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運動やリハビリのがんへの効果は?運動でがんの進行や再発を抑えられるかを医師が解説

こんにちは。加藤隆佑です。

がんと闘うためには、体力が大切です。そのために、運動やリハビリを取り入れることは大切です。がんの治療を、より効果的な結果にしてくれます。

そのためのコツは、体力を落ちる前から、運動を取り入れることです。

逆に、がんになったからといって、安静にするのはやめないといけません。安静にしていても、がん細胞の増殖を抑えることには、なりません。

むしろ、安静は逆効果です。

安静にすると、全身の筋肉の力は衰えます。例えば、トイレと食事以外は、横になったままで一日を過ごすと、それだけで1%の筋肉量・筋力が低下してしまいます。

2週間の安静では、足の筋力は15~30歳も老化します。

足腰が弱り、体力が低下すると、がんへの抵抗力が落ちます。

抗がん剤の副作用も出やすくなります。

だからこそ、しっかり運動を取り入れてほしいです。

もし、あなたが、抗がん剤の副作用や、痛みといった症状があり、運動ができないならば、医師に症状をとってもらいましょう。症状をとりつつ、筋力を維持できると、より長く生きられます。

同時に、漢方をとりいれると、体力維持と、がんの制御の面から非常に良いです。

運動でがんの進行や再発を抑えられるか?

残念ながら、「運動をすると、がんが小さくなる」というデータはありません。また、いろんな患者さんを見てきましたが、「運動をしたからがんが小さくなった」という方は、見た事がありません。

しかし、定期的に運動をした方が、がんになっても、再発率がさがり、生存率がよくなるデータは複数あります。

たとえば、医学論文では、以下のような発表がありました。

前立腺がん患者を追跡調査した米国ハーバード大学の研究結果

「週3時間以上のウオーキング」をした場合は、がんの再発・転移、死亡のリスクは57%下がる。

(Cancer Res.2011 Jun 1;71(11):3889-95.)

運動を、是非取り入れましょう。病院に入院中ならば、がんリハビリというのを、医師にお願いしましょう。

そうすれば、入院中でも運動をすることができるようになります。

運動やがんリハビリを取り入れることにより、以下のようなメリットがあることが、判明しているのです。

  • 治療による副作用の軽減
  • 筋力の維持
  • より長く元気に過ごすことができる
  • 倦怠感やうつの症状の軽減

たとえ抗がん剤の治療中であっても、運動を取り入れることは、推奨されているのです。

ただし、過度な運動は避けるべきです。たとえば、マラソンなどです。

私は、1日30分の散歩とコアマッスルを鍛える運動を推奨しています。

ヨガやストレッチもよいでしょう。

コアマッスルを鍛える運動は、以下の内容を参考にしてください。

図は、抗がん剤治療を受けるときに読む本より引用

運動を継続させるコツとは?

一般論になりますが、「自分で行う運動」ですと、強制力が働かない分、途中で運動をやめてしまう確率が高いです。

どこかに行って(リハビリする施設、ジム、(女性ならば)カープスなど)、運動した方が、成功率は高くなります。

もしくは、介護保険を用いて、リハビリをするという手もあります。

「介護認定の手続き(同時にケアマネジャー選定)→利用できるリハビリを、提案してもらう」という流れが、一般的によく行われることです。

介護認定というと、言葉の響きがよくないのですが、目的は「公的支援(保険)をうけつつ、リハビリを利用する」ということなので、あまり、言葉の響きに惑わされない方がよいです。

また通いのリハビリにも、いろいろあります。

  • ご高齢の方が集まって、雑談をする時間が長いリハビリ
  • 短時間型の通所リハビリ
  • 機能訓練特化型のデイサービス

このあたりはケアマネージャーと相談するとよいです。

さて、体力の維持以外にも、がんを抑えるためにすべきことはあります。

そして、5年、10年と元気に過ごせるように、していきましょう。

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医

札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」と、「大腸がんと告知されたときに読む本」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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