA15-3、CA-125、CEA、NCC-ST-439と呼ばれる腫瘍マーカーなどを検査します。

乳がんがあっても、必ずしも腫瘍マーカーが上昇するとは限りません。

腫瘍マーカーは、手術後の再発のチェックや抗がん剤治療の効果判定の参考に使われます。

臓器の機能が正常化かどうか?

腎機能や肝臓の機能を確認します。

もし、これらの臓器の機能が低下しているようであれば、手術や抗がん剤治療による合併症が起こりやすくなります。

糖尿病がないかどうかも、チェックします。

糖尿病があり血糖値が高いときは、乳がんの治療の前に、糖尿病の治療を優先しないといけないことも、あります。

乳がんのCT検査

以下のことを確認するために、CT検査をします。

  • 臓器(肺や肝臓など)への転移の有無
  • リンパ節への転移の有無

乳がんの広がりを確認する上で、必須の検査です。

乳がんのMRI検査

乳腺のMRIは専用の装置を用いて、造影剤という注射をした上で、うつ伏せで撮影を行います。

CTや超音波検査では、はっきりしなかった病変が、判明することがあります。

乳がんの広がりが、より詳しくわかります。

乳がんの骨シンチ検査

乳がんは、骨に転移しやすいがんです。

したがって、骨に転移していないかどうかを、骨シンチという検査で、確認する場合があります。

乳がんのPET検査

がん細胞は、ブドウ糖を取り込む性質があります。

そこで、放射性ブドウ糖液を注射し、それがどの部位で取り込まれるかを確認しようというのが、PET検査です。

放射性ブドウ糖液が取り込まれた部位に、乳がんはあると推測できます。

PET検査の結果、CT検査では、問題ないと判断された位置に、乳がんの転移が指摘されることがあります。

乳がんの検査費用と、検査の期間は、どのくらいかかるのか?

実際に乳がんの外科的な手術を行った患者さんの事例で、検査費用をお示しします。

(患者様の置かれている状況や、病院によって、実施される検査内容が異なります。1つの目安としてご覧ください。)

初診料:約3000円

再診料:約700円

マンモグラフィー:約5080円

超音波検査:約3500円

乳がんの細胞採取のための生検:約6500円

採取した細胞を、顕微鏡で確認する検査(病理検査):約15000円

採血検査:約10000円

CT検査:約16000円

MRI検査:約18500円

骨シンチグラム:約22000円

胸のレントゲン写真:約2100円

肺活量の検査:約2000円

心電図検査:約1300円

合計:105680円

ちなみに、検査のために、計5日病院にきていただいています。

そして、初診日から、約2週で、検査をすべて終えています。

実際の費用負担は、105680円の1割から3割です。

最後に、乳がんのステージごとの大まかな治療法を、説明いたします。

乳がんのステージに応じた治療法

先ほどの検査結果を踏まえて、以下のようにステージを決定します。

・ステージ0:乳管内にとどまっているがん

・ステージ1:しこりの大きさが2センチ以下で、リンパ節や別の臓器には転移していない。

・ステージ2A:しこりの大きさが2センチ以下で、わきの下のリンパ節に転移がある状態。もしくは、しこりの大きさが2~5センチでリンパ節や別の臓器への転移がない状態。

・ステージ2B:しこりの大きさが2~5センチで、わきの下のリンパ節に転移がある状態。もしくは、しこりの大きさが5センチを超えるが、リンパ節や別の臓器への転移がな状態。

・ステージ3:わきの下のリンパ節に転移があり、そのリンパ節が、周囲の組織とくっついている状態。もしくは、脇の下のリンパ節にとどまらず、さらに広い範囲(胸骨や鎖骨の近く)に広がっている状態。

・ステージ4:別の臓器に転移している状態。よく見られる転移する場所は、骨、肺、肝臓、脳などである。

ステージを決める最大の目的は、治療方針を決めることにあります。

ステージを通じて、どの治療方針がよいか、わかります。あなたが、以下のうちの、どの段階にいるかを、知ることが大切です。

  • 手術(状況によっては抗がん剤併用)で治癒が望める段階
  • 手術はしないで、抗がん剤治療による治療が望ましい段階

ステージだけでなく、乳がんの顔つきを調べることも、重要です。

乳がんの顔つきによって、用いることができる薬が異なるからです。

乳がんの細胞には、いくつかの顔つきがあります。

顔つきを決める1つの要素が、がん細胞の中に、ホルモン受容体があるか、無いかです。ホルモン受容体があると、女性ホルモンが、がんの増殖を、促すことになります。

そして、ホルモン受容体を邪魔するお薬を使えば、がんの増殖を止められることになります。

がんの顔つきを決めるもう1つの要素が、HER2というタンパクがあるか、無いかです。

HER2というタンパクがあれば、HER2を遮断するお薬を用いると、がんは、小さくなります。

以上のことを踏まえて、乳がんの細胞の顔つきは、以下のような4つのグループにまとめられます。

グループごとに、治療に用いられる薬が決まっています。

どのような薬を用いるかを判断するために、4つのグループ内の、どこに該当するかを決めないといけません。

最後に、ステージごとの治療法を解説します。

ステージ1、ステージ2、並びにステージ3の一部の乳がん

手術で、乳がんを取り除きます。

手術に関しては、乳房を温存する方法と、乳房を全摘する方法があります。

最近は、乳房を全摘しても、その後、乳房を再建できる技術が発達しました。

また、がんが大きい場合は、乳房を全摘することは、避けられません。しかし、手術前に、抗がん剤でがんを縮小させることにより、「乳房を全摘しなくても、がんを切除できるケース」も、増えてきています。

さて、手術後に、切除したがんを検査して、がんの広がりや顔つきを、もう一度、調べます。そして、再発の危険性を評価します。

その結果に応じて、再発を予防するために、どのような薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤治療、分子標的治療)や放射線治療を、受けるべきかを判断します。

薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤)を加えることにより、10%ほど再発率を下げることができます。

しかし、それだけでは、十分な治療効果とは言えません。さらに、漢方をたしたり、薬膳的な食事をしていきましょう。

再発する確率を、さらに、0に近づけることができます。

この段階で、漢方や、食事療法的なことを取り入れることは、非常に重要なのです。

以下のようなデータもあります。

—–

877症例の胃がんの手術後の生存率と食生活の関連を検討した愛知がんセンターからの報告。

豆腐を週に3回以上食べていると、再発などによるがん死の危険率が0.65に減り、生野菜を週3回以上摂取している場合の危険率は0.74になる。
—–

上のデータは、「胃がんにおいて、食事内容を工夫をすると、再発が抑えられ、より長く生きられる」というデータです。

胃がんだけでなく、乳がんでも、同じことが言えるでしょう。

乳がんを抑えることと、食事内容には、強い関係があることを、知っておいてほしいです。

また、私の著書である「抗がん剤治療を受けるときに読む本」のp26には、ステージ4のがんを、食事療法で小さくさせた事例があります。

また、漢方治療により、がんを抑えることができるというデータも、複数あります。

  • 適切な西洋医療
  • 適切な食事内容
  • 適切な漢方

以上の3つのことをバランス良く、活用することが大切です。

一部の方は、すべての西洋医療を拒否されて、非常に偏った食事療法だけを行い、逆に、がんを悪化させている方もいらっしゃいます。

このようなことは、避けて欲しいです。

病院の治療をうまく利用しつつ、適切な食事内容をとり、適切な東洋医学的なことを取りこむと、非常に良いのです。

また、漢方は、適切な内容で、必要な用量をしっかり飲みましょう。そのようなことをしっかりと助言できる方から、漢方を提案してもらうと良いです。

漢方は、インターネットでも、信頼できるものが、容易に入手できます。

ただし、不適切な漢方が販売されていることも多いので、注意は必要です。

手術ですべて取り除くことが難しいステージ3の乳がん

遠隔転移はしていなくても、大きすぎて、手術で、切除できないときがあります。

その場合は、抗がん剤で、がんの縮小を計ります。手術で切除できるくらいに小さくなれば、手術による切除を試みます。

話はそれますが、最近は、手術で全部取りきれる見込みの高いステージ3の乳がんであっても、手術前に抗がん剤治療によって、縮小させてから、手術をするケースが多いです。

ステージ4の乳がん、もしくは、再発の乳がん

肝臓、肺、腹膜、複数のリンパ節に、がん細胞がある状態のことです。この状態は、がん細胞が、体に広く散らばっていると予想されます。

ホルモン受容体が陽性ならば、「ホルモン療法」と「抗がん剤治療」が中心となります。

HER2陽性ならば、「HER2たんぱくを標的とする分子標的薬」と「抗がん剤治療」が中心となります。

ホルモン受容体とHER2が陽性ならば、「HER2受容体を標的とする分子標的薬」、「抗がん剤治療」、「ホルモン療法」が中心となります。

ステージ4や再発乳がんの治療の詳細は、こちらです。

乳がんは、完治を望める病気になりました。

乳がんは、以前に比べると、克服できる病気になってきました。

一方で、さらに、生存率をあげたり、再発率をさげるために、病院の治療に加えて、取り入れるべきことも、あります。

病院で受ける治療は大切ですが、それだけでは、十分ではないのです。

余命宣告をされていたとしても、もっと長く生きることは、できます。

そして、乳がんに負けない体を作っていきましょう。

そのために、知っておくことがあります。

乳がんに負けない方法は、こちらで学ぶことができます。

 

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医

札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」と、「大腸がんと告知されたときに読む本」を出版。

加藤隆佑医師の論文

加藤隆佑医師のプロフィールの詳細はこちら

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