抗がん剤の脱毛の予防法、そして頭皮ケアからウイッグの選び方を医師が解説
こんにちは。加藤隆佑です。小樽協会病院という総合病院で、がん治療を専門として、働いています。
本日は、抗がん剤の脱毛について、お話していきます。
広くは、普及していませんが、予防法はあります。もし予防法を実際に実行できるならば、ぜひ取り入れて欲しいです。
また、髪の毛が抜けはじめる期間には、注意をしないといけません。
だいたい、抗がん剤をはじめて1週目くらいで抜け始めます。
仮に脱毛してしまったとしても、適切な頭皮のケアを継続するとよいです。
脱毛の原因となる抗がん剤をやめた後に、よりよい形で、髪の毛が再び生え始めることにつながるからです。
頭皮ケアの方法や、カツラの選び方、脱毛の予防法を、お伝えしていきます。
目次
髪の毛の抜ける抗がん剤と、脱毛しない抗がん剤が、あります。
女性の方が、抗がん剤と聞いて、はじめに不安になられる方は、髪の毛が抜けてしまうのでは、という不安です。
安心してほしいことは、すべての抗がん剤で、髪の毛が抜けるわけではないということです。
抗がん剤によっては、ほとんど脱毛しないこともあります。
髪の毛の抜ける理由
抗がん剤は、分裂が活発な細胞を攻撃します。髪の毛を作る毛母細胞は、細胞分裂が非常に活発なため、抗がん剤の影響を受けます。その結果、脱毛が起るのです。
髪の毛だけでなく、まゆ毛、陰毛、鼻毛、まつげも、影響を受ける事になります。
脱毛しやすい抗がん剤が、乳がんでは用いられる
乳がん治療で非常によく用いられるアンスラサイクリン系やタキサン系の抗がん剤は、脱毛する確率が非常に高いです。
頭髪の8割以上が脱毛した患者さんが、94%いたという報告もあります。
脱毛しやすい抗がん剤が、卵巣がんや子宮がんでは用いられる
婦人科がんの抗がん剤治療で非常によく用いられる、パクリタキセルやドセタキセルも、脱毛する確率が非常に高い抗がん剤です。
脱毛しにくい抗がん剤
一方で、TS-1や、ジェムザールといった抗がん剤は、脱毛になる頻度は、非常に低いです。
髪の毛の抜け方
抗がん剤を投与してから、早い方で、およそ1週目から髪の毛が抜け始めます。
2から3週目で、抜け始める方もいらっしゃいます。脱毛の程度は、個人差はありますが、一般的には、抜け始めたら一気に抜け、歩いていても、髪の毛が自然と抜けてしまいます。
抗がん剤の脱毛からの回復
治療が終了して、早い人では1ヶ月目から、髪の毛は生え始めます
始めは、うぶ毛のような髪の毛です。そして、8ヵ月から1年で、ほぼ回復します。
抗がん剤の脱毛の予防法
抗がん剤による脱毛に頭皮冷却法は効果があるのか?
予防法の1つに、頭皮冷却法があります。
ガイドラインにおいては、以下のような内容の記載があります。
日本人を対象とした臨床試験はないが、脱毛の程度を軽減するために、頭皮冷却を推奨する。ただし、我が国では、保険適用外である上に、実施可能施設は限られる。
ちなみに、頭皮冷却とは、以下のような内容です。
クーリング用のキャップを装着して、頭皮を冷やす事により、頭皮への血流を減らして、抗がん剤の毛根への影響を減らす。冷却には、保冷剤や冷却水を循環させる。
アメリカでは、2015年12月より、乳がんの抗がん剤治療の女性の脱毛症を予防するために、頭皮冷却装置として、DigniCapが、承認されています。
脱毛の予防だけでなく、発毛の促進にも、役にたつと、されています。
ちなみに、この治療法により、一部の方は、完全に脱毛を予防できることが、あります。
1つデータを提示します。
90%以上の患者さんは、脱毛になってしまう抗がん剤による治療を、頭皮冷却を併用して行ったら、どの程度の脱毛になるかというデータがあります。
- 20%の患者さんは、髪の毛が全く抜けない
- 50%の患者さんは、25%の量の脱毛
- 14.7%の患者さんは、50%の量の脱毛
- 14.7%の患者さんは、50%以上の脱毛
データでみると、頭皮冷却の効果が客観的に分かるかと思います。
この方法が、もっと日本に広がるとよいです。
脱毛の予防にリアップは、効果があるのか?
リアップは、ミノキシジルという薬剤です。それを用いることにより、脱毛が予防できるか、試されたことがあります。
結論としては、脱毛の抑制効果はありませんでした。
しかし、発毛の促進には、有効であるというデータはでています。
例えば、乳がんの治療後に、2%ミノキシジルを頭皮に塗ってもらうと、塗らない人に比べて、発毛までの期間が約50日短縮できたというものです。
ただし、ミノキシジルは、脱毛症への保険適応はないので、自費で購入していただくことに、なります。
眉毛の脱毛に対して、ビマトプロストは有効か?
ビマトプロスト(商品名はグラッシュビスタ)は、緑内障に治療に用いられる点眼薬です。しかし、眉毛の脱毛への予防効果は、ありません。
一方で、眉毛の発毛の促進には、役に立つというデータはあります。
具体的には、抗がん剤治療が終了した4週以内に、片目ごとに1日1回、1滴を専用のブラシに滴下し、眉毛の生えていたあたりに塗ります。
4ヶ月で、ある程度の改善を示した人は、「何も塗らない」と27%であったのが、「ビマトプロストを塗る」と、88%改善していたというデータです。
グラッシュビスタは、眉毛の発毛の促進に対して、効果が示された医薬品ですが、保険診療では用いることができません。自費で、購入していただくことになります。
抗がん剤による脱毛を、漢方で予防できるのか?
私は、その点について、いろいろ調査しました。結論として、現段階では、脱毛を予防できる漢方は、見つかりませんでした。
例えば、タカサブロウという植物があり、それは育毛を促します。しかし、それを予防に用いても、効果はありません。
漢方の世界でも、抗がん剤による脱毛の予防は、なかなか難しいです。
ただし、抗がん剤による味覚障害などには、漢方は、非常に有用です。
脱毛に対して、準備しておくこと
治療中も、普段と変わらない生活や仕事を続けるために、ウィッグを準備しておくと安心です。
あるインタビュー調査では、脱毛をカモフラージュするだけでなく、病的な印象をぬぐい、より気持ちを強く保つことに役に立つと、述べられています。
また以下のような報告もあります。
- 50%に方は、1つのウィッグを購入
- 25%の方は、2つのウィッグを購入
さらに購入単価としては、以下のような報告があります。
- 40%が5万円以下
- 25%が5から10万円
ウィッグに助成金、補助金がでたりする?
一部の国では、ウィッグの購入に国が助成金をだしています。
例えば、イギリスやスエーデンです。
2014年から、国内でも、助成金を出すところがでています。
山形県では、最大で1万円まで補助
岩手県北上市、秋田県能代市、神奈川県大和市では最大3万円まで
佐賀県伊万里市では1万5千円まで
支援してくれるところは、次第に増えている傾向にあります。
さて、ウィッグには,通信販売で購入できるものからウィッグメーカーや美容室で作るものまで、いろいろあります。価格も数万円から数十万円以上のものまで幅があります。
生活スタイルや好み、予算に合わせて、購入するとよいです。
ウィッグを作るタイミング
また、ウィッグには,すぐに使える既製品と,出来上がるまでに1カ月程度かかるオーダー品があります。また、メーカーによって、カットやサイズ調整、メンテナンス等のサービスが異なります。
なるべく、アフターケアのよいところが、よいでしょう。
治療中,髪が脱毛して再び生えてくるまでの間,頭のボリュームが変わり、サイズ調整が必要になることがあるからです。
そして、できるだけ、抗がん剤治療がはじまる前の体調が良いときに、探しておきましょう。特に、頭のサイズが大きくて既製品が合わない場合、オーダーメイドは出来上がるまでに1か月以上かかってしまいます。
ウィッグが、治療に間に合わない場合はどうする?
脱毛前にウィッグを準備できない場合があります。そのような場合は、脱毛前の自分のヘアスタイルを写真に記録しておいてください。ウィッグを作るときの参考になります。
顔写真を撮り、顔と同じサイズにプリントすると、眉毛が抜けたときの参考になります。
また、自毛デビューするまでに免許の更新がある場合は、脱毛前に証明写真を撮っておくと、良いです。
それ以外の注意点
以下のことが、あげられます。
- 髪の毛を短くカット
自毛が長いままだと、脱毛した時に、シャンプーやブラッシングで、からまりやすく、なります。 そこで、短く切るとよいです。
注意点として、バリカンなどで、短くしすぎると、抜け毛が皮膚にささり、チクチクしたり、抜けた毛を掃除しずらくなります。
- 脱毛が始まったら頭皮を保護する事
髪は、ファッションとしての役割だけでなく、紫外線から肌を守る役割もあります。
脱毛時は、ウィッグや帽子、バンダナなどで頭部を保護しましょう。
- (使い捨て)ヘアキャップ で、抜け毛が落ちるのを防止
- 服装では、白っぽい服は抜け毛が目立つので、 黒や濃い色の服がおすすめ
- 自然な髪の回復のために、シャンプーを正しく行い、頭皮を清潔に保つこと
抗がん剤治療をうけながら、おしゃれを意識した生活ができるかについて
女性の方にとって、美しさを保ちたいと思われているはずです。しかし、治療中に美しさを維持するために、どこまでのことが、できるのでしょうか?
一概には、言えないところですが、乳がんの治療を受けた方から、以下のようなコメントをいただいたことがあるので、ご紹介いたします。
最後まで抗がん剤治療を受けられるのか、この先どうなるのか、いろいろ不安で、「おしゃれしたい」というより、「とりあえず、周りから見ておかしくないように、変わってしまった外見を繕いたい」という気持ちの方も多いかもしれません。
気持ちで負けないように、「おしゃれはしたい!」という方もいました。
肌荒れがひどいと、化粧がのりません。くすみやシミや炎症を隠そうとすると、シワになります。
(中略)
抗がん剤治療が終わると、気持ちが楽になり、外見に目が向くようになります。
しかし、抗がん剤治療が終わっても、すぐには外見はもとどおりにはなりません。
温泉に行きたい!おいしいものを食べに行きたい!旅行に行きたい!ウィッグのアレンジ方法は?自髪のカラーは?変色した爪は?眉毛やまつげはどうしたらいい?乳がんの方は、温泉ってみんなどうしている?
いろいろ知りたいことがいっぱいになります。
治療によって、体調によって、気持ちによって、求めるものがちょっとずつ違いますが、医師、看護師、栄養士、美容師、メイクアップアーティスト、ネイリスト等々、いろんな方面で副作用のフォローができるといいですよね!
さて、病院にもよると思いますが、命にかかわらない副作用のケアは、あまりしてもらえないことは、多いです。
脱毛も、そのような副作用に該当します。脱毛以外では、味覚障害も、あげられます。
一方で、病院でケアしてくれない副作用を和らげるために、あなたができることも、たくさんあります。
病院では教えてくれないような副作用を、もっと取り除く方法が、あるのです。
さらに、病院で受ける治療がより良い結果になる手助けをする代替療法もあります。そのようなことを、取り入れていく良いです。
苦痛を最小限にして、最大限の効果を引き出す治療に、なります。
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