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胃がんステージ2の完治を目指す治療を医師が解説!生存率をもっとあげる工夫とは?

こんにちは。加藤隆佑です。小樽協会病院という総合病院で、がん治療を専門として、働いています。

さて、今日の本題です。

ステージ2の胃がんの5年生存率は、約65%とされています。そして、3〜4割の方が再発するといわれています。

そうであったとしても、胃がんの手術後の再発率を、より下げることは、できます。

再発率を0に近づけることを目指しましょう。

その結果、生存率をあげて、完治を目指すことが、できます。

私の16年間の胃がん治療の経験と、医学的なデータをもとに、胃がんを克服するコツを説明いたします。

 

 

胃がんステージ2の再発率を下げて生存率を上げる事はできる。その方法とは?

以前に比べると、胃がんは、より高い確率で、治すことのできる病気になっています。

しかし、他の病気と大きく異なる点は、再発というリスクが常につきまといます。

胃がんの5年生存率は2010年のデータでは、約65%です。

そして、4割弱の方は再発します。

そのような治療成績では、十分ではありません。できれば、再発率を0にしたいです。しかし、現実的には再発を、0にはできないでしょう。

そうであっても、再発率をさらに、下げることはできるのです。そして、完治を目指しましょう。

そのための方法を、順を追って説明していきます。

胃がんステージ2の標準的な治療の問題点と、注意点

標準的な治療とは何?

治療方針は、手術で、胃がんを取り除くことになります。

そして、ステージ2の診断になれば、手術の後、1年間、抗がん剤治療を受けることになります。

ちなみに、胃がんのステージ2は、以下の表に従って、さらにステージ2a, ステージ2bに分類されます。

手術後に、抗がん剤治療を受ける理由は、がんを手術で全部切除できたように見えた時点でも、すでにがん細胞が別の臓器に転移している可能性があるからです。

そして、再発率を下げることが、できるからです。

術後の抗がん剤治療は、負担のない範囲で抗がん剤治療を受けることは大切です。

注意点として、「抗がん剤の効果は、再発率だけからみるわけではない」ということが、あげられます。

抗がん剤を受けないときに比べて、再発するまでの期間を先延ばしできたならば、抗がん剤を受けた利益を享受していることになります。


さて、用いられる抗がん剤は、TS-1(ティーエスワン)という飲み薬であることが大半です。

1年間飲みます。

さて、TS-1は、それほど強い副作用はでないことが多いです。

しかし、長期間飲んでいると、口内炎がでたり、次第に、食欲がなくなってくることがあります。一部の方は、下痢に非常に悩まされることもあります。

主治医から、そのような副作用は我慢するしかないと言われるかもしれませんが、そうではないです。

もっと、副作用は、とることができることを、知っておいて欲しいです。

また、「TS−1を、半年間しか飲まないよりも、1年間飲み続けたほうが、再発率が低い」というデータもあります。もし、TS−1の治療効果を最大限に引き出すならば、「1年間、体力を落とさず、飲み続けていくこと」が、大切です。

また、抗がん剤以外にも、再発率を減らす方法は、あります。

 

抗がん剤治療(化学療法)の問題点

ガイドラインでは、ステージ2と診断されれば、抗がん剤治療を受けることが推奨されています。

一方で、抗がん剤治療を受けなくても、再発しない方もいるという事実があります。

そのような方からしたら、「抗がん剤治療を、受ける必要はない」ことになります。

理想としては、「抗がん剤を受けなければ、再発してしまうが、抗がん剤を受けることによって、再発を免れる人」を、治療前に選別できれば、良いでしょう。

しかし、そのようなことは、今の科学技術では、不可能です。

もちろん、いろんな方法で、「将来再発する可能性が非常に高い人」を絞り込む研究がなされています。

しかし、まだ、十分に信頼出来る方法は、確率されていません。

ステージ2の胃がんの抗がん剤治療は絶対に受けるべき?

将来的に、再発するかどうか分からないことが前提で、治療を受ける以上は、負担のない範囲で抗がん剤治療を受けるというのが、妥当になってくるのでしょう。

一方で、以下のような事実があることを、忘れるべきではありません。

  • 抗がん剤治療を受けても、再発率という視点からは10%程度下がる程度。
  • 抗がん剤治療を受けなくても、再発しない人は、それなりにいる。

以上を踏まえると、手術後の抗がん剤治療を受けるかどうかは、以下のことも含めて、検討しても良いでしょう。

  • 治療に対する価値観
  • 体力
  • 認知能力(薬の自己管理や副作用のセルフケアができるか?)
  • 経済的な問題

特に、抗がん剤治療を堪えられる体力がない方が治療を受けてしまうと、逆に寿命を短くしてしまう恐れがあります。

そのような方は、無理をして、抗がん剤治療を受けるべきではありません

また、実際に治療を受けてみて、副作用で辛ければ、いつでも抗がん剤治療を、やめることは、できます。「辛くなったら、抗がん剤をやめよう」と気持ちで受けた方が、気持ちも少し楽かもしれません。

また、再発を抑えるのは、抗がん剤だけではないことを、忘れるべきではありません。

東洋医学(漢方)に効果はあるのか?

漢方を飲むメリットは、以下のようなものになります。

  • 手術後の体調を良くする。
  • 抗がん剤の副作用を減らす。
  • がんの再発を抑える。

西洋医学で用いられる薬に比べれば、漢方のデータの数は少ないです。

しかし、上記のことを支持するデータは、複数あります。

また、私をはじめ、漢方の専門医は、漢方が効果があることを、多数のがんの方への治療の経験から、分かっています。

漢方は、取り入れる価値の非常に高い治療です。

最近は、保険診療で漢方を処方できるようになっています。そして、漢方に、理解を示してくれる医師は、増えています。

ちなみに、より専門性の高い漢方を処方する医師は、煮出して(煎じて)飲む漢方を用います。そちらの方が、効果は強いです。

漢方に関しては、こちらで、説明しています。

食事を工夫すると、再発率を抑えられるか?

877症例の胃がんの手術後の生存率と食生活の関連を検討した愛知がんセンターからの報告。

豆腐を週に3回以上食べていると、再発などによるがん死の危険率が0.65に減り、生野菜を週3回以上摂取している場合の危険率は0.74になる。

胃がんの再発率と、食事内容に関係があるというデータです。

がんを抑えることと、食事内容には、強い関係があることを、知っておいてほしいです。

胃がんの手術後の食事について

胃がんの手術後は体力が落ちています。

退院の直後から以前と同じような生活を送ると体に負担を与えます。体力の温存を意識して生活することが大切です。

また腹部の手術後しばらくは、なるべく消化のよいものを食べましょう。以下のものを大量に食べると腸閉塞を起こすことがあるからです。

  • ごぼうといった繊維質の多いもの
  • 水分を吸って膨らむ昆布などの海藻類
  • 噛まないで飲み込みがちなそばや、中華麺

手術後しばらくはこれらの食品を控えめにするか、細かく刻みよく噛んで少しずつ食べましょう。

注意点ですが、これらのものを食べてはいけないと言っているわけではありません。

たとえば繊維が多いものは体に必要なものであり、むしろ積極的に体に取り入れて欲しいです。

そこで、取り入れる量や食べ方には注意を払っていきましょう。その際には、調理法を工夫するという手もあります。

また、胃を切除したために、摂取した食物が急速に小腸に流入するために、以下のような症状に悩まされる人がいます。

動悸、めまい、冷汗、顔面紅潮、全身倦怠感、低血糖

これをダンピング症候群と呼びます。

食事内容の工夫や、食べ方の工夫で、症状を楽にすることは、できます。

胃の切除後は、体重が落ちて、体力が落ちてしまう人が多いので、食事内容に気をつけて、体力をしっかりとつけましょう。

工夫をすれば、体力をつけられます。

胃がんの手術後の5年生存率


上記のデータは、2005年から2007年の間に、胃がんの診断や治療を受けた患者様に基づいたデータです。

つまり、10年前の治療に基づくものですので、現在の発達した治療であれば、よりよい治療成績になっています。

また、データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者様に当てはまるわけではありません。

胃がんの再発を抑えるための、抗がん剤治療の副作用は、もっと楽にできる。

抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を与えます。

特に髪の毛、口や消化管などの粘膜、あるいは血球をつくる骨髄は、影響を受けやすいです。その結果、脱毛、口内炎、下痢が起こったり、白血球の数が少なくなることがあります。

その他、全身のだるさ、吐き気、手足のはれ、しびれ、心臓への影響として動悸(どうき)、肝機能障害、腎機能障害が出ることもあります。

こうした副作用が、どの程度出るかに関しては、個人差があります。

副作用が著しい場合には、抗がん剤の量を減らしたり、抗がん剤治療の中断を検討することもあります。

副作用がひどいと、体力を消耗するからです。高齢の方ですと、そのことがきっかけで、寝たきりになることもあるのです。

寿命が短くなることもあります。

あなたが、辛いと思っている副作用を、主治医に、しっかり伝えましょう。あなたが、しっかりと主治医に伝えないと、副作用で苦しんでいることが、分かってもらえません。

そして、副作用対策をしてもらいましょう。

そうすれば、かなり楽に治療を受けることができますよ。

繰り返しますが、最近は副作用を、かなり取り除けるようになってるのです。

抗がん剤の副作用を取り除くために、◯◯を伝えないといけない。

例えば、以前は、吐き気で悩まれる方が、非常に多かったです。しかし、最近は、そのようなことは、減りました。非常によく効く吐き気止めが、使えるようになったからです。

以前とは、比べものにならないくらいに、吐き気に悩まされずに、治療を受けられるようになってきています。

そのような事実があるにもかかわらず、吐き気に悩まされながら治療を受けられている方がいらっしゃるのも、事実です。

その原因として、以下の理由があげられます。

  • 副作用で苦しんでいることを、主治医が把握できていない。
  • 主治医が副作用対策を熟知していない。

本来であれば悩まなくてもよい症状に、悩まされることは、多いです。

普段から、医師とのコミュニケーションを、しっかりとることが、必要です。どうしても、副作用がとれない場合は、セカンドオピニオンで、他の医師の意見を聞きましょう。

私の外来にも、そのようなお悩みで、受診される方は、いらっしゃいます。

副作用の原因で、もう一つ忘れてはいけない理由は、過剰な量の抗がん剤が投与されていることがありることです。

もう少し具体的にお伝えします。

抗がん剤は、体重と身長から、投与量を計算しますので、体重が減ったならば、抗がん剤の量を、減量しないといけません。

しかし、なんらかの理由で体重が減ったにも関わらず、従来の体重の量で計算された抗がん剤の量が、投与されていることがあるのです。

それは、過剰な量の抗がん剤になり、強い副作用がでることになります。

体重の1kg程度の増減は、気にしなくてもよいですが、それ以上の体重の増減のときは、主治医に伝えるべきです。

抗がん剤による口内炎は、もっと楽にできます。

エレンタールという栄養ドリンクがあります。これを飲むと、抗がん剤によってできる口内炎を減らすことができるというデータがあります。

データの数は少ないのですが、その効果を実感して、診療に利用している病院も複数あります。

私もエレンタールの効果に驚き、よく用います。

広く普及していない治療で、あなたの主治医が知らない治療法であったとしても、効果的な治療法は、あるということは、覚えて欲しいです。

そして、あなたが、もし口内炎で悩まされていたら、主治医に処方してもらえないか、頼んでみてください。

ちなみに、私の本にも、エレンタールの効果のことを、書いています。

胃がんの抗がん治療でよく用いられるTS-1を長期間飲んでいると、口内炎は非常に高い確率で発生するので、口内炎に悩まされる人にとっては、エレンタールは非常に有効です。

口内炎以外にも、いろんな副作用が起きる可能性はありますが、諦めないでいろいろ調べてみると、あなたの副作用を解決できる方法が、あるものです。

抗がん剤による吐き気は、もっと楽にできます。

抗がん剤の副作用である吐き気を、もっと取り除くことは、できます。

最近になって、非常に効果のある吐き気止めがでたからです。

しかし、その薬を主治医が適切に用いることができないために、吐き気を取ることができていないケースを、たまに見かけます。

そのような可能性があるときには、セカンドオピニオンなどで、他の医師の意見を仰ぐのも、よいでしょう。

また、あなたが、吐き気で辛い事を、伝えたつもりでも、伝わっていないことは、多いです。

そのような場合は、主治医に伝えたいことを、短い手紙に書いて、外来の診察の前に渡すとよいでしょう。

確実に、あなたの伝えたい事が伝わります。

あらゆる手段を使って、吐き気を楽にしましょう。体力の低下につながるので、必ず解決しないといけない副作用の1つです。そして、多くの場合が、解決できる副作用でもあります。

 胃がんの手術後に、定期的に受けた方が良い検査

検査

医師によって、若干異なりますが、多くは、以下のようなやり方で、検査をして、再発がないかをチェックします。

腫瘍マーカー(採血):3ヶ月に1回

CT:半年に1回

胃カメラ(胃が残っている場合):1から2年に1回

腫瘍マーカーが上がったらどうするか?

定期検査の検査結果で、腫瘍マーカーが少し上昇することがあります。腫瘍マーカが少し上がった程度では、不安に思う必要はありません。

しかし、右肩上がりに上昇する場合は、注意が必要です。

たとえ、正常域内であったとしても、右肩上がりに数値が上昇するときは、再発の兆候であることが多いです。

治療に、なんらかの工夫を付け加えないといけないサインです。

胃がんの手術後の抗がん剤治療の治療費を、安くすることはできる。

胃がんの治療は、かなりの費用が、かかります。大半の方は、高額療養費制度を利用することになります。

つまり、一定の金額を超えたら、それ以上を支払わなくても良いという制度です。

一方で、以下のようなケースもあります。

  1. 抗がん剤治療を外来で行った方が、医療費が安くなり、自己負担額も安くなるケース
  2. 月をまたがない形で治療をうけると、自己負担が安くなるケース
  3. 薬を多量に飲んでいるケースでは、本当に飲むべき薬のみに、絞って飲んで、薬剤費を減らせるケース

3つ目のケースは、よく見かけます。

本来であれば飲まなくてもよいお薬を、漫然と飲んでいるケースは非常に多いです。

ちょっとした工夫や、国の制度をうまく利用すると、あなたの経済的な負担を減らすことは、できます。

病院のソーシャルワーカーに相談するのも良いです。

再発の兆候で、知っておくべきこと

再発の症状として、知ってほしいこと

再発に特徴的な症状はありません。無症状で、再発することも、多いです。だからこそ、定期的に検査を受けることが必要です。

再発の起きやすい時期と場所

胃がんの再発は、いつ起こるかは、わかりません。しかし、手術をしたのちの5年以内に再発することが大半です。

5年以内に再発する方が、95%です。そのように考えれば、手術をして5年経過をしたら、再発の不安からは、かなり解放されることでしょう。

5年間は、気を抜かず、日常生活に気をつけつつ、定期的に検査を受けることが大切です。

ちなみに、再発する場所として多いのは、肝臓、腹膜、そしてリンパ節です。最初にみつかったがんの近くに再発することもあります。

万が一、再発が見つかっても、適切な対処を行えば、完治にもっていくことも、あります。

そして、ステージ2の胃がんに負けない体を作っていきましょう。

そのために、知っておくことがあります。

胃がんに負けない方法は、こちらで学べます。

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医

札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」と、「大腸がんと告知されたときに読む本」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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