1. TOP
  2. 卵巣がん
  3. 卵巣がんステージ2の完治を目指す治療を医師が解説!生存率をあげる工夫とは?

卵巣がんステージ2の完治を目指す治療を医師が解説!生存率をあげる工夫とは?

こんにちは。加藤隆佑です。小樽協会病院という総合病院で、がん治療を専門として、働いています。

さて、今日の本題です。

卵巣がんの手術後の再発率を、より下げることは、できます。

ちなみに、卵巣がんステージ2の5年生存率は66.4パーセントです。そして、約4割の方が再発すると言われています。

このような治療成績であったとしても、さらに再発率を0に近づけられます。その結果、生存率をあげて、完治を目指すことが、できます。

そして、卵巣がんに負けない体を作っていくのです。

私の18年間のがん治療の経験と、医学的なデータをもとに、卵巣がんを克服するコツを説明いたします。

 

 

卵巣がんの再発率を下げて、生存率を上げる事はできる。その方法とは?

以前に比べると、卵巣がんは治すことのできる病気になっています。

しかし、他の病気と大きく異なる点は、再発というリスクが常につきまといます。

卵巣がんのステージ2を例にとると、4割の方は再発するのです。

そのような治療成績では、十分とはいえません。できれば、再発率を0にしたいです。しかし、現実的には再発を、0にはできないでしょう。

そうであっても、再発率をさらに、下げることはできます。そして、完治を目指すことは、できます。

そのための方法を、順を追って説明していきます。

卵巣がんステージ2の標準的な治療の問題点と、注意点

標準的な治療は何?

手術で卵巣がんを取り除ける場合は、手術が標準的な治療となります。

そして、「ステージ2」の診断になれば、抗がん剤治療を約半年間受けることになります。

がんを手術で全部切除できたように見えても、その時点で、すでにがん細胞が別の臓器に転移している可能性が、あるからです。

抗がん剤治療により、再発率を下げることができます。

ちなみに、ステージ2とは、「がんが、卵巣周囲の臓器(卵管、子宮、直腸、膀胱)に、広がっている。」状態のことです。

術後の抗がん剤治療を、負担のない範囲で受けることは大切です。

 

化学療法の効果

卵巣がんには、抗がん剤治療が非常に有効です。卵巣がんは、抗がん剤が、非常に効きやすいがんに、分類されているからです。

さて、手術後の卵巣がんの再発率を下げるために、用いられる抗がん剤は、以下のものです。

「カルボプラチン+パクリタキセル」

もしくは、

「カルボプラチン+ドセタキセル」

カルボプラチンというお薬が、とても効果があるので、重要な薬になります。

薬物療法を加えることにより、5から10%ほど再発率を下げることができます。

ステージ2の卵巣がんの抗がん剤治療は絶対に受けるべき?

体に負担のない範囲で、抗がん剤治療を受ける必要があります。

一方で、以下のような事実があることを、忘れるべきではありません。

  • 抗がん剤治療を受けても、再発率は5から10%下がる程度。
  • 抗がん剤治療を受けなくても、再発しない人がいる

以上を踏まえると、手術後の抗がん剤治療を受けるかどうかは、以下のことも含めて、検討しても良いでしょう。

  • 抗がん剤治療に対する価値観
  • 体力
  • 認知能力(薬の自己管理や副作用のセルフケアができるか?)
  • 経済的な問題

1つ注意点があります。

手術前に、ステージ2という診断であったとしても、「実際に手術を試みたら、がんが広がりすぎていて、すべてのがんを取り除けなかった」場合は、手術後に、抗がん剤治療を受ける事は、必須と考えます。

また、実際に治療を受けてみて、副作用で辛ければ、いつでも抗がん剤治療を、やめることは、できます。

「辛くなったら、抗がん剤治療をやめよう」という気持ちで治療を受けた方が、気持ちは楽になるかもしれません。

そして、再発を抑えるのは、抗がん剤だけではないことを、忘れるべきではありません。

東洋医学(漢方)に効果はあるのか?

漢方を飲むメリットは、以下のようなものになります。

  • 手術後の体調を良くする。
  • 抗がん剤の副作用を減らす。
  • がんの再発を抑える。

上記のことを支持するデータは、複数あります。

また、私をはじめ、漢方の専門医は、漢方の効果を、多数のがんの方への治療の経験から、分かっています。

漢方は、取り入れる価値の非常に高い治療です。

最近は、保険診療で漢方を処方できるようになっています。そして、漢方に、理解を示してくれる医師は、増えています。

ちなみに、より専門性の高い漢方を処方する医師は、煮出して(煎じて)飲む漢方を用います。そちらの方が、概して、効果は強いです。

がんを抑える漢方の詳細は、こちらで説明しています。

食事を工夫すると、再発率を抑えられるか?

877症例の胃がんの手術後の生存率と食生活の関連を検討した愛知がんセンターからの報告。

豆腐を週に3回以上食べていると、再発などによるがん死の危険率が0.65に減り、生野菜を週3回以上摂取している場合の危険率は0.74になる。

上のデータは、「胃がんにおいて、食事内容を工夫をすると、再発が抑えられ、より長く生きられる」というデータです。

胃がんだけでなく、卵巣がんでも同じでしょう。

がんを抑えることと、食事内容には、強い関係があるのです。

卵巣がんの手術後の食事について

卵巣がんの手術後は体力が落ちています。

退院の直後から以前と同じような生活を送ると体に負担を与えます。体力の温存を意識して、生活することが大切です。

また腹部の手術後しばらくは、なるべく消化のよいものを食べましょう。以下のものを大量に食べると腸閉塞を起こすことがあるからです。

  • ごぼうといった繊維質の多いもの
  • 水分を吸って膨らむ昆布などの海藻類
  • 噛まないで飲み込みがちなそばや、中華麺

手術後しばらくは、これらの食品を控えめにするか、細かく刻みよく噛んで少しずつ食べましょう。

注意点ですが、これらのものを食べてはいけないと言っているわけではありません。

たとえば、繊維が多いものは体に必要なものであり、むしろ積極的に体に取り入れて欲しいです。

その際には、取り入れる量や食べ方に、注意を払っていきましょう。調理法を工夫するという手もあります。

卵巣がんの手術後の5年生存率上記のデータは、2006年から2008年の間に、肺がんの診断や治療を受けた患者様に基づいたデータです。

つまり、10年前の治療に基づくデータですので、現在の発達した治療であれば、よりよい治療成績になっています。

そして、データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者様に当てはまるわけではありません。

また、5年生存率のデータには、再発した方も含まれており、生存率は完治率を意味する訳ではありません。

卵巣がんの再発を抑えるための、抗がん剤治療の副作用は、もっと楽にできる。

抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を与えます。

特に髪の毛、口や消化管などの粘膜、あるいは血球をつくる骨髄は、影響を受けやすいです。その結果、脱毛、口内炎、下痢が起こったり、白血球の数が少なくなることがあります。

その他、全身のだるさ、吐き気、手足のはれ、しびれ、心臓への影響として動悸(どうき)、肝機能障害、腎機能障害が出ることもあります。

こうした副作用が、どの程度出るかに関しては、個人差があります。

副作用が著しい場合には、抗がん剤の量を減らしたり、抗がん剤治療の中断を検討することもあります。

副作用がひどいと、体力を消耗するからです。高齢の方ですと、そのことがきっかけで、寝たきりになることもあります。

そのようなことは、寿命が短くなることに、つながります。

あなたが、辛いと思っている副作用を、主治医に、しっかり伝えましょう。あなたが伝えないと、主治医に分かってもらえません。

そして、副作用対策をしてもらいましょう。

幸いなことに、いろんな工夫をすることにより、副作用をかなり取り除けるようになっています。

楽に治療を受けて、卵巣がんの再発を回避する秘訣は、こちらです。

抗がん剤の副作用を取り除くために、◯◯を伝えないといけない。

例えば、以前は、吐き気で悩まれる方が、非常に多かったです。しかし、最近は、そのようなことは、減りました。非常によく効く吐き気止めが、使えるようになったからです。

以前とは、比べものにならないくらいに、吐き気に悩まされずに、治療を受けられるようになりました。

そのような事実があるにもかかわらず、吐き気に悩まされながら治療を受けられている方がいるのも、事実です。

その原因は、以下の通りです。

  • 副作用で苦しんでいることを、主治医が把握できていない。
  • 主治医が副作用対策を熟知していない。

その結果、本来であれば悩まなくてもよい副作用に、悩まされることが、あるのです。

普段から、医師とのコミュニケーションを、しっかりとることが、必要です。

コミュニケーションをとっても、副作用がとれない場合は、セカンドオピニオンで、他の医師の意見を聞きましょう。

私の外来にも、そのような悩みで、受診される方は、いらっしゃいます。

副作用の原因で、もう一つ忘れてはいけない理由は、過剰な量の抗がん剤が投与されていることがあることです。

もう少し具体的にお伝えします。

抗がん剤は、体重と身長から、投与量を計算しますので、体重が減ったならば、抗がん剤の量を、減量しないといけません。

しかし、体重が減ったにも関わらず、従来の体重の量で計算された抗がん剤の量で、投与されていることがあるのです。

それは、過剰な量の抗がん剤になり、強い副作用がでることになります。

体重の1キロ程度の増減は、気にしなくてもよいですが、それ以上の体重の増減のときは、主治医に伝えるべきです。

抗がん剤による口内炎は、もっと楽にできます。

エレンタールという栄養ドリンクがあります。これを飲むと、抗がん剤によってできる口内炎を減らすことができるというデータがあります。

データの数は少ないのですが、その効果を実感して、診療に利用している病院も複数あります。

私もエレンタールの効果に驚き、よく用います。

もし、あなたが、もし口内炎で悩まされていたら、主治医に処方してもらえないか、頼んでみてください。

ちなみに、私の著書にも、エレンタールの効果のことを、書いています。

諦めないでいろいろ調べてみると、あなたの悩みを解決できる方法が、あるものです。

ちなみに、私は、広くは普及していない治療方法であったとしても、しっかり調査します。

そして、良好な結果が出る可能性が高い治療は、メール講座やブログなどで、ご紹介しています。

広く普及している標準的な治療だけが、治療でないのです。

抗がん剤による吐き気は、もっと楽にできます。

抗がん剤の副作用である吐き気を、もっと取り除くことは、できます。

最近になって、非常に効果のある吐き気止めがでたからです。

しかし、あなたが吐き気で悩んでいる事を伝えたつもりでも、主治医にしっかり伝わらないことは多々あります。その結果、吐き気に悩まされ続けることも、珍しくありません。

そのような場合は、主治医に伝えたいことを、短い手紙に書いて、外来の診察の前に渡すとよいでしょう。

確実に、あなたの伝えたい事が伝わります。

あらゆる手段を使って、吐き気を楽にしましょう。体力の低下につながるので、必ず解決しないといけない副作用の1つです。

そして、吐き気の副作用の大半は、解決できます。

また、主治医が適切な吐き気止めを用いることができないために、吐き気を取り除く事ができていないケースを、見かけることもあります。

このような可能性があるときには、セカンドオピニオンで、他の医師の意見を仰ぐのも、よいでしょう。

抗がん剤によるしびれは、もっと楽にできます。

卵巣がんで、よく用いられる抗がん剤の1つであるパクリタキセル(もしくはドセタキセル)で、特に注意しないといけない副作用があります。

それは、しびれです。専門用語では、末梢神経障害と呼ばれます。

後遺症としてしびれが残り、自分で歩く事が困難になったり、ボタンを自分でつけれなくなることもあります。

しびれに関しては、適切な対処が必要です。

主治医には、しびれがでたときには、報告して、適切な対処をしてもらいましょう。

しびれは、標準療法で用いられる対処法では、十分に改善しないこともあります。そのような場合であっても、しびれを改善させる方法は、あります。

また、しびれが、なるべく、出現しないようにする予防法もあります。

卵巣がん手術後のリンパ浮腫によるむくみは、良くできます。

リンパ浮腫を、治したり、予防する方法はあります。

以下のことを知っていただけると、リンパ浮腫の予防と、改善の方法がわかります。

何故キリンはむくまないか?

筋力が非常にあるために、キリンは、むくみません。筋力を維持することが、リンパ浮腫の治療において、重要になるということです。

浮腫とは何か?

表皮と筋膜の間に液体(水)が溜まっている状態のことです。

リンパ管は一方通行の弁です。もし、リンパ管を流れるリンパ液がスムーズに流れないと、弁が開いたままになり、リンパ液が溢れ出してしまいます。

リンパ郭清したら、全ての方がリンパ浮腫の予備軍

予備軍である以上、少しでも症状が出れば、早く見つけて、リンパ浮腫が悪化しないようにする事が大事です。

セルフチェックのポイントは、太腿の内側をつまむことです。そして左右差がないかを見ましょう。

リンパ浮腫の症状があるときは、厚みに左右差があると、リンパ浮腫の可能性が高くなります。

リンパ浮腫との付き合い方

日常生活で、やっていけない事はありません。運動も種類もこだわらなくても良いです。飛行機もエコノミーでOKです。

しかし、重い荷物や立ち仕事、高温のサウナなどはNGです。

最後にリンパ浮腫の重要事項をまとめますね。

  • 多くの人は手術のあとに、筋力が低下します。だから筋トレが必要。
  • 負荷がかかりすぎの運動はだめですが、適度な負荷をかける運動は必要。

もしリンパ浮腫がひどくなったら、良い病院を受診してください。

一方で、良い病院がまだ少なく、病院の治療を受けても、あまりよくならない方を見かけることも、珍しくありません。

また、いったん、ひどくなってしまうと、セルフケアでリンパマッサージしても、効果ありません。

卵巣がんの手術後の抗がん剤治療の治療費を、安くすることはできる。

抗がん剤治療は、かなりの費用が、かかります。したがって、大半の方は、高額療養費制度を利用することになります。

つまり、一定の金額を超えたら、それ以上を支払わなくても良いという制度です。

一方で、以下のようなケースもあります。

  1. 抗がん剤治療を外来で行った方が、医療費が安くなり、自己負担額が安くなるケース
  2. 月をまたがない形で治療をうけると、自己負担が安くなるケース
  3. 薬を多量に飲んでいるケースでは、本当に飲むべき薬のみに、絞って飲んで、薬剤費を減らせるケース

3のケースは、よく見かけます。

本来であれば飲まなくてもよいお薬を、漫然と飲んでいるケースは非常に多いということです。

ちょっとした工夫や、国の制度をうまく利用すると、あなたの経済的な負担を減らすことは、できます。

病院のソーシャルワーカーに相談すると、あなたの経済的な負担をとるための助言を、してくれることもあります。

再発の兆候で、知っておくべきこと

再発の症状として、知ってほしいこと

再発に特徴的な症状はありません。無症状で、再発することも、多いです。だからこそ、定期的に検査を受けることが必要です。

再発の起きやすい時期と場所

卵巣がんの再発は、手術後5年以内に起こることが大半です。

最低5年間は、気を抜かず、日常生活に気をつけつつ、定期的に検査を受けることが大切です。

ちなみに、再発する場所として多いのは、腹膜(腹水)、リンパ節です。

万が一、再発が見つかっても、適切な対処を行えば、完治にもっていくことも、あります。

卵巣がんの手術後に、定期的に受けた方が良い検査

検査

医師によって、若干異なりますが、多くは、以下のようなやり方で、検査をして、再発がないかをチェックします。

腫瘍マーカー(採血):3ヶ月に1回

CT:半年に1回

腫瘍マーカーが上がったらどうするか?

定期検査の検査結果で、腫瘍マーカーが少し上昇することがあります。

特に、右肩上がりに上昇する場合は、注意が必要です。

たとえ、腫瘍マーカーが正常域内であったとしても、右肩上がりに数値が上昇するときは、再発の兆候であることが多いです。

治療に、なんらかの工夫を付け加えないといけないサインと、言えるかもしれません。

例えば、以下のような事例があります。

60歳代の女性

卵巣がんの手術後に、CA125が上昇してくる。

画像上でも、リンパ節に再発した疑いとなる。

しかし、漢方を内服し、腫瘍マーカーは再び下がり、がんの増大は抑えられる。

 

ちなみに、この方に飲んでいただいたのは、大青葉・山豆根という漢方です。

このように、漢方は、再発を抑える時に、非常に有効な手段になります。

再発の兆候が出たら、漢方を足して、迅速な対応をすると良いでしょう。

最後に、大切なことを、まとめます。

卵巣がんを恐れる必要はないですが、とても、ねちっこいことを忘れるべきではありません。

したがって、手術を終えた後の、最低5年は、以下を意識してください。

すでに小さながん細胞が1つ再発しているつもりで、毎日、体のケアをする。

具体的には、以下のことに注意を払ってほしいです。

  • 適切な抗がん剤治療
  • 病院の治療で、体力を消耗しないようにすること
  • 適切な漢方
  • 適切な食事内容

その結果、卵巣がんをより抑えることは、できるのです。

つまり、卵巣がんの再発する確率を、より0に近づけることはできます。

そして、ステージ2の卵巣がんに負けない体を、作っていきましょう。

そのために、知っておくべきことが、あります。

卵巣がんに負けない方法は、こちらで学ぶことができます。

 

 

 

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医

札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」と、「大腸がんと告知されたときに読む本」を出版。

加藤隆佑医師の論文

加藤隆佑医師のプロフィールの詳細はこちら

関連記事

  • 卵巣がんの腫瘍マーカーであるCA125について医師が解説

  • 卵巣がんに対する腹腔内温熱化学療法(HIPEC)について医師が解説

  • 卵巣がんの再発でも楽に余命を伸ばす!末期からでも回復する治療を医師が解説

  • 卵巣がんが再発する確率の低い手術の方法と、再発したときの再手術の有効性を医師が解説

  • 卵巣がんが腹膜播種の形で再発し、腹水が増えた時の治療法を医師が解説

  • 卵巣がんの治療の流れ|症状と診断ならびに治療を医師が解説