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膵臓癌の検査の方法と費用ならびに検査の期間を医師が解説!楽に検査を受ける秘訣とは?

こんにちは。加藤隆佑です。総合病院でがん治療を専門として働いています。

もし、あなたが、膵臓がんを疑わせる症状がある時は、検査を受けて欲しいです。

膵臓がんは、早期発見できれば、完治が望める病気だからです。

本日は、膵臓の診断のために、必要な検査と費用について、解説いたします。

同時に、私の17年間の膵臓がん治療の経験をもとに、楽に検査を受ける方法と、膵臓がんを克服するコツを説明いたします。

膵臓がんの初期症状(自覚症状)

膵臓は、胃の後ろの深部にあります。がんが発生しても症状が出にくく、早期の発見は非常に難しいです。しかし、早期の段階で見つかることも、あります。

症状がでるとしたら、腹痛、食欲不振、黄疸(体が黄色くなること)、腰や背中の痛みです。すい臓がんのために、糖尿病を発症することもあります。

しかし、これらの症状は、すい臓がん以外の理由でも起こることがあります。いづれにせよ、このような症状のときは、病院で検査を受ける必要があります。

 

膵臓がんが疑われた時に行う検査

超音波検査、CTを行います。

膵臓がんの腹部エコー検査

超音波を発生する機械を、おなかにあて、お腹の中を観察します。

痛みはなく、負担が少ない検査です。

エコー検査で膵臓を観察することができますが、患者さんの体形や状態によっては、膵臓をくまなく観察できないことがあります。

特に膵臓の尾部(膵臓のハジの部分)は、腹部エコーにより、しっかり調べることが難しい部位です。

膵臓がんのCT検査

膵がんを示唆する所見が無いか?を確認するために、CT検査をします。

もし、膵がんを示唆する所見があったら、以下のことも、確認します。

  • 画像所見から、膵がんとして矛盾しないか?
  • 膵がんが、遠くの臓器(肺や肝臓)への転移はないか?
  • 膵臓から遠く離れたリンパ節への転移はないか?
  • 膵臓の周りの臓器(十二指腸や腎臓)へ、膵臓がんが浸潤していないか?
  • 膵臓がんが、上腸間膜動脈といった重要な血管に浸潤していないか?
  • 腹水はないか?

CT検査は非常に重要な検査です。

大半のケースは、これだけの検査で、膵がんの診断ならびに、膵がんの広がりが、分かります。さらに治療方針の大まかなことを判断できます。

もし、これらの検査で、膵がんを疑わせる所見がなければ、一安心できます。

ただし、非常に早期の膵がんは、これらの検査であっても、発見できないことはあります。したがって、早期の膵がんの存在を完全に否定できなければ、経過を追う必要が出てきます。

つまり、定期的に、検査を受けて、膵がんを示唆する所見が出現しないかを、確認するということです。

さて、典型的な膵がんであれば、画像診断だけで、診断はできます。

しかし、念のために、内視鏡を用いて細胞を採取する検査を行い、細胞レベルでも、膵臓がんであることを確認した上で、治療に踏み切るケースことが多いです。

そこで、次に、内視鏡検査について、説明していきます。

膵臓がんの内視鏡検査

膵臓がんの内視鏡検査をする目的は、2つあります。

1つ目は、膵がんの細胞採取を試みるためです。このときに用いられる機械は超音波内視鏡です。

超音波内視鏡検査による膵がんの細胞採取とは?

超音波装置の付いた内視鏡を口から入れます。

そして、胃や十二指腸の中から、超音波を出すことにより膵臓の腫瘍の部分を描出します。

次に、腫瘍の部分に針を刺して、腫瘍の細胞を採取します。

穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)といいます。

太い内視鏡を用いるので、非常に苦しい検査となります。

そこで、検査の際には、少し眠くなる薬を注射することによって、楽に検査を受けられるようにします。

検査時間は30分前後です。

採取した細胞を顕微鏡で調べて、癌かどうかを確認します。

もし顕微鏡で、採取した細胞に、がん細胞を認めなくても、CT所見などから膵がんが強く疑われる場合には、手術をすることもあります。

膵がんによって黄疸が出現した場合も、内視鏡検査が有効です

膵臓がんが発見されるきっかけの1つが、黄疸という症状がでることです。

黄疸がでる理由は、胆汁の流れ道である胆管というところに、膵がんが浸潤するからです。その結果、胆汁がスムーズに流れなくなり。黄疸がでるのです。

このような場合には、内視鏡治療によって、膵がんによって生じた黄疸を、良くすることができます。

内視鏡によって、狭窄した胆管にステント(ストローのようなもの)を留置すると、黄疸は治ります。

ステントの中を通って、再び胆汁はスムーズに流れるようになるからです。

この治療は胆汁の流れをスムーズにするだけであり、膵がんそのものの治療ではありません。

胆汁がスムーズに流れるようになったら、手術や抗がん剤による治療を検討します。

この内視鏡検査は、検査時間が30から60分と、やや長い時間がかかります。

そこで、検査の際には、少し眠くなる薬を注射することによって、楽に検査を受けられるようにします。

次に、膵がんが疑われる時に行われる、血液検査の詳細を説明していきます。

膵臓がんにおける血液検査とは?

血液検査によって、以下のことがわかります。

腫瘍マーカー

膵臓がんではCEAやCA19-9と呼ばれる腫瘍マーカーなどを検査します。

がんがあっても、必ずしも腫瘍マーカーが上昇するとは限りません。

腫瘍マーカーは、手術後の再発のチェックや抗がん剤治療の効果判定の参考に使われます。

臓器の機能が正常化かどうか?

腎機能や肝臓の機能を確認します。

もしこれらの臓器の機能が低下しているようであれば、手術や抗がん剤治療による合併症が起こりやすくなります。

糖尿病がないかどうかも、チェックします。

糖尿病があり血糖値が高いときは、膵臓がんの治療の前に、糖尿病の治療を優先しないといけないこともあります。

手術ができる段階の膵臓がんとは?

以下のような状況であれば、膵臓がんを手術で取り除けることになります。

  • リンパ節の転移が膵臓の周囲にとどまってる。
  • 肝臓や肺といった臓器に転移がない。
  • お腹の中に、膵臓がんが、ばらまかれている所見(腹水など)がない。
  • 膵臓がんが、上腸間膜動脈といった重要な血管に浸潤していない。

ただし、「お腹の中に、膵臓がんが、ばらまかれていないか?」は、実際にお腹の中を見てみないとはっきりしないこともあります。

そこで、手術の際に、審査腹腔鏡という検査をして、「お腹の中に、膵臓がんが、ばらまかれていないか?」を確認した上で、膵臓の切除に臨むケースが多いです。

膵臓がんの審査腹腔鏡検査とは?

審査腹腔鏡とは、お腹に小さな穴をあけて、そこから腹腔鏡というカメラを挿入して、お腹の中に膵臓がんが、ばらまかれていないかを確認する検査のことです。

膵臓がんの検査費用と、検査の期間は、どのくらいかかるのか?

実際の膵臓がんの外科的な手術を行った患者さんの事例で、検査費用をお示しします。

(患者様の置かれている状況や、病院によって、実施される検査内容が異なります。1つの目安としてご覧ください。)

初診料:約3000円

再診料:約700円

超音波検査:約3500円

CT検査:約16000円

MRI検査:約18500円

採血検査:約10000円

ここまでの検査は2日ほどで終わります。

今回のケースは合計51700円かかっています。

(実際の負担額は1割から3割です。)

以上の検査で、膵がんが強く疑われたので、さらに、以下の検査に進みます。

膵臓がんの細胞採取のための、超音波内視鏡を用いた検査(EUS-FNA):約48000円

採取した細胞を、顕微鏡で確認する検査(病理検査):約15000円

ちなみに、膵臓がんの細胞採取のための、超音波内視鏡を用いた検査(EUS-FNA)は1泊2日で行われることが、多いです。

手術をすることになったので、さらに、以下の検査を行うことを行いました。

PET検査骨:約75000円

胸のレントゲン写真:約2100円

肺活量の検査:約2000円

心電図検査:約1300円

最後に、膵臓がんのステージごとの治療法の、大まかなことを、説明いたします。

すい臓がんのステージに応じた治療法

検査より、どのステージの膵癌であるかが、わかります。

ステージの詳細は以下の通りです。

膵がんステージ1

膵がんの大きさが、2センチ以下

膵がんステージ2

膵がんの大きさが、4センチ以下

膵がんステージ3

膵がんが、腹腔動脈、上腸間膜動脈、もしくは総肝動脈へ及ぶ。

大きさだけでいえば、ステージ1である15ミリという非常に小さながんが、腹腔動脈に食い込めば、ステージ3になるということです。

膵がんステージ4

肺、肝臓、腹膜といった臓器に、転移がある。

次に、ステージごとの治療法を解説します。

すい臓がんステージ1、ステージ2の治療

手術で、膵臓がんを取り除きます。

その後は、抗がん剤治療を短期間受けることにより、再発率をさらに下げます。

用いる抗がん剤として、TS-1という飲み薬の抗がん剤になります。

再発の危険度は、非常に高いです。その後、何も治療を受けなければ、8割の方は、再発します。

再発を抑えるために、TS-1という抗がん剤を1年飲むことが大切です。

そのような治療により、再発率は、数%下がります。

5年間無再発でいられる割合を、約35%まで上げることができるのです。

そうはいっても、まだ満足のできる5年生存率とは言えません。

また、手術で弱った体に追い打ちをかけるように、再発ケースも、珍しくありません。そのようなときは、打つ手がありません。体が弱っていて、追加の治療を十分にできないからです。

抗がん剤以外にも、膵がんの再発率を減らす方法はある。

漢方や、薬膳的な食事といった、東洋医学的なことを、加えましょう。

再発する確率を、さらに、0に近づけることができます

この段階で、漢方や、薬膳的な食事を取り入れることは、非常に重要です。

例えば、以下のような医学的なデータがあります。

—–

877症例の胃がんの手術後の生存率と食生活の関連を検討した愛知がんセンターからの報告。

豆腐を週に3回以上食べていると、再発などによるがん死の危険率が0.65に減り、生野菜を週3回以上摂取している場合の危険率は0.74になる。

—–

上のデータは、「胃がんにおいて、食事内容と治療成績に関連がある」というものです。

これは胃がんにおけるお話ですが、膵臓がんでも同じでしょう。

膵臓がんを抑えることと、食事内容には、強い関係があることを、知っておいてほしいです。

また、漢方は、しっかりと知識のある人に助言を求めると良いです。

それ以外の注意点として、膵臓の切除のために、思ったように食事が取れなくなることが、あります。

膵臓の手術は、他のがんに比べると、体に、負担がかかるのです。

そこで、食事の食べ方を工夫したり、薬膳的な食事を取り入れると良いです。

つまり、以下の3つのことをバランス良く、活用することが大切です。

  • 適切な西洋医療
  • 適切な食事内容
  • 適切な東洋医学(漢方)

膵がんに負けないために、知って欲しいことは、こちらでも説明しています。

すい臓がんステージ3の治療

腸や肝臓を栄養する血管に、膵臓がんが及ぶと、ステージ3になります。

そのような血管に、「少し接する」程度の膵がんであれば、手術で切除することはできます。しかし、手術をしても、再発率が高いです。

そこで、手術の前に、「抗がん剤+放射線治療(もしくは抗がん剤治療単独)」による治療で、がんの縮小を図った上で、手術をするのが、主流になってきています。

また、腸や肝臓を栄養する血管に、「深く食い込んでいる」場合は、手術で切除することはできません。

その場合は、「抗がん剤+放射線治療(もしくは抗がん剤単独)」による治療で、縮小を図ります。

そして、手術ができるくらい縮小した場合には、手術を検討します。


先ほど、放射線治療と書きましたが、もし経済的な余裕があるならば、重粒子線治療を、検討してもよいでしょう。

重粒子線治療の方が、よりよい治療結果が期待できるケースがあることを、忘れてはいけません。

ここまでのことで、大切なことを、まとめます。

膵臓がんは、手術単独では、なかなか完治にもってこれません。抗がん剤治療を併用することが、必須です。

だからこそ、手術を受けたあとに、抗がん剤治療を受けられるだけの体力を残すことも、大切です。

病院で手術を受けた時には、リハビリをがんばって受けて、体力をつけましょう。

膵臓がんステージ4の治療

肝臓、肺、腹膜、複数のリンパ節に、がん細胞がある状態のことです。この状態は、がん細胞が、体に広く散らばっていると予想されます。

手術による治療では、がんをすべて取り除けないために、抗がん剤治療が中心となります。

抗がん剤であれば、体の血流にのって、体中にひろがったがん細胞に、がんを倒す薬の成分を、行き渡らせることができるからです。

その治療により、体に広く散らばっているがんが、制御できたと予想される場合は、根治を目指した手術が、なされることも、あります。

ステージ4の膵臓がんの治療の詳細は、こちらです。

膵臓がんは、完治を望める病気になりました。

膵臓がんは、以前に比べると、克服できる病気になってきました。

一方で、さらに、生存率をあげたり、再発率をさげるために、病院の治療に加えて、取り入れるべきことも、あります。

病院で受ける治療は大切ですが、それだけでは、十分ではないのです。

余命宣告をされていたとしても、もっと長く生きることは、できます。

そして、膵臓がんに負けない体を作っていきましょう。そのために、知っておくことがあります。

すい臓がんに負けない方法は、こちらで学ぶことができます。

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医

札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」と、「大腸がんと告知されたときに読む本」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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