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肺がんの治療の流れ|症状と診断ならびに治療を医師が解説

こんにちは。加藤隆佑です。がん治療の専門医として、小樽協会病院で勤務しています。

さて、私の18年間のがん治療の経験を踏まえて、肺がんの治療の流れと、肺がんを克服するためのコツを書いていきます。

肺がんの初期症状(自覚症状)

はじめは、ほとんど症状がありません。病状の進行とともに、せき、たん、血痰(血の混じったたん)、発熱、呼吸困難、胸の痛みなどの症状があらわれます。

しかし、これらは、肺がんでなくても、起こりうる症状です。複数の症状がみられたり、長引いたりした場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

また、症状がなくても、検診の胸部X線検査やCT検査にて、発見されることもあります。

肺がんを疑う症状がある時の検査とは?

肺がんの胸部X線検査

肺にがんを疑う影があるかを調べます。

すぐにできて、広く普及している検査です。集団検診でも、用いられています。

しかし、この検査ですと、非常に小さな肺がんを、指摘できないことがあります。

したがって、最近は、CT検査が、推奨されています。

肺がんのCT検査

胸部レントゲン写真だけでは、肺がんの診断をつけることは、難しいです。

CTをとれば、より細かな情報を得ることができます。

CTの画像所見から、肺がんの可能性が高いかどうかの、見当をつけることができます。

CT検査から、以下の情報を得ることもできます。

  • 臓器(肺や肝臓など)への転移の有無
  • リンパ節への転移の有無

肺がんの広がりを確認する上でも、CT検査は必須です。

以上の検査と並行して血液検査をすることが、多いです。

肺がんにおける血液検査とは?

血液検査によって、以下のことがわかります。

1、腫瘍マーカー

肺がんではCYFRA21-1、CEA、SCC、SLX、CA125、NSE、proGRPと呼ばれる腫瘍マーカーなどを検査します。

しかし、肺がんがあっても、必ずしも腫瘍マーカーが上昇するとは限りません。

腫瘍マーカーは、手術後の再発のチェックや抗がん剤治療の効果判定の参考に使われます。

2、臓器の機能が正常化かどうか?

腎機能や肝臓の機能を確認します。

もし、これらの臓器の機能が低下しているようであれば、手術や抗がん剤治療による合併症が起こりやすくなります。

糖尿病がないかどうかも、チェックします。

糖尿病があり血糖値が高いときは、肺がんの治療の前に、糖尿病の治療を優先しないといけないことも、あります。

以上の検査結果を統合して、肺がんの可能性が高いかどうかを判断します。

肺がんの可能性が高い場合は、肺がんを疑わせる場所から細胞を採取します。

肺がんの病理検査とは?

肺がんを疑わせる場所から細胞を採取します。

その細胞を顕微鏡で観察して、本当にがんなのかを調べる検査のことを、病理検査といいます。

細胞の採取の仕方には、3通りあります。

1、肺がんの喀痰細胞診

がんの組織が混ざって、痰が排出されることがあります。

そこで、痰を採取して、がん細胞の有無を確認します。

1回だけの検査ではがん細胞を発見しにくいため、数日かけて何回か繰り返し痰を採って検査します。

2、肺がんの気管支鏡検査

気管支鏡と呼ばれる内視鏡を、鼻または口から挿入します。

そして、気管支の中を観察し、がんが疑われる部位の組織や細胞を採取します。

検査前に喉や気管の痛みを軽減するため、局所麻酔を行った上で行います。さらに、少し眠くなる注射を用いて、楽に検査をうけられるようにすることもあります。

3、肺がんの針生検による検査

気管支鏡検査では、細胞を採取できない見込みが高いときや、気管支鏡検査をしても、診断ができなかった場合に行います。

CTや超音波装置で確認しながら、皮膚から細い針を肺に刺して組織を採取して調べます。

気管支鏡検査と比較して、気胸などの合併症を起こす可能性が高いです。

以上の検査を通して、肺がんの最終診断をつけます。

肺がんの細胞を採取できなかった場合には、診断と治療を兼ねて、肺がんを疑わせる病巣を、切除することも、あります。

肺がんの広がりを決定するための検査で、さらに以下の検査が追加されることが、多いです。

  • PET
  • 骨シンチグラフィー

肺がんのPET検査とは?

がん細胞は、ブドウ糖を取り込む性質があります。

そこで、放射性ブドウ糖液を注射し、それがどの部位で取り込まれるかを確認しようというのが、PET検査です。

放射性ブドウ糖液が取り込まれた部位に、肺がんはあると推測できます。

PET検査の結果、「CT検査では、問題ないと判断された場所」に、肺がんの転移が指摘されることがあります。

肺がんの骨シンチ検査とは?

肺がんは、骨に転移しやすいがんです。

したがって、骨に転移していないかどうかを、骨シンチという検査で、確認する場合があります。

以上の検査を通して、以下のように、ステージが決まります。

そして、以下のうちの、どの治療方針がよいかを、決定します。

  • 手術
  • 抗がん剤治療
  • 抗がん剤治療+放射線治療

最後に、肺がんのステージごとの治療法の、大まかなことを、説明いたします。

肺がんにはいろんな種類がありますが、最もよく発見される「肺の腺がん」と、「肺の扁平上皮がん」に絞って、説明いたします。

 

肺がんのステージに応じた治療法

ステージ1、ステージ2、一部のステージ3Aの肺がん

手術で、がんを切除できるできる段階です。安全に切除できる場合は、手術で切除してもらいましょう。

最近は、がんが小さければ、放射線治療だけでも、根治になることも、増えてきました。

一方で、がんを切除しても、再発の危険はあります。再発の危険度によっては、抗がん剤治療を受けた方が、良いこともあります。

2cm以上の肺がんで、ステージ1Aもしくはステージ1B期の肺がんならば、テガフール・ウラシル配合剤(UFT)という飲み薬の抗がん剤治療を、しばらくの間、受けることが、推奨されています。

それほど、負担のかからない抗がん剤治療です。

ステージ2、3Aならば、シスプラチンという点滴の抗がん剤を併用した抗がん剤治療を行うことが、推奨されています。

手術後に「シスプラチン+ビノレルビン」という抗がん剤治療を受けた場合の生存率は、以下の通りです。

ステージ2:手術だけ43%、手術+抗がん剤54%
ステージ3:手術だけ22.5%、手術+抗がん剤40%

注意点として、シスプラチンは体に負担のかかる治療です。シスプラチン併用の抗がん剤治療による、治療関連死は約1%です。

従って、負担のない範囲で、抗がん剤治療を受けることは大切です。同時に、徹底的な副作用対策をしましょう。

しかし、それだけでは、十分な治療効果とは言えません。さらに、漢方や、薬膳的な食事といった東洋医学的なことを、加えましょう。

再発する確率を、さらに、0に近づけることができます。

この段階で、漢方や、食事療法を取り入れることは、非常に重要なのです。

食事と再発率の関係については、以下のようなデータもあります。

—–

877症例の、胃がんの手術後の生存率と食生活の関連を検討した、愛知がんセンターからの報告

豆腐を週に3回以上食べていると、再発などによるがん死の危険率が0.65に減る。

生野菜を週3回以上摂取している場合の危険率は0.74になる。

—–

これは胃がんにおいて、食事内容を気をつけると、再発率が下がるというデータです。このことは、肺がんでも、同じことが言えるでしょう。

肺がんを抑えることと、食事内容には、強い関係があることを、知っておいてほしいです。

また、漢方は、適切な内容で、必要な用量をしっかり飲みましょう。そのようなことをしっかりと助言できる方から、漢方を提案してもらうと良いです。

漢方は、インターネットでも、信頼できるものが、容易に入手できます。

一部のステージ3Aとステージ3B、ステージ3Cの肺がん

手術で、取り除くことができない段階です。

2つに分けて、考えます。

1、完治を目指す放射線治療ができる段階

手術ができない段階であっても、完治を目指す放射線治療をできる、がんの広がり方ならば、抗がん剤と放射線治療を同時併用した治療を受けることになります。

ちなみに、体力がなくて、抗がん剤治療を受けることができない場合は、放射線治療だけになることも、あります。

抗がん剤としては、以下のどれかが、用いられることが多いです。

  • カルボプラチン+パクリタキセル療法
  • シスプラチン+ドセタキセル療法

そして、完治を目指した「放射線と抗がん剤治療の併用療法」をした後に、再びがんが大きくなるのを防ぐために、イミフィンジ(デュルバルマブ)という免疫療法を1年間します。

免疫療法を追加することにより、再発率を10%くらい下げることができます。

そして、5年間再発しないでいられる確率は、20%くらいとされています。

注意点として、抗がん剤治療や放射線治療は、体に比較的、負担のかかる治療になります。

医師にしてもらう副作用対策と、あなたが自宅でできるセルフケアを組み合わせて、乗り切っていきましょう。

2、完治を目指す放射線治療ができない段階

次にお話するステージ4の肺がんに準じた治療になります。

ステージ4もしくは、再発の肺がん

肝臓、肺、腹膜、複数のリンパ節に、がん細胞がある状態のことです。この状態は、がん細胞が、体に広く散らばっていると予想されます。

抗がん剤治療が中心となります。その治療により、体に広く散らばっているがんが、制御できたと予想される場合は、根治を目指した手術が、なされることがあります。

ちなみに、肺がんの遺伝子のタイプによって、治療方針が、かなり異なります。

具体的には、以下の遺伝子を事前に調べることが、重要になります。

EGFR、ALK、ROS1、PDL1

これらの遺伝子のどれかに異常があれば、分子標的薬の治療となります。

そして、ステージ4の肺がんの詳細は、こちらです。

肺がんは、完治を望める病気になりました。

肺がんは、以前に比べると、克服できる病気になってきました。

一方で、さらに、生存率をあげたり、再発率をさげるために、病院の治療に加えて、取り入れるべきことも、あります。

病院で受ける治療は大切ですが、それだけでは、十分ではないのです。

余命宣告をされていたとしても、もっと長く生きることは、できます。

そして、肺がんに負けない体を作っていきましょう。そのために、知っておくことがあります。

肺がんに負けない方法は、こちらで学ぶことができます。

 

 

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医

札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」と、「大腸がんと告知されたときに読む本」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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