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卵巣癌が再燃する確率の低い手術の方法と、癌が再燃したときの再手術の有効性を医師が解説

 2019/03/07 卵巣がん  

こんにちは。加藤隆佑です。

どのような手術を行うかは、卵巣がんを克服できるかどうかに強い影響を与えます。

手術により、卵巣がんで、目にみえる部分をできる限り切除すると、完治の可能性が高くなります。

万が一、卵巣がんが残ったとしても、取り残した部分の大きさが1センチ以下ならば、卵巣がんの予後は良いと言われています。

ちなみに、取り残した部分の大きさが1センチ未満になるような手術をoptimal surgeryと呼ばれます。

optimal surgeryを日本語に訳すと、「最適な手術」という意味になります。

手術を受けるのであれば、なんとかして、取り残した卵巣がんの大きさが1センチ未満になるような手術であるoptimal surgeryに、もっていきたいところです。

ちなみに、1センチ以上の取り残しがある場合は、suboptimal surgeryと呼びます。次に最適の手術という意味です。optimal surgeryに比べると、予後は悪くなります。

さて、ステージ3の卵巣がんでは、卵巣がんの基本術式だけでは、optimal surgery(最適な手術)になる確率は、24から46%と言われています。そこで、この確率を高くすることが、必要になります。

optimal surgeryにもっていくための工夫は、いろいろあるのです。

抗がん剤治療により、がんを縮小させたのちに、手術を行う。

手術前に抗がん剤治療を行うことにより、卵巣がんを縮小または消失させることができます。

その上で、手術を行えば、optimal surgeryにもっていける確率が高くなります。

メリットはそれだけではありません。より安全に手術が、できるようになります。

ちなみに、抗がん剤治療を先行させた上で、卵巣がんの手術を行うことを、interval debulking surgery(IDS)と呼ばれます。

しかし、最近になり、新しい知見がでてきました。以下のような内容です。

「取り除ききれなかった卵巣がんの大きさが1センチ未満」を意味するoptimal surgeryにもっていければ、「取り残しのない完全切除」と同じくらいの治療成績にもっていける。

手術のあとに抗がん剤治療を加えれば、「取り除ききれなかった卵巣がん」を死滅させることが、それなりの確率で期待できるからである。

しかし、抗がん剤治療を先行させて手術をした場合に限っては、「取り除ききれなかった卵巣がんの大きさが1センチ未満」を意味するoptimal surgeryは、「取り残しのない完全切除」に比べると、治療成績は劣る。

したがって、抗がん剤治療を先行させて手術をした場合は、optimal surgeryに満足することなく、「取り残しのない完全切除」を狙わないといけない。

取り残しのない完全切除を狙うにはどうしたらよい?

千葉大学病院では、この問題を解決するために、特殊な手術を行なっています。

抗がん剤を行う前に、腹腔鏡などで、お腹のどの位置に、1センチ以上の卵巣がんが、散らばっているかを確認しておく。

その上で、抗がん剤治療を行い、がんを縮小させておいたのちに、手術に臨む。

抗がん剤治療の前に、1センチ以上の卵巣がんがあった場所で、その部位の卵巣がんが、抗がん剤治療により消失していても、その部位の切除を行う。

同時に、目にみえる卵巣がんは、すべて取り除く。

この治療法を導入して、かなり治療成績は上昇しています。

「抗がん剤治療の前に、1センチ以上の卵巣がんがあった場所で、その部位の卵巣がんが、抗がん剤治療により消失していても、その部位の切除を行う」という工夫が効をそうしていると思われます。

私は、このような術式を行う病院が増えるとよいと思います。

卵巣や子宮以外の臓器の切除も行う。

抗がん剤治療を先行させずに、さきに手術を行うケースもあります。

これを、初回腫瘍減量手術(PDS)といいます。

CTといった画像所見から、抗がん剤治療を先行させなくても、optimal surgeryにもっていける確率が高いと判断された場合です。

しかし、実際にお腹の中を見てみたら、optimal surgeryにもっていくことは、難しいと判断される場合もあります。そのようなときは、無理に手術を続行しないで、抗がん剤治療に切り替えることになります。

一方で、あらゆる方法を用いて、optimal surgeryに、もっていこうとする場合もあります。

つまり、通常の術式である「両側付属器切除術+子宮全摘術+体網切除術」だけでは、十分に卵巣がんを取りきれないので、他の術式をさらに追加するということです。

通常の術式だけでは取りきれない場合には、以下の術式が追加されます。

  • 腹膜に転移がある場合:腹膜切除術
  • 小腸に転移がある場合:小腸部分切除術
  • 直腸に転移がある場合:直腸切除術
  • 秘蔵に転移がある場合:脾臓摘出術
  • 膵臓に転移がある場合:膵尾部切除術
  • 肝臓に転移がある場合:肝臓部分切除術
  • 尿路に転移がある場合:尿路部分切除術

かなり、大掛かりな手術になります。

このような術式を、臨機応変に加えることにより、optimal surgeryにもっていける確率を75%に高められると言われています。

手術後の合併症の確率も高くなります。

  • 術中出血
  • 腸閉塞
  • 縫合不全
  • 低タンパク血症

最近は、このような大かがりな手術は避けて、「抗がん剤により卵巣がんを縮小させたのちに手術」という流れが主流になってきています。

しかし、「卵巣がんを縮小させたのちに手術」をする際には、optimal surgeryを狙うのではなく、「取り残しのない完全切除」を狙わないといけません。

そのために、このような大掛かりな手術も辞さないときもあることでしょう。

卵巣がんの手術にといて、どの程度のリンパ節を切除しないといけないのか?

どの程度の範囲のリンパ節を手術の際に切除しないといけないのでしょうか?

卵巣がんの基本術式を元に説明していきます。

卵巣がんの基本術式は、以下の通りとなります。

子宮全摘+卵巣切除+大網切除

上記の手術をする際には、リンパ節も切除します。しかし、どの程度の範囲のリンパ節を切除するかは、病院によって、異なります。

たとえば、国立がんセンターでは、たとえステージ1の卵巣癌であっても、かなり広い範囲のリンパ節を切除します。卵巣がんが、リンパ節に転移している可能性があるからです。

具体的には、骨盤内リンパ節、傍大動脈リンパ節の郭清です。

この術式は、日本では広く行われています。

しかし、最近になり、以下のようなデータがでてきています。

手術前の画像検査で、骨盤内リンパ節や傍大動脈リンパ節への転移が疑わしくないケースでは、骨盤内リンパ節や傍大動脈リンパ節の切除(郭清)を省略しても予後は変わらない。

 

今後は、手術前の画像検査で、骨盤内リンパ節や傍大動脈リンパ節への転移が疑わしくないケースでは、骨盤内リンパ節や傍大動脈リンパ節の郭清は省略される流れになるのでしょう。

ちなみに、骨盤内リンパ節や傍大動脈リンパ節の郭清を行うことにより、以下の合併症が増えます。

リンパ浮腫、術後60日以内の死亡率、再開腹を必要とする術後合併症、感染症

卵巣がんが再発した場合には、手術は有効か?

卵巣がんが再発した場合には、抗がん剤治療を行うことが一般的です。

しかし、最近になり、手術をしたのちに抗がん剤治療を行なった方が、よりよい治療成績になるというデータがでています。

ただし、すべての方に手術適応があるわけではありません。

以下の条件を満たしている方の一部に関しては、手術を先に行うとよいとされています。

  • 初回治療の終了から、再発までの期間が半年以上あいている。
  • 初回手術が、optimal surgeriであった。
  • 再発した腫瘍の大きさが6センチ以下であること
  • 肝臓転移がないこと
  • 腹水の量がないか、もしくは少ないこと
  • 全身状態が良好であること

そして、手術においては、完全切除を目指さないといけません。取り残しがあるoptimal surgeryを狙うことしかできないならば、手術をする意義は減ります。

もし再発時に手術を試みたとしても、取り残しがあるoptimal surgeryを狙うことしかできないことが判明したら、手術は中止にしたほうがよいです。

さて、再発した卵巣がんの治療には、いろんな工夫をすると良いです。

さらに、卵巣がんを、小さくできるからです。

その詳細は、こちらです。

ライター紹介 ライター一覧

加藤隆佑

加藤隆佑

加藤隆佑

癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

がんの漢方外来も、運営しています。

これまでの経歴です。

医学部卒業後、秋田赤十字病院、手稲渓仁会病院で、消化器がんの診療に従事。現在は、小樽協会病院消化器内科主任医長

2015年には、緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」を出版させていただく機会をいただく。

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