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がんの告知をしないメリットはある?告知でうつ病にならないか?そのような悩みの解決法

こんにちは。加藤隆佑です。

さて、がんの告知をすべきか悩まれる家族の方がいます。

結論ですが、がんが見つかったときに、告知をするべきです。

告知されると、精神的なショックを強く受けます。そのショックから立ち直れないのでは?と、家族の方は不安になります。

しかし、時間とともに、そのショックから、必ず立ち上がれます。

そして、ご自身の病気と、しっかりと向き合った方が、長い目で見ると、たくさんのメリットがあります。

最大のメリットは、今後の人生の生き方を、もう一度、見つめ直すことができるということです。

がんとは、命に関わる病気です。治るかたは、たくさんいますが、残念ながら、すべての方が助かる訳ではありません。

死の可能性に直面することにより、今後の人生の送り方を、再考しないといけないことになります。また、これまでの生き方の意味付けを、考え直すことにもなります。

それは、とても大変なことなのですが、それらのことをちゃんとすることが、より良い生き方につながります。

ただし、がんの告知をしない方が良いケースがあることも、事実です。そのことについては、この記事の後半で、お伝え致します。

告知をしないとどうなる?

告知しない場合、病状が進んでつらい状況に、なったとします。

患者さんは疑心暗鬼になります。

  • なぜ、病院に行っても、病気が良くならないのか?
  • なぜ、副作用のある治療を受けないといけないのか?

ご家族や医療者に不信感を持ちます。

認知症の家族が、がんになったときに、告知をする必要があるのか?

認知症の程度にもよります。もし記憶を維持することが、できないならば、告知をするメリットは、ありません。

告知をすることにより、不用意な混乱を与えるだけになってしまうでしょう。

認知症の症状が強いときには、がんの告知のメリットは非常に少ないです。

逆に、認知機能がある程度しっかりしているときは、どれだけ高齢の方であっても、がんであることを、お伝えした方が良いです。

注意点として、ご高齢の方は、若い方に比べると、病状に対する理解が、スムーズにできないことが多いということがあげられます。

ご高齢の方への説明のときは、丁寧で、分かりやすい説明が要求されます。

がんを告知されて、うつ病にならないか心配です。

—-

あちこち検査をしたことにより膵臓がんが発覚しました。膵尾部に二センチの悪性腫瘍がみつかりました。

母はもとより、父もひどくショックを受け、まだまだ現実を受け入れられていない状態です。

とにかく、どのように精神状態を支えてよいものか、私も途方にくれております。

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このようなショックな状況であっても、気持ちを楽にすることはできます。

さて、診断後に、現実を、受け入れられずに、そのようなことになりがちです。

しかし、誰もが、どの程度の時間がかかるかという個人差はありますが、必ず、精神的なショックは乗り越えれます。

従って、一時的なショックは、やむを得ないと思ってください。

そして、適切な対応をすることにより、ショックをより早く乗り越えることが、出来るようになります。

家族がすべきこと

本人の話をよく聞くことです。

そして、無理に慰めたり元気づけようとしたりする必要はありません。

病気を抱えた人として特別扱いするよりも、寄り添ってあげましょう。家族が近くにいるだけで、本人のストレスを軽減できます。

次に本人をサポートしながら、家族の方も、がんの病状を理解して欲しいです。告知をされた本人は、ショックによって、適切な判断ができなくなることがあります。そのようなときは、家族がその手助けをしないといけません。

また、がんになった人の行動や言動をちゃんと観察し、時には記録しましょう。その情報が、治療やケアにとても役に立ちます。

治療に備えて、体力の低下をさせないことも、大切です。

人によっては、ショックのために、食欲低下、睡眠不足、家からでなくなり、筋力低下ということが、おきてしまうこともあります。

そういうことは、体力低下になり、治療にも、支障がでます。だからこそ、体力の維持を、しないといけません。

そのためにも、体力の維持に繋がる食事を意識して欲しいです。

そして、一日5分だけでもよいので、外に出るように、家族は促して欲しいです。

ちなみに、うつ気味で、食欲がないときは、ドグマチールを一日の量として30ミリグラム処方してもらうとよいです。

本来は、一日150ミリグラム飲むので、このような飲み方は、やや特殊な飲み方です。しかし、とても効果が期待できます。

私が信頼している精神科の医師に教えて頂いたことがきっかけで、私も、たまにそのような処方をします。

安易な薬物療法は避けるべきですが、薬物療法を考慮した方が良いこともあるのです。

大半のケースにおいて、薬物なしで、食欲や元気は回復します。

がんの告知を希望しない患者さんにも、告知をする必要がある?

患者さんが病気のことを知りたくない、というケースは、ときどきあります。

その場合は、その情報を患者さんに不用意に押し付けるのはダメです。

良かれと思ってしたことが、逆効果になります。

このようなときには、なぜ患者さんは、知りたくないと思っているのか尋ねてみましょう。

知りたくないという気持ちを、しっかり受け止めてあげることが大切です。一方的に、「詳しく病状を聞かないとダメよ!」とお話してはダメです。

また何回か話を聞いているうちに、「病状を詳しく聞いてみようかな?」という気持ちになることは、多いものです。

さて、残念なことに、一部の医師は、知りたくないという気持ちを表明している患者さんに、無理やりがんの告知をしてしまうことがあります。

そのようなケースが減るように、医師に対する「告知の仕方の教育」の普及も大切です。

末期の状態で見つかったがんであっても、告知は必要?

もし余命があと数週間という状態で見つかったときにも、最近は、がんは告知されます。

そして、患者さんは、気持ちの整理をつけられる方が大半です。

もし告知をすることに、家族の方が不安ならば、がんの本人の気持ちを確認してみましょう。

ホスピスに入院するときは、がんの告知は必要なのか?

ホスピスに入院するときには、がんであることを知っていることが、前提となっています。

しかし、中には、がんであることを知りたくない人がいます。そのような人は、ホスピスに入れないのでしょうか?

実は、日本では有名なあるホスピスでは、告知をしていなくても、入院を可としています。

その理由を、私がそのホスピスのスタッフに確認したところ、以下のようなことを教えて頂きました。

「がんの告知を受けることを希望していない方」であっても、がんであることは察してはいる。

真っ向から、がんと言われることを希望しないわけですから、そのような気持ちを尊重したい。

そして、本人が知りたいと思ったときには、がんのことを伝えよう。

 

そのような心がけで、緩和医療を提供するのだそうです。

私は、そのホスピスを見学したときには、とても感銘を受けました。とても学ぶべきことが多かったです。

その病院の名前は、東札幌病院です。

  • スタッフの方が、とてもやりがいを持って働いている
  • 患者さんのために、どうしたらよいかを、みんなが同じ足並みで、考える
  • 理念が浸透していて、理念を、実際に、しっかりと実行に移している。

この病院だったら、私も、入院したいと思うような病院でした。

ちなみに、大きな組織ほど、足並みが、そろわないものです。足並みがそろわないと、患者さん目線のよい医療はできないのは明白です。

このような病院が、日本中にあると良いと感じました。

さて、がんと診断されても、克服する確率をあげることは、できます。

そのために知って欲しいことは、こちらに書いています。

 

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医

札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」と、「大腸がんと告知されたときに読む本」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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