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肺がんの再発でも楽に余命を伸ばす!末期からでも回復する治療を医師が解説

こんにちは。加藤隆佑です。がん治療専門医として、小樽協会病院という総合病院で勤務しています。

さて、今日は、肺がんの中でも、「腺がん、もしくは扁平上皮がん」に、焦点を絞って、お話していきます。

再発の肺がんと診断され、長くは生きられないと、途方にくれているかもしれません。しかし、必ずしも、そうではありません。

油断ができない状況であることは事実ですが、劇的に良くなる方は、いらっしゃいます。

たとえ、抗がん剤治療ができないような、末期の状態であっても、よりよい状態にもっていくことは、できます。余命宣告をされていたとしても、余命をさらに伸ばすことは、できるのです。

また、あなたが、副作用で苦しんでいるならば、もっと楽に治療を受けることも、できるようになります。

希望を持ちつつ、治療を受けていきましょう。

そして、再発した肺がんを克服する確率を、跳ね上げていきましょう。

そこで、私の17年間のがん治療の経験を踏まえて、肺がんをさらに小さくするために、すべきことを、書いていきます。

目次

肺がんが再発する理由とは?

肺がんが再発する理由は2つです。

1つ目は、手術の刺激で、がん細胞が、散らばったという理由です。

もう1つの理由は、手術の際に行われた検査では、小さすぎて分からなかった癌細胞が、時間とともに大きくなり、検査で分かるようになったという理由です。

再発した肺がんに対して、手術による治療は意味がないのか?

肺がんの再発では、肝臓、肺、腹膜、複数のリンパ節に、がん細胞がある状態のことです。がん細胞が、体に広く散らばっていると予想されます。

手術では、すべてのがんを、取り除けませんので、手術による治療は、なされないことになります。

一方で、抗がん剤であれば、血流にのって、体中にひろがったがん細胞に、がんを倒す薬の成分を、行き渡らせることができます。

うまく抗がん剤が効いてくれると、がんを抑えることに、非常に役立ちます。

抗がん剤が、再発した肺がんの治療における主役になるのです。

その治療により、体に広く散らばっているがんが、制御できたと予想される場合は、根治を目指した手術が、なされることも、あります。

 

さて、先ほど、肺がんが再発していると、がん細胞が、体に広く散らばっていると予想されるとお話しました。

しかし、すべての方が、再発しているからといって、がん細胞が、体に広く散らばっているわけではありません。

再発した部位だけに、がん細胞がとどまっていることも、あるのです。

特に、以下のようなケースにおいては、再発した部位だけに、がんがとどまっている可能性が、あります。

  • 再発した病巣の数が1から3個くらいのケース

このような状況に置かれているならば、根治を目指した手術や放射線治療を、検討することがあります。

再発した肺がんに、抗がん剤治療は、どのくらいの効果がある?

再発した肺がんには、抗がん剤が用いられます。そして、効き目が強い抗がん剤と、そうでない抗がん剤があります。

さらに、最近は、従来からある抗がん剤に加えて、分子標的薬や、免疫チェックポイント阻害薬も、用いられます。

A, 遺伝子検査の結果、分子標的薬を用いることができると判明した場合

はじめは、分子標的薬による治療になります。

具体的には、以下のような治療になります。

EGFRという遺伝子の変異が認められる肺がん

タグリッソ(オシメルチニブ)を用いた治療が、もっとも強く推奨されます。

タグリッソと兄弟的な位置付けにある薬は、以下の4剤です。

  • イレッサ(ゲフィニチブ)
  • タルセバ(エルロチニブ)
  • ジオトリフ(アファチニブ)
  • ダコミチニブ

これらは、チロシンキナーゼ阻害薬と呼ばれます。

ラムシルマブという薬を併用することもあります。

注意点ですが、体力がない方に関しては、タグリッソでなくイレッサを用いることが推奨されます。副作用が比較的少ないからです。

1日ベット上で生活している方でも、安全に受けられる可能性が高いです。しかし、タグリッソに比べると、効果は劣ります。

また、これらの薬剤の副作用でよく認められるものは、下痢、爪囲炎、皮疹です。

頻度の高いことではないのですが、1つ例外があります。EGFR遺伝子の変異が、「エクソン20の挿入変異」という形態をとる場合です。

この場合は、チロシンキナーゼ阻害薬による治療は推奨されません。通常の抗がん剤や免疫チェックポイント阻害薬による治療となります。

効果が非常に期待できるタグリッソの副作用は?

チロシンキナーゼ阻害薬によく認められる、下痢や皮膚障害の副作用に悩まされるケースは、比較的少ないです。

しかし、頻度は低いことではありますが、心臓への副作用がでることがあるので、定期的に心電図をとる必要があります。

この薬剤による治療効果がない場合は、のちほど説明いたしますBの治療法を受けることになります。

つまり、従来からある抗がん剤、もしくは免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療になります。

ALK遺伝子の変異が認められる肺がん

アレセンサ(アレクチニブ)による治療が、強く推奨されます。

体力がない方であっても、安全に受けられる可能性の高い薬です。

アレセンサ(アレクチニブ)と兄弟的な位置付けにある薬は、以下のようなものがあります。

  • ザーコリ(クリゾチニブ)
  • ジカディア(セリチニブ)
  • ローブレナ(ロルラチニブ)

この薬剤による治療効果がない場合は、のちほど説明いたしますBの治療法を受けることになります。

MET遺伝子エクソン14に異常を認める肺がん

テポチニブ(商品名:テプミトコ)による治療が推奨されます。

B, 遺伝子検査の結果、分子標的薬を用いることができないと判明した肺がんの治療

従来からある抗がん剤、もしくは免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療になります。

効果がかなり期待できるお薬で、よく用いられるものは、以下の方法です。

よく用いられる治療法①

キイトルーダ+アリムタ(ペメトレキセド)+「カルボプラチンもしくはシスプラチン」

3剤を併用する治療法です。

肺がんの種類が、「扁平上皮がんではない場合」に、よく用いられます。

「カルボプラチンもしくはシスプラチン」は体に非常に負担を与えます。したがって、4から6クールこの治療法を受けた後は、アリムタ(ペメトレキセド)だけの治療に移行します。

そうすることにより、体に与える負担を最低限にして肺がんを抑えることができます。

シスプラチン、カルボプラチンという白金系は強い副作用がでやすい傾向がありますので、副作用に耐えられる体力を維持することが、非常に重要になります。

つまり、副作用に耐えられる体力がない方は、この抗がん剤を受けるべきではありません。逆に、寿命を短くすることに、なりかねないからです。

また、肺がんの顔つきを調べてみると、「PD-L1」というものを、たくさん認める場合があります。

その時は、3剤併用する治療法のかわりに、キイトルーダだけによる治療法も選択肢の1つにあがります。

PD-L1が50%以上あれば、キートルーダによる効果を、かなり期待できます。

体への負担はかなり少ない治療法となります。

ちなみに、キートルーダは免疫チェックポイント阻害薬に分類される薬です。免疫療法の1種になります。

補足ですが、「キイトルーダ/アリムタ/カルボプラチンもしくはシスプラチン」のかわりに、以下の治療法が選択されることもあります。

カルボプラチン+パクリタキセル+アバスチン+テンセントリク(アテゾリズマブ)

アバスチン(ベバシズマブ)とは、肺がんを栄養する血管が、作られないようにする分子標的薬のことです。

テンセントリク(アテゾリズマブ)は、キートルーダと同様に免疫チェックポイント阻害薬です。

よく用いられる治療法②

キイトルーダ+「パクリタキセルもしくはアブラキサン」+カルボプラチン

肺がんの顔つきが「扁平上皮がん」のときに、用いられる治療法になります。

「カルボプラチン」は体に非常に負担を与えます。したがって、4から6クールこの治療法を受けた後は、まったく別の種類の抗がん剤に切り替えられることが多いです。

また、肺がんの顔つきを調べてみて、「PD-L1」というものを、たくさん認める場合があります。

その時は、3剤併用する治療法のかわりに、キイトルーダだけによる治療法も選択肢の1つにあがります。

補足ですが、「キイトルーダ/カルボプラチン/パクリタキセルもしくはアブラキサン」のかわりに、以下の治療法が選択されることもあります。

  • カルボプラチン+パクリタキセル+テセントリク(アテゾリズマブ)
  • ゲムシタビン+シスプラチン+ポートラーザ

テンセントリク(アテゾリズマブ)は、キートルーダと同様に免疫チェックポイント阻害薬です。

よく用いられる治療法③

2種類の免疫チェックポイント阻害薬を併用した治療、つまり「オプジーボ+ヤーボイ」による治療も認可されました。

 Bの治療法の効果を期待できなくなった場合の治療法は?

以下のうちの、どれかになることが多いです。

  • TS-1
  • オプジーボもしくはテセントリク
  • ドセタキセル+サイラムザ(もしくはアブラキサン )

そして、これらのうちの、どれかしか治療の選択肢が残っていないならば、治療の手詰まり感は、否めません。

そして、治療の選択肢が、完全になくなったときには、こちらの治療法を検討することになります。

ちなみに、オプジーボは扁平上皮がんには無条件に用いることができますが、腺がんには、PD-L1というたんぱく質を認めないと用いられません。

逆に、テセントリクは腺がんには無条件に用いることができますが、扁平上皮がんには、PD-L1を認めなかった場合は用いられません。

免疫チェックポイント阻害薬の効果は、どの程度か?

キートルーダは免疫チェックポイント阻害薬という薬に該当します。

免疫系の細胞に働きかける薬剤です。

それ以外にも、以下の薬も、免疫チェックポイント阻害薬になります。

  • オプジーボ
  • テセントリク(アテゾリズマブ)

一部の方には、免疫チェックポイント阻害薬が、副作用も少なく、非常に長期間効いて、劇的にがんが縮小することもあります。

1つ事例を提示します。

65歳の男性

抗がん剤治療をしていたが、それらの効果がなくなり、2013年より免疫チェックポイント阻害薬を投与。

2018年現在も、縮小の状態を維持。

 

免疫チェックポイント阻害薬は、一部の方には非常に効果があるのです。

抗がん剤の治療効果を、どのように判定する?

2ヶ月間ほど、治療を行った上で、抗がん剤の治療効果を確認します。

CTや、腫瘍マーカーの数値で、がんの増殖が抑えられていれば、抗がん剤の効果はあると判定されます。

がんの勢いが強く、切羽詰まった状態の時もあります。その場合は、2ヶ月よりもっと短い期間で、抗がん剤の効果判定をします。

適切なタイミングで、抗がん剤の効果の判定をすることが大切なのです。

適切なタイミングで、やってもらえるかは、医師の腕による部分も、多いところです。

「もっと早い段階で抗がん剤の効果判定を行い、別の抗がん剤を変更しておけば、もっと長く元気に過ごすことができたかもしれない。」ということも、あるということです。

また、一部の人は、劇的に効いて、手術ができるくらいになることもあります。

だからこそ、治らないと決めつけないで、治療を受けるというスタンスは必要です。

腫瘍マーカーが増加してきたら、どうしたらよい?

抗がん剤治療を受けている最中の定期検査の結果で、腫瘍マーカーが少し上昇することがあります。腫瘍マーカが少し上がった程度では、不安に思う必要はありません。

しかし、右肩上がりに上昇する場合は、注意が必要です。

たとえ、正常域内であったとしても、右肩上がりに数値が上昇するときは、がんが増殖してきている兆候です。

治療に、なんらかの工夫を付け加えないといけないサインと言えます。

肺がんの5年生存率を、もっと高くできる。

肺がんの治療では、標準的な治療法以外の治療も、常に念頭に入れてることも、大切です。

そのことが、より長期間に渡って、がんを抑えることに、つながります。

さて、上記のデータは、2006年から2008年の間に、肺がんの診断や治療を受けた患者様に基づいたデータです。

つまり、10年前の治療に基づくものですので、現在の発達した治療であれば、よりよい治療成績になっています。

以前に比べれば、肺がんの治療効果は、高くなっているのです。

ちなみに、再発の場合の5年生存率は、ステージ4の肺がんと、ほぼ同じとなります。

再発した肺がんは余命を数える段階?

再発した肺がんであっても、数年にわたって、元気にされている人はいます。中には、完治に持ってこれるケースもあります。

一方で、全身に転移して食事もほとんど食べられない状態の再発の肺がんですと、数週間しか生きられない人もいます。

結果として、再発した肺がんの生存期間の中央値は、以下の通りとなります。

  • EGFR遺伝子の変異なし 13.9ヶ月
  • EGFR遺伝子の変異あり 30ヶ月

そして、工夫をすることにより、さらに、生存期間を伸ばせることは、様々な医学データから判明しています。

さて、再発した肺がんでも、画像上、がんが、指摘できない状態に持っていく事ができるケースもあります。1つ事例をあげます。

再発した肺がんでも治ることがあることを示すために、肺がんよりも、難治性のがんであるステージ4の膵臓がんを例にだして、お話しします。

肝臓に転移があり、ステージ4の診断。

抗がん剤治療で、肝臓の転移は消失。

しかし、膵癌のがんの部分は、大血管を巻き込んでいて、手術では、とれない状態。しかし、これ以上の抗がん剤治療の継続は困難であり、手術を試みることになる。

手術で、お腹の中を見てみると、血管を巻き込んでいる部分は、がんではなく、治療により繊維化した部分であることが、判明。

最終的に、手術で、がんを取り除くことができる。

 

さて、このような、良い治療結果にしていくためには、病院の治療だけを受けていれば良いわけではありません。

いろんな工夫を、取り入れていく必要があります。

そのために、あなたがすべきことは、こちらで公開しています。

抗がん剤の効果を、増強させることは、できる。

抗がん剤治療や放射線治療の効果を、よりよいものに、することは、できます。

例えば、ハイパーサーミア(温熱療法)を併用することも、よいでしょう。

よりよい治療結果につながるというデータは、複数あります。

保険診療で、ハイパーサーミアを受けることができるケースが多いです。

以下のような機械で、病巣を加熱します。

また、東洋医学を併用すると、よりよい治療結果につながるというデータも、複数あります。

たとえば、漢方薬の内服は、東洋医学における代表的な治療法です。

エキス顆粒の漢方や、タブレット状の漢方であれば、水と一緒に飲むだけです。

煎じる漢方の場合は、以下のような漢方を、ヤカンなどで煮出して、煮出した液体だけを飲みます。

購入に関してですが、保険診療の中で処方してもらえる、漢方もあれば、保険の効かない漢方もあります。

保険の効かないような、特殊な漢方は、漢方薬局で購入することになります。

一方で、漢方やハイパーサミアは、十分に普及していないのも、事実です。主治医は、これらの治療のことを知らないがために、「そんな治療は、役に立たない」と言われる方も、います。

私も、以前は、そのように感じていました。

しかし、効果を肌身で感じてからは、「ハイパーサーミア」や「漢方」は、非常に有効な治療の1つと確信しました。

たとえば、以下のような事例があります。

再発した子宮頸がんに対して、抗がん剤と放射線治療を行うものの、がんは、増大してしまう。

そこで、2種類の漢方を追加する。

その結果、腫瘍マーカーは下がり、がんも、縮小する。

 

子宮がんの事例を提示していますが、肺がんでも同じことが言えます。

幸いなことに、最近は、漢方に理解を示してくれる医師が、増えてきています。

大切なところなので、もう一度、書きます。

病院の治療は、データも豊富であり、重要な治療法であることは、事実です。その治療法を軸にしつつ、「ハイパーサーミア」や「漢方」といった枝葉をつけると、もっとよいです。

副作用を減らすことにも、つながります。

あなたの今の治療に、簡単に取り入れられる漢方に関しても、こちらで学ぶことができます。

私、加藤隆佑が、このような治療法を取り入れたきっかけとは?

私は、医師として、17年のキャリアがあります。

西洋医学のトレーニングを徹底的に受けました。

しかし、専門医をとり、ある程度のことができるようになった頃より、がんの治療に、大きな疑問を感じるようになりました。

治療の結果、副作用に悩まされる人が大勢いる。ベストの治療をしても、患者さんは、必ずしも幸せになってくれない。

さらに、患者さんだけでなく、家族もとても辛い思いをしている方が多い。

病院では治療だけで、心のケアをしてくれる人がいない。

 

このような思いに、悩まされるように、なったのです。そこで、いろんな治療法を勉強しました。

患者さんや、そのご家族の不安を取り除くための、カウンセリングのトレーニングを受けました。

また、いろんな治療法を学ぶ過程で、漢方、食事療法、そしてハイパーサーミアは効果があり、再現性のある治療法であることを、知ることができました。

このような経緯があり、現在は、西洋医学に、漢方、食事療法、そしてハイパーサーミアを組み込んだ治療を、提案しています。

たとえ、ステージ4のがんであったとしても、完治にもっていく確率をあげることができます。

私の情報発信は、一人でも多くの方に、このことを伝えるための、挑戦でもあります。

そして、がんになっても、毎日の生活に楽しみを持ちながら、生活を送って欲しいと思います。

免疫療法を受けるときの、注意点

免疫療法には、自由診療で行われている免疫療法と、保険診療で用いられる免疫チェックポイント阻害薬の2つに、分類されます。

ここでは、肺がんの治療でよく用いられる、キートルーダ、テセントリク、オプジーボといった免疫チェックポイント阻害薬を受ける際の注意点をお伝えします。

抗がん剤に比べると、副作用は少ないと言われています。一方で、頻度が低いながら、命に関わる副作用があります。

免疫チェックポイント阻害薬により、免疫力の過剰な増強が行われ、その結果、自分の正常な細胞を攻撃してしまうという副作用です。

それが、命に関わるのです。

早期発見が必須であり、以下のような症状のときは、主治医にすぐに連絡を取りましょう。

  • 間質性肺炎:息切れ、息苦しい、空咳
  • 重症筋無力症、心筋炎、筋炎:筋肉に力が入らない、筋肉痛、動悸、など
  • 1型糖尿病:吐き気や嘔吐、尿量の増加など
  • 副腎障害:吐き気や嘔吐、体がだるいなど

また、忘れた頃に、免疫チェックポイント阻害薬の副作用がでることがあります。

例えば、免疫チェックポイント阻害薬の治療を終えた200日後に、上記の症状がでることもあります。

免疫チェックポイント阻害薬の治療を受けた人は、副作用が忘れた頃にやってくる可能性があることも、心の片隅に置いて欲しいです。

抗がん剤の副作用を、もっと取り除くことが、できる。

抗がん剤の副作用で、寿命が短くなることがある。

抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を与えます。

特に髪の毛、口や消化管などの粘膜、あるいは血球をつくる骨髄は、影響を受けやすいです。その結果、脱毛、口内炎、下痢が起こったり、白血球の数が少なくなることがあります。

その他、全身のだるさ、吐き気、手足のはれ、しびれ、動悸(どうき)、肝機能障害、腎機能障害が出ることもあります。

こうした副作用が、どの程度出るかに関しては、個人差があります。

副作用が著しい場合には、抗がん剤の量を減らしたり、抗がん剤治療を中断します。

副作用がひどいと、体力を消耗するからです。高齢の方ですと、そのことがきっかけで、寝たきりになることもあります。

寿命が短くなることになります。

そのようなことを避けるために、あなたが、辛いと思っている副作用を、主治医に、しっかり伝えましょう。そして、副作用を取り除いてもらいましょう。

幸いなことに、最近は副作用を、かなり取り除けるようになっていますよ。

抗がん剤の副作用を取り除くために、◯◯を伝えないといけない。

例えば、以前は、吐き気で悩まれる方が、非常に多かったです。しかし、最近は、そのようなことは、減りました。非常によく効く吐き気止めが、使えるようになったからです。

以前とは、比べものにならないくらいに、吐き気に悩まされずに、治療を受けられるようになってきています。

そのような事実があるにもかかわらず、吐き気に悩まされながら治療を受けられている方がいるのも、事実です。

その原因として、以下の理由があげられます。

  • 副作用で苦しんでいることを、主治医が把握できていない。
  • 主治医が、副作用対策を、熟知していない。

その結果、本来であれば悩まなくてもよい副作用に、悩まされることが、あるのです。

普段から、医師とのコミュニケーションを、しっかりとることが、必要です。コミュニケーションをとっても、副作用がとれない場合は、セカンドオピニオンで、他の医師の意見を仰ぎましょう。

私の外来にも、そのような悩みで、受診される方は、います。

副作用の原因で、もう一つ忘れてはいけない理由は、過剰な量の抗がん剤が投与されていることがあることです。

もう少し具体的にお伝えします。

抗がん剤は、体重と身長から、投与量を計算しますので、体重が減ったならば、抗がん剤の量を、減量しないといけません。

しかし、体重が減ったにも関わらず、従来の体重で計算された量の抗がん剤が、投与されていることがあるのです。

それは、過剰な量の抗がん剤になり、強い副作用がでることになります。

体重の1キロ程度の減少は、気にしなくてもよいですが、それ以上の体重の減少のときは、主治医に伝えるべきです。

抗がん剤による口内炎は、もっと楽にできます。

エレンタールという栄養ドリンクがあります。これを飲むと、抗がん剤によってできる口内炎を減らすことができるというデータがあります。

データの数は少ないのですが、その効果を実感して、エレンタールを利用している病院も複数あります。

私もエレンタールの効果に驚き、よく用います。

ちなみに、私の著書にも、エレンタールの効果のことを、書いています。

諦めないでいろいろ調べてみると、あなたの悩みを解決できる方法があるものです。

ちなみに、私は、広くは普及していない治療方法であったとしても、しっかりリサーチします。

そして、再現性があって、効果があるものは、ブログなどで、書いています。

標準的な治療だけが、治療でないのです。

抗がん剤による吐き気は、もっと楽にできます。

抗がん剤の副作用である吐き気を、もっと取り除くことは、できます。

最近になって、非常に効果のある吐き気止めの薬が、でたからです。

しかし、主治医がその薬を適切に用いることができないために、吐き気を取ることができていないケースを、たまに見かけます。

そのような可能性があるときには、セカンドオピニオンなどで、他の医師の意見を仰ぐのも、解決策の1つになります。

また、あなたが、吐き気で辛い事を、伝えたつもりでも、主治医に伝わっていないことは、多いです。

そのような場合は、主治医に伝えたいことを、短い手紙に書いて、外来の診察の前に渡すとよいでしょう。

確実に、あなたの伝えたい事が伝わります。

あらゆる手段を使って、吐き気を楽にしましょう。体力が低下してしまうので、必ず解決しないといけない副作用の1つです。そして、多くの場合で、解決できます。

抗がん剤によるしびれは、もっと楽にできます。

肺がんで、よく用いられる抗がん剤であるアブラキサン、パクリタキセル、ドセタキセルには、特に注意しないといけない副作用があります。

それは、しびれです。専門用語では、末梢神経障害と呼ばれます。

後遺症としてしびれが残り、自分で歩く事が困難になったり、ボタンを自分でつけれなくなることが、あるからです。

しびれに関しては、適切な対処が必要です。

しびれがでたときには、主治医に報告して、適切な対処をしてもらいましょう。

しびれは、標準療法で用いられる方法では、十分に改善しないこともあります。そのような場合であっても、しびれを改善させる方法は、あります。

たとえば、漢方は非常に有効です。

また、しびれが、なるべく、出現しないようにする予防法もあります。

再発した部位に合わせた特殊な治療法と症状

肝臓に再発している場合の治療法と症状

肝臓に再発している場合は、抗がん剤治療で制御していくことになります。

もし、肝臓への再発の数が少数であり、肝臓以外にがんが存在せず、さらに、肝臓の再発の状態が長期間にわたって落ち着いているときは、以下の治療法が検討されることもあります。

  • 放射線治療
  • 手術

次に症状に関してですが、「再発したがんが、肝臓の大半を、占拠した段階」に至ってから、肝臓の再発による症状が、でることが多いです。

例えば、黄疸といった症状です。

ちなみに、採血で肝機能障害が出現した時に、「肝臓の再発が、悪化したのであろう」と心配される方が多いですが、そうではありません。

大半のケースは、抗がん剤などによる肝機能障害か、「再発したがんが、胆管という胆汁の流れ道を塞ぐこと」が、原因となっています。

リンパ節に再発したときの治療法と、症状

再発したがんにより、リンパ節が腫大している場合は、抗がん剤治療で制御していくことになります。

もし、リンパ節への再発が、一部分だけにとどまるときは、放射線治療を検討することもあります。

次に症状に関してですが、大きく腫れたリンパ節が、神経に触れれば、痛みがでます。

腫大したリンパ節が、臓器を圧排すれば、それに伴う症状が出ます。例えば、再発して腫大したリンパ節が、胆汁の流れ道を、押しつぶせば、黄疸が出現するといった感じです。

どの部位のリンパ節に再発して、さらにそのリンパ節がどの程度、腫れるかによって、症状は異なります。

胸膜播種、腹膜播種している場合の治療法

胸の中に、胸膜という膜があります。また、お腹の中には、腹膜という膜があります。そこに、種がまかれるように、バラバラと、がんが広がることを播種(はしゅ)と言います。

その場合は、抗がん剤で、治療をしていくことになります。

肺がんで胸水多量のときの治療法と症状

胸膜播種がひどい状況になると、胸水が出現します。そして、胸水の量が非常に多いと、呼吸困難に陥り、命にも関わる状態になります。

そのような状況での抗がん剤治療は、副作用のリスクが高くなるので、慎重に行わないといけません。そして、抗がん剤治療で、がんを制御できれば、胸水は減ります。

呼吸困難といった症状も、楽にしていくことが、できます。

さて、胸水が非常に多いときは、胸水を抜かないといけません。

注意点として、胸水だけを抜くと、体の栄養成分も、抜けてしまうということです。そのことを避けるために、抜いた胸水を「ろ過+濃縮」して、胸水の中の栄養成分だけを、体内に戻す腹水ろ過濃縮再静注法(CART)を行うことがあります。

また、胸膜癒着術という方法で、胸水がたまらないようにする治療を、行うこともあります。

骨に再発した場合の治療と症状

治療法には、薬物療法と、放射線治療になります。

薬物療法では、骨粗しょう症の治療薬としても使用するビスフォスフォネート製剤やデノスマブ(製品名はランマーク)が用いられます。転移した骨はもろくなり、骨折しやすくなるので、骨を強くする薬を使わないといけないのです。

また、放射線治療は、以下の場合に、用いられます。

  • 痛みが強く、痛みを緩和する必要がある場合
  • 骨折の危険性が高い場合
  • 体の麻痺の出現の可能性がある場合

同時に、抗がん剤治療が必要になります。

ちなみに、起こりうる症状は、骨の痛みや、骨折に伴う症状です。

脳に再発した場合の治療と症状

脳に再発したときの症状は,頭痛,嘔吐,麻痺,けいれんなどですが,再発する場所によっても症状が異なります。

また、小さな再発巣でも、けいれんなどの症状が出ることもあれば,相当大きくなるまで症状が出ない場合もあります。

また、治療法として、脳への再発には、放射線治療による効果が期待できます。

脳全体に放射線を照射する「全脳照射」と、再発がある部分にのみ放射線を照射する「定位放射線治療」があります。

「定位放射線治療」は、非常にたくさんの放射線を、ピンポイントで病変にあてます。その結果、がん細胞を完全に死滅させることもできます。

再発の個数が少ない場合は、「定位放射線治療」になります。転移の数が多い場合は、「全脳照射」になります。「全脳照射」に「定位放射線治療」が併用されることもあります。

同時に抗がん剤治療が必要になります。

脳転移があっても、「定位放射線治療」を行い、同時に、抗がん剤治療をうけて、完治になった人もいます。

1つ事例を提示します。

脳転移のある肺がんの診断→脳転移の2箇所に対して、放射線治療→肺がんの手術→再発する確率を下げるため、しばらくの間、抗がん剤治療→現在は、再発なく経過中

 

 再発した肺がんは治る?それとも、末期で余命を数える段階?そして末期症状とは?

「再発=末期がん」と、思われがちですが、再発した肺がんでも、完治される方は、います。

私が考える末期とは、自分の力で歩くことも食事をすることもできないほど、弱りきっている段階と考えます。そのような段階にならない限りは、受けるべき治療はあります。

また、肺がんの再発にも、いろんな状況が想定されます。

肝臓に再発した病巣が、1つだけある方
肺や肝臓に、無数の再発した病巣がある方
すべての抗がん剤治療を試み、治緩和ケアを提案される方

上記の通り、再発した肺がんといっても、いろんな段階があるのです。

そして、再発した肺がんであっても、完治にもってこれることも、あるのです。

さて、ここでは、効果の期待できる抗がん剤治療が提案することができない段階の対応について、詳しくお伝えします。

このような段階は、病気に伴う心と体の痛みを和らげる治療、つまり緩和医療が中心となります。

  • 痛みがあるときは、痛み止めの薬の量を調節する。
  • 精神的に落ち込んでいるときは、カウンセリングを受けたり、抗うつ薬の量を調節する。

このような治療を中心に行います。

もちろん、肺がんと診断された時期から、上記のことを、同時並行で行っています。「効果の期待できる抗がん剤治療が提案できない段階」は、これらを、より強化していくということです。

緩和医療を受けていただくことも、より長く生きていくことにつながることは、証明されています。

抗がん剤、手術、放射線治療だけが、治療ではありません。

抗がん剤、手術、放射線治療を受けなくても、体調を整えることを心がけるだけでも、より長く生きられます。

そのために、漢方や薬膳的な食事といった東洋医学も、取り入れるべき価値のあることです。

そして、毎日の生活に、楽しみを持ちながら、生活できるようにしましょう。

最後に、まとめとなりますが、肺がんと戦うためには、以下の点に注意が必要です。

  • 抗がん剤治療、放射線治療、手術をバランスよく用いる
  • 病院での治療で、体力を消耗しないようにすること
  • 適切な漢方

その結果、肺がんによる症状を、楽にできます。

肺がんを、もっと小さくしていくことも、できます。

そして、肺がんに負けない体を作っていきましょう。

そのために、知っておくことがあります。

肺がんに負けない方法は、こちらで学ぶことができます。

執筆医師:加藤隆佑


癌治療認定医
内科学会認定医
消化器病学会専門医
消化器内視鏡学会専門医
肝臓専門医

札幌禎心会病院がん化学療法センター長

(2021年9月までは、小樽協会病院消化器内科に所属)

消化器領域のがん(食道、胃、すい臓、肝臓、胆のう、大腸)を専門としつつ、がん全般についてアドバイスをしています。

緑書房より「抗がん剤治療を受けるときに読む本」と、「大腸がんと告知されたときに読む本」を出版。

加藤隆佑医師の論文

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