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乳がんの治療の流れ|症状と診断ならびに治療を医師が解説

こんにちは。加藤隆佑です。がん治療の専門医として、小樽協会病院で勤務しています。

さて、私の17年間のがん治療の経験を踏まえて、乳がんの治療法と、乳がんを克服するためのコツを書いていきます。

乳がんの初期症状とは?

乳がんは、検診を受けて、指摘される場合や、自分で触った時に、しこりとして、気付くことが多いです。

一方で、遠くの臓器に転移したような進行した状態で、乳がんが見つかる場合もあります。進行した状態であっても、症状に乏しいときがあるのです。

乳がんと診断されたときに、腰、背中、肩の痛みが続く場合には、骨への転移が疑われます。

脇の下のリンパ節が腫れている場合は、リンパ節への転移が疑われます。

乳がんの診断の方法と、ステージの決め方

マンモグラフィーと超音波検査をします。そして、乳がんが強く疑われたら、乳房のしこりに針をさして、病変の一部を採取して、がんかどうかを確定します。

ガンであることが確定したら、次に、CT、MRIで、転移していないかを確認します。

ステージは、超音波検査、CT、MRI所見より、決定します。

ステージの詳細は以下の通りです。

・ステージ0:乳管内にとどまっているがん

・ステージ1:しこりの大きさが2cm以下で、リンパ節や別の臓器には転移していない。

・ステージ2A:しこりの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節に転移がある状態。もしくは、しこりの大きさが2~5cmでリンパ節や別の臓器への転移がない状態。

・ステージ2B:しこりの大きさが2~5cmで、わきの下のリンパ節に転移がある状態。もしくは、しこりの大きさが5cmを超えるが、リンパ節や別の臓器への転移がな状態。

・ステージ3:わきの下のリンパ節に転移があり、そのリンパ節が、周囲の組織とくっついている状態。もしくは、脇の下のリンパ節にとどまらず、さらに広い範囲(胸骨や鎖骨の近く)に広がっている状態。

・ステージ4:別の臓器に転移している状態。よく見られる転移する場所は、骨、肺、肝臓、脳などである。

ステージを決める最大の目的は、治療方針を決めることにあります。

ステージを通じて、あなたが、以下のうち、どの治療方法が良いかが分かります。

  • 手術だけで、よいか?
  • 手術であれば、術後に再発を予防するために抗がん剤治療、もしくはホルモン療法を受けたほうがよいか?
  • 手術はしないで、抗がん剤治療がよいか?

さて、乳がんの治療においては、ステージだけではなく、乳がんの顔つきを調べることも大切になります。

乳がんの顔つきによって、治療方針が異なるからです。

乳がんの細胞には、いくつかの顔つきがあります。

顔つきを決める1つの要素が、がん細胞の中に、ホルモン受容体があるか、無いかです。ホルモン受容体があると、女性ホルモンが、がんの増殖を、促すことになります。

そして、ホルモン受容体を邪魔するお薬を使えば、がんの増殖を止められることになります。

がんの顔つきを決めるもう1つの要素が、HER2というタンパクがあるか、無いかです。

HER2というタンパクがあれば、HER2を遮断するお薬を用いると、がんは、小さくなります。

以上のことを踏まえて、乳がんの細胞の顔つきは、以下のような4つのグループにまとめられます。

グループごとに、治療に用いられる薬が決まっています。

どのような薬を用いるかを判断するために、4つのグループのうちの、どのグループに、該当するかを決めることが、大切なのです。

乳がんのステージに応じた治療法

ステージ1、ステージ2、並びにステージ3の一部の乳がん

手術で、乳がんを取り除きます。

手術に関しては、乳房を温存する方法と、乳房を全摘する方法があります。

最近は、乳房を全摘しても、その後、乳房を再建できる技術が発達しました。

また、がんが大きい場合は、乳房を全摘することは、避けられません。しかし、手術前に、抗がん剤で、がんを縮小させることにより、「乳房を全摘しなくても、がんを切除できるケース」も、増えてきています。

さて、手術後に、切除したがんを検査して、がんの広がりや顔つきを、もう一度、調べます。そして、再発の危険性を評価します。

その結果に応じて、再発を予防するために、どのような薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤治療、分子標的治療)や放射線治療を、受けるべきかを判断します。

手術で、腋窩リンパ節も取り除くべきか?

腋窩のリンパ節の細胞を採取して、がん細胞を認める場合は、腋窩のリンパ節を切除することになります。

そうすることにより、腋窩のリンパ節に、がんが再発することを防ぐ可能性を挙げられます。

しかし、最近は、腋窩のリンパ節に転移があっても、腋窩のリンパ節を切除しないことがあります。

以下の場合です。

  • 腋窩へのリンパ節転移の大きさが2ミリ以下の場合
  • 追加で、腋窩の領域に放射線治療を加える予定の場合

そうすることにより、腋窩リンパ節を切除した場合に起こりうる合併症を回避することができます。

手術で容易に切除できる乳がんも、先に抗がん剤治療をするケースがある

トリプルネガティブの乳がんであれば、手術をした後に、抗がん剤治療が必須です。

このように、手術を受ける前から、抗がん剤治療が必須であると予想される場合には、たとえ、手術で容易に切除できる乳がんであっても、先に抗がん剤治療をするケースがあります。

先に抗がん剤をすることにより、乳がんが、再発するリスクを、ある程度予測できることがあるからです。

特に、ルミナルBの乳がんでHER2陰性のものや、トリプルネガティブ乳がんでは、抗がん剤治療により、乳がんが全て消失したら、非常に予後がよいことが、判明しています。

予後がよいかを見極めるために、先に抗がん剤治療をすることがあるということです。

一方で、ルミナルBの乳がんで、HER2陽性のものや、ルミナルAの乳がんの場合は、そうではありません。

抗がん剤治療により、乳がんが全て消失しても、そのことが、予後がよいことを意味するわけではないことが判明しています。

万が一、トリプルネガティブの乳がんの診断となり、抗がん剤治療をしても、がんが、すべて消失しなかったとします。予後が悪いということになります。

その場合は、追加の抗がん剤治療として、ゼローダという薬を半年間飲むことになっています。

薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤)を加えることにより、10%ほど再発率を下げることができます。

しかし、それだけでは、十分な治療効果とは言えません。さらに、漢方をたしたり、薬膳的な食事をしていきましょう。

再発する確率を、さらに、0に近づけることができます。

この段階で、漢方や、食事療法的なことを取り入れることは、非常に重要なのです。

以下のようなデータもあります。

—–

877症例の胃がんの手術後の生存率と食生活の関連を検討した愛知がんセンターからの報告。

豆腐を週に3回以上食べていると、再発などによるがん死の危険率が0.65に減り、生野菜を週3回以上摂取している場合の危険率は0.74になる。
—–

上のデータは、「胃がんにおいて、食事内容を工夫をすると、再発が抑えられ、より長く生きられる」というデータです。

胃がんだけでなく、乳がんでも、同じことが言えるでしょう。

乳がんを抑えることと、食事内容には、強い関係があることを、知っておいてほしいです。

また、私の著書である「抗がん剤治療を受けるときに読む本」のp26には、ステージ4のがんを、食事療法で小さくさせた事例があります。

また、漢方治療により、がんを抑えることができるというデータも、複数あります。

  • 適切な西洋医療
  • 適切な食事内容
  • 適切な漢方

以上の3つのことをバランス良く、活用することが大切です。

一部の方は、すべての西洋医療を拒否されて、非常に偏った食事療法だけを行い、逆に、がんを悪化させている方もいらっしゃいます。

このようなことは、避けて欲しいです。

病院の治療をうまく利用しつつ、適切な食事内容をとり、適切な東洋医学的なことを取りこむと、非常に良いのです。

また、漢方は、適切な内容で、必要な用量をしっかり飲みましょう。そのようなことをしっかりと助言できる方から、漢方を提案してもらうと良いです。漢方は、インターネットでも、信頼できるものが、容易に入手できます。

ただし、不適切な漢方が販売されていることも多いので、注意は必要です。

手術ですべて取り除くことが難しいステージ3の乳がん

遠隔転移はしていなくても、大きすぎて、手術で、切除できないときがあります。

その場合は、抗がん剤で、がんの縮小を計ります。手術で切除できるくらいに小さくなれば、手術による切除を試みます。

話はそれますが、最近は、手術で全部取りきれる見込みの高いステージ3の乳がんであっても、手術前に抗がん剤治療によって、縮小させてから、手術をするケースが多いです。

ステージ4の乳がん、もしくは、再発の乳がん

肝臓、肺、腹膜、複数のリンパ節に、がん細胞がある状態のことです。この状態は、がん細胞が、体に広く散らばっていると予想されます。

ホルモン受容体が陽性ならば、「ホルモン療法」と「抗がん剤治療」が中心となります。

HER2陽性ならば、「HER2たんぱくを標的とする分子標的薬」と「抗がん剤治療」が中心となります。

ホルモン受容体とHER2が陽性ならば、「HER2受容体を標的とする分子標的薬」、「抗がん剤治療」、「ホルモン療法」が中心となります。

ステージ4や再発乳がんの治療の詳細は、こちらです。

乳がんは、完治を望める病気になりました。

乳がんは、以前に比べると、克服できる病気になってきました。

一方で、さらに、生存率をあげたり、再発率をさげるために、病院の治療に加えて、取り入れるべきことも、あります。

病院で受ける治療は大切ですが、それだけでは、十分ではないのです。

余命宣告をされていたとしても、もっと長く生きることは、できます。

そして、乳がんに負けない体を作っていきましょう。

そのために、知っておくことがあります。

乳がんに負けない方法は、こちらで学ぶことができます。

 

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医

札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」と、「大腸がんと告知されたときに読む本」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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