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卵巣がんに対する腹腔内温熱化学療法(HIPEC)について医師が解説

こんにちは。加藤隆佑です。

卵巣がんに対して、腹腔内温熱化学療法(HIPEC)は、非常に効果があります。

本日は、腹腔内温熱化学療法について、解説いたします。

腹腔内温熱化学療法とは?

全身麻酔を用いて行う治療となります。

3から 4リットルの温めた生理食塩水を、お腹の中を循環させます。そして、お腹の中の温度が、42度を超えた時点で、お腹の中に抗がん剤を投与します。

腹腔内温熱化学療法の効果は?

現段階では、標準的な治療にはなっていません。

しかし、2018年の1月に、とても権威のある学会誌であるニューイングランドジャーナルで、非常に効果のある治療であろうという発表がありました。

以下のようなデータです。

—–

ステージ3の卵巣がんに対して、はじめにTC療法という抗がん剤治療を3クール行う。

次に、手術で、卵巣がんを切除する。

手術の際には、切除するだけでなく、腹腔内温熱化学療法を併用する。

腹腔内温熱化学療法の具体的な内容は、以下の通り。

「40度に温めたシスプラチンという抗がん剤を、90分間、お腹の中を循環させる。」

その結果、再発率を下げられた上に、生存期間を、非常に延長することができた。

—–

抗がん剤のを、直接、腹腔内に投与するだけでも効果はあるか?

腹腔内を温めた上で、腹腔内に、直接抗がん剤を散布するのは、効果があると説明いたしました。

それでは、腹腔内を温めることはしないで、単に、お腹の中に抗がん剤を散布するだけでも、効果はあるのでしょうか?

このことに関連した臨床試験は、日本でも、示されています。

以下のようなデータが、あります。

—–

「シスプラチン+パクリタキセル」という抗がん剤を腹腔内に投与しつつ、「パクリタキセル」という抗がん剤を、点滴で血管内に投与する。

その治療法は、「シスプラチン+パクリタキセル」を点滴で投与する治療法よりも、良好な治療結果であった。

つまり、再発率をさげ、生存期間を、かなり伸ばすことが、できた。

—–

つまり、腹腔内を加熱しなくても、それなりの治療効果を期待できることになります。

そして、腹腔内温熱化学療法は、腹腔内を加熱しない腹腔内化学療法よりも、よりよい治療効果が、期待できます。

腹腔内温熱化学療法が効果がある理由は?

腹腔内温熱化学療法が、効果がある理由は、以下の通りです。

1、お腹の中を41度から43度に温めることによる、抗腫瘍効果

2、温めることにより、シスプラチン、マイトマイシンC、オキサリプラチンといった、ある特定の抗がん剤の効果を増強することが、できる。

卵巣がんが再発した場合も、腹腔内温熱化学療法は効果がある?

卵巣がんが、再発した場合においても、腹腔内温熱化学療法は、効果があります。

完治にもっていく可能性を高くすることが、できます。

ギリシアでは、以下のような臨床試験の結果がでています。

—–

再発した際に、以下のうちのどれかによる腹腔内温熱化学療法を行う。

  • シスプラチン+パクリタキセル
  • ドキソルビシン+パクリタキセル
  • マイトマイシン

その結果、生存期間を2倍近く伸ばすことが、できた。

—–

再発していたも、腹腔内温熱化学療法は、非常に効果があります。

腹腔内温熱化学療法の副作用は?

以前は、非常に危険な治療と言われていました。重大な合併症が起きる頻度が高いからです。

以下のような合併症です。

  • 縫合不全
  • 腸管穿孔
  • 出血

しかし、最近は、かなり安全にできるようになりました。

日本でも、一部の施設では、腹腔内温熱化学療法は、行われています。

さて、あなたが、卵巣がんを克服するために、知って欲しいことは他にもあります。

こちらで、卵巣がんを克服するために、知って欲しいことを学ぶことは、できます。

 

 

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医

札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」と、「大腸がんと告知されたときに読む本」を出版。

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