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乳がんが再発した時の症状を、再発部位ごとに医師が解説!

こんにちは。加藤隆佑です。小樽協会病院というところで、がんを専門に診療をしています。

再発とは、手術などにより、いったんは治ったように見えていたがんが、再び出現してきた状態をいいます。

そして、乳がんの手術後、一番気がかりなのが、再発しないかということです。

本日は、乳がんが再発したときの症状を、再発部位ごとに解説いたします。

同時に、乳がんが再発しやすい場所も、説明いたします。

乳がんが再発しやすい場所と時期は?

乳がんが再発しやすい場所は、再発しやすい場所の順に列挙すると、以下のようになります。

骨への再発、肺への再発、局所再発、肝臓への再発、胸膜への再発、リンパ節への再発、脳への再発

ちなみに、局所再発とは,手術をした側の乳房や胸壁(きょうへき),その周囲の皮膚やリンパ節に、再発が起こることです。

さて、多くのケースにおいて、手術を終えて3年以内に再発しますが、5年から10年を経過してから再発することもあります。

他のがんは、5年をすぎれば一安心といえますが、乳がんに関しては、そうは言えないということです。

ちなみに、10年を過ぎれば、再発の危険は、ほとんどないです。

骨に再発している場合の症状

骨に再発したときの症状は、骨の痛みや、骨折といったことが挙げられます。

そして、骨転移に対する治療としては、薬物療法と、放射線治療です。

薬物療法では、骨粗しょう症の治療薬を用います。骨の転移による骨折を予防するためです。具体的には、ビスフォスフォネート製剤やランマーク(デノスマブ)という名称の薬を服用します。

放射線治療では、痛みの緩和や、骨折の危険性が高い場合に、行われます。

同時に薬物療法(抗がん剤治療、ホルモン剤)になります。

肺に再発した場合の症状

がんが、肺のスペースをかなり占拠しないかぎりは、症状はほとんど出ません。

がんが占めるスペースが増えると、以下のような症状がでることがあります。

  • 呼吸困難

ちなみに、肺に再発した場合は、抗がん剤治療で制御していくことになります。

もし、肺への再発の数が少数であり、肺以外にがんが存在しなければ、以下の治療法が検討されることもあります。

  • 放射線治療
  • 手術

局所再発したときの症状

局所再発とは,手術をした側の乳房や胸壁(きょうへき),その周囲の皮膚やリンパ節に、再発が起こることです。

局所再発したがんが非常に大きくなると、周囲の臓器を圧迫することにより、様々な症状がでます。

局所に再発したときは、抗がん治療だけではなく、根治を目指した手術や放射線治療を、検討します。

肝臓に再発した場合の症状

「再発したがんが、肝臓の大半を、占拠した段階」に至ってから、肝臓に再発したことによる症状がでることが多いです。

例えば、黄疸といった症状です。

肝臓に再発しても、初期の段階では、症状はでないでしょう。

ちなみに、採血で肝機能障害が出現した時に、「肝臓に再発したからだろう」と心配される方が多いですが、そうではありません。

大半のケースは、がん以外の原因です。例えば、薬剤による肝機能障害などです。

ちなみに、肝臓に再発した場合は、抗がん剤治療で制御していくことになります。

もし、肝臓への再発の数が少数であり、肝臓以外にがんが存在せず、さらに、肝臓のがんの状態が長期間にわたって落ち着いているときは、以下の治療法が検討されることもあります。

  • 放射線治療
  • 手術

胸膜に再発した場合の症状

肺の中に、胸膜という部位があります。そこに、種がまかれるように、バラバラと、がんが広がることを胸膜播種(ふくまくはしゅ)と言います。

乳がんにおいては、胸膜播種の形態で再発することは、多いです。

胸膜播種がひどい状況になると、胸水が出現します。そして、胸水の量が非常に多いと、呼吸困難に陥り、命にも関わる状態になります。

その場合は、抗がん剤で、治療をしていくことになります。抗がん剤治療で、がんを制御できれば、胸水は減ります。

呼吸困難といった症状も、楽にしていくことが、できます。

さて、胸水が非常に多いときは、胸水を抜かないといけません。

胸水だけを抜くと、体の栄養成分も、抜けてしまうということが注意点として挙げられます。

そのことを避けるために、抜いた胸水を「ろ過+濃縮」して、胸水の中の栄養成分だけを、体内に戻す腹水ろ過濃縮再静注法(CART)を行うことがあります。

また、胸膜癒着術という方法で、胸水がたまらないようにする治療を行うこともあります。

リンパ節に再発したときの症状

リンパ節に再発した場合であっても、初期の段階では、症状はありません。

しかし、リンパ節に再発したがんが、大きくなると、症状がでることがあります。

大きく腫れたリンパ節が、神経に触れれば、痛みがでます。

腫大したリンパ節が、臓器を圧排すれば、それに伴う症状が出ます。例えば、腫大したリンパ節が、胆汁の流れ道を、押しつぶせば、黄疸が出現するといった感じです。

どの部位のリンパ節に再発して、さらにそのリンパ節がどの程度、腫れるかによって、症状は異なります。

ちなみに、リンパ節に再発している癌は、抗がん剤治療で制御していくことになります。

もし、リンパ節への再発が、一部分だけにとどまるときは、放射線治療を検討することもあります。

脳に再発した場合の症状

乳がんは、脳にも再発しやすいです。

脳に乳がんが再発したときの症状は,頭痛,嘔吐,麻痺,けいれんなどですが,再発する場所によっても症状が異なります。

また、小さな再発巣でも、けいれんなどの症状が出ることもあれば,相当大きくなるまで症状が出ない場合もあります。

さて、脳への再発には、放射線治療による効果が期待できます。

脳全体に放射線を照射する「全脳照射」と、転移がある部分にのみ放射線を照射する「定位放射線治療」があります。

ちなみに、「定位放射線治療」は、ピンポイント照射と言われ、高用量の放射線を、ピンポイントで当てます。

再発の個数が少ない場合は、「定位放射線治療」になります。再発の数が多い場合は、「全脳照射」になります。

「全脳照射」に「定位放射線治療」が併用されることもあります。

その治療により、脳に再発したがんを、完全に消すこともできます。

さて、乳がんの再発を早期に発見すると、乳がんを治癒にもっていける可能性は、高くなることがあります。

だからこそ、乳がんの再発を疑わせる症状があるときには、早く病院を受診しましょう。

万が一、再発してしまったときの治療法の詳細はこちらです。

また、乳がんの再発を回避するために、取り入れるべきことも、あります。

再発を回避する秘訣は、こちらで学ぶことができます。

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医

札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」と、「大腸がんと告知されたときに読む本」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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