高圧酸素療法のがんへの効果を、医師が解説
こんにちは。加藤隆佑です。
高圧酸素療法というものがあります。
それを抗がん剤治療や放射線治療と併用すると、非常に良いです。
がんに対する治療効果が増強されます。
目次
高圧酸素療法の適応とは?
以下のような疾患に対して、高圧酸素療法は用いられます。
ア 網膜動脈閉塞症
イ 突発性難聴
ウ 放射線又は抗癌剤治療と併用される悪性腫瘍
エ 難治性潰瘍を伴う末梢循環障害
オ 皮膚移植
カ 脊髄神経疾患
キ 骨髄炎又は放射線障害
これは、厚生労働省が提示している内容です。
ちなみに、2018年に、高圧酸素療法に対する保険点数が以前の15倍にも高くなりました。
このことを契機に、高圧酸素療法がもっと普及するとよいです。
高圧酸素療法のがんに対する効果とは?
高圧酸素療法を受けるだけでは、がんに対する治療効果は期待できません。
抗がん剤治療や放射線治療を併用することが前提です。
そうすることにより、治療効果を増強させられます。副作用も減らすことができます。
高圧酸素療法は放射線治療により生じた副作用も改善できる
1つ事例をあげます。
直腸がんで放射線治療を受けた方がいました。
その方の陰部に、放射線治療が原因の潰瘍ができてしまいました。
放射線治療による潰瘍は治すことが難しいケースが多いです。
この方には、高圧酸素療法を受けていただき、潰瘍は治癒しました。
高圧酸素療法は、放射線治療の後遺症的な症状に、効果があるのです。
つまり、放射性膀胱炎、放射線直腸炎、放射線皮膚障害、放射線骨髄炎に対して、高圧酸素療法は有効ということです。
高圧酸素療法の治療効果をさらにあげるには?
高圧酸素療法の治療効果をあげるならば、ハイパーサーミアも併用するとよいことは、判明しています。
この2つを併用しつつ、抗がん剤治療や放射線治療に力をいれている施設は、非常によい治療成績をあげています。
たとえば、以下のような治療成績があります。
進行性非小細胞がんのパクリタキセル/カルボプラチンの併用療法をうけて腫瘍が縮小するのは約40%の患者さんと言われている。
一方で、高圧酸素療法とハイパーサーミアを併用すると、73%の患者さんの肺がんが縮小する。
卵巣がんに標準的に用いられるTC療法の効果がなかった患者さんに、高圧酸素療法とハイパーサーミアを併用してTC療法をする。
その結果、卵巣がんが縮小することが、それ相応の確率である。
私が担当しているがんの患者さんにも、状況に応じて、この治療法を受けていただくことは多いです。
高圧酸素療法はどのような治療法ですか?
水深 10~20mに相当の気圧環境の中で、100%酸素を吸入します。
その結果、血 液中の酸素量を増加させて、酸素不足の状態にある組織に対して改善を図ります。
がん組織は低酸素を好みます。したがって、高圧酸素療法で高酸素の状態にすることは、がん細胞によって嫌がる環境を作ることになります。
1回の治療時間は、通常約 90 分です。所定の圧まで上げるのに約 15 分、その後一定圧で 60 分、圧力を大気圧まで戻すのに約 15 分要します。
高圧酸素療法を受けると、その後約30分間がん細胞内の酸素分圧が上昇します。
高圧酸素療法の直後に、抗がん剤治療や放射線治療をうけないと、治療効果は落ちるといえます。
高圧酸素療法の副作用は?
主に耳痛です。
治療が始まり、圧力が上がってくると次第に耳が痛くなることがあります。
飛行機に乗った時や山に 登った時の症状のことです。あくび、つばを飲み込むなどして、耳抜きをするとよいです。
本日のまとめです。
がんの治療は、標準的な治療法をベースにしつつ、様々な枝葉をつけていくとよいです。
今回ご紹介した治療法も、その1つです。
治療効果をアップさせつつ、さらに副作用で悩まされることが減るからです。