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直腸がんになっても、ストーマを回避する方法を医師が解説

こんにちは。加藤隆佑です。

直腸がんの手術を受けないといけない時に、もっとも気になることは、ストーマ(人工肛門)になるかどうかです。

もし、人工肛門を作る場合は、もとの肛門はがんと一緒に切除され、肛門のあった部位は縫い閉じられます。

そして、肛門の変わりとなって、便の出口となるストーマを作ることになります。

本日は、どのようなときに、ストーマを作るのか?さらに、ストーマを回避する方法があるかを解説します。

どのようなケースがストーマになる?

はじめに、直腸がんの手術のときに、ストーマになるかどうかに関して説明します。

直腸以外の場所にできたがんに関しては、ストーマにはなりません。

しかし直腸にできたがんの場合は、ストーマになる可能性はあります。

肛門括約筋という肛門をしめる筋肉を、手術の時に残せないことがあるからです。

ちなみに、肛門括約筋を残せない場合とは、以下の状態を指します。

「直腸のがんを切除するときに、がんの取り残しをさけるために、肛門括約筋のある場所まで切除しないといけない時」

肛門括約筋を切除してしまうと、たとえ肛門が残っても締めたり緩めたりすることができなります。

その結果、肛門の役目を果たせなくなります。便が常に漏れてしまう状態になります。従って、ストーマが必要になるのです。

一方で、直腸のがんが、肛門括約筋からある程度の距離が離れていたら、肛門括約筋を残せます。その結果、ストーマは不要になります。

ストーマを回避する方法はある?

ストーマを回避する方法は、2つあります。

1つは、手術の前に放射線治療と抗がん剤治療の併用療法を行ってから、手術を行う治療法です。

術前化学放射線療法と呼ばれます。

肛門括約筋を残して切除できるくらいに直腸のがんが縮小すれば、人工肛門を避けられます。

まだ標準的な治療にはなってはいませんが、欧米では標準的な治療になっていますし、国内でも次第に普及することが予想されます。

ただし治療効果には個人差があります。

このような治療を受けたとしても、肛門括約筋を残せるまでがんを縮小させられるかは、やってみないとわかりません。

また、肛門括約筋を残せたとしても、排便の機能が低下してしまい、1日に10回以上トイレにいかないといけない人や、オムツなしでは外出できない人もます。

人工肛門にならないですんだとしても、必ずしも、快適な生活が約束される訳ではないのです。

ストーマを回避するための、もう一つの方法とは?

ストーマを回避するための、もう一つの方法があります。

直腸がんができる場所によっては、肛門括約筋を一部残すことができる場合があります。

そのような場合も、ストーマを回避できます。

しかし、括約筋間直腸切除術という高度な技術を要する手術になってしまいます。さらに、手術を受けた後に失禁の回数が多くなってしまい、日常生活の質がかなり落ちてしまうことが多いです。

このような問題点があり、あまり普及はしていない治療法となります。

もしストーマになってしまったら、生活の質は落ちるのか?

仮にストーマになってしまったとしても、普段通りの社会生活を送ることはできます。

臭いが気になることも、ありません。

ストーマの管理のポイントとは?

お腹への装具の張り付け方が不適切ですと、便がもれたり皮膚があれる原因となります。

また、手術直後には体に合っていた装具でも、その後太ったり痩せたりした結果、装具が合わなくなることもあります。

このようなトラブルに直面したときには、病院に在住しているストーマ外来の看護師や皮膚・排泄ケア認定看護師といった人に、相談しましょう。

一人で悩まないで早く相談することがコツです。

もし通院している病院にストーマ外来がない場合は、他の病院のストーマ外来を受診することは可能です。

また、ストーマを造設した人は身体障害者福祉法の4級の障害に該当することになります。身体障害者手帳を取得することできます。そして、装具の給付や税の控除のサービスを受けられます。

次にストーマを装着している人が抗がん剤治療を受けるときの注意点を説明します。

ストーマを装着している人が抗がん剤治療を受けるときの注意点とは?

抗がん剤の成分はしばらくの間は尿や便に残ります。

便や尿などに直接触れたとしても健康に大きな害を及ぼすことはありませんが、ストーマの処理をご家族の人がしているならば、便の中に抗がん剤の成分が残っている可能性がある期間は、ご本人にストーマの処理してもらったほうが良いでしょう。

注意しないといけない期間とは、抗がん剤の投与中と投与終了後2日間です。

もしご本人が処理をするのが難しい時は、手袋を着用してストーマの処理をしてください。

ゴミ箱に廃棄するものは、二重にしたビニール袋にいれ密閉して廃棄して下さい。

また、排泄物が皮膚についたら、直ちに水道水で十分に流し石けんで洗いましょう。

ストーマの人に限らない話となりますが、ほかの人が抗がん剤に暴露されないために以下のことを心がけないといけません。

  • 男性は便座にこしかけて排尿をする。
  • 血液が手についた場合やトイレの後は、石けんで手を良く洗う。
  • 使用後のトイレは、トイレのふたをして水を流す。
  • 尿がこぼれた場合には、トイレットペーパーできれいにふきとりトイレに流す。

排泄物や嘔吐物に関しては注意を払って処理をしてほしいということを説明しているだけであり、普段通りにいろんな人と接して全く支障はありません。

さて、直腸がんの手術後には、再発防止を心がけないといけません。

そのために知って欲しいことは、こちらで学ぶことができます。

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医

札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」と、「大腸がんと告知されたときに読む本」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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