子宮頸がんのステージ別と、転移した部位別の治療法を、医師が解説!ステージ4や再発でも克服を目指す!
こんにちは。加藤隆佑です。がん治療専門医として、総合病院で勤務しています。
さて、今日は、子宮頸がんについてのお話です。子宮頸がんを克服するために、あなたが知っておくべきことがあります。
もし、あなたが副作用で悩まれているならば、副作用をもっと楽にすることは、できます。
そして、子宮頸がんを克服する確率を、跳ね上げていきましょう。
私の16年間のがん治療の経験を踏まえて、あなたの悩みの解決の手助けになることを、書いていきます。
子宮頸がんの初期症状(自覚症状)
子宮頸がんは、子宮の入り口の子宮頸部とよばれる部分にできます。
婦人科の診察で、観察や検査がしやすいため、発見されやすいです。また、早期に発見すれば、治りやすいがんです。しかし、進行すると治癒が難しいことから、早期発見です。
しかし、初期の子宮頸がんは、全く症状がありません。そこで、症状がなくても、20歳を過ぎたら、2年に1回は、子宮がんの検診を受けることが勧められています。
子宮頸がんのステージの決め方
がんが疑われる部分から、小さな組織を切り取り、顕微鏡で観察して診断します。診断のために、数回その検査を受けないといけないこともあります。「円錐切除術」とよばれる方法で組織診を行うこともあります。
そのような検査で診断がついたら、さらに、超音波検査、CT、MRI、PETなどを行います。そして、どのようながんの広がりかを予想をつけます。
以上の検査結果を踏まえて、ステージを決定します。
ステージ1:がんが、子宮頸部のみに認められ、ほかに広がっていない
ステージ1は、さらに、以下のように分けられます。
ステージ1aは、非常に長期の段階
ステージ1b1は、がんの大きさが4センチ以下
ステージ1b2は、がんの大きさが4センチ以上
ステージ2:がんは子宮頸部を超えて広がっているが、膣の壁の下方1/3や、骨盤の壁には、達していない。
ステージ2は、さらに、以下のように分けられます。
ステージ2a1は、がんの大きさが4センチ以下
ステージ2a2は、がんの大きさが4センチ以上
ステージ2bは、がんは、子宮から顔を出し、子宮の隣の組織に食い込んでいる。
ステージ3:がんは、膣の壁の下方1/3に達しているか、もしくは、「子宮の隣の組織に食い込んでいた子宮頸がんが、骨盤の壁にまで到達した状態」
以下に、臓器の位置関係が分かる絵を書きましたので、ご参照ください。
ステージ4
ステージ4は、さらに以下のように分類されます。
ステージ4a:膀胱や直腸の粘膜に、がんが広がっている。
ステージ4b:小骨盤腔を超えて、がんの転移がある。
ステージに応じた治療法と生存率
子宮頸がんは、若い方も、かかる確率が高いがんです。そこで、妊娠を希望される方と、そうでない方で、手術のやり方が異なることがあります。
具体的には、ステージ1A1、ステージ1A2、ステージ1B1ならば、妊娠ができるような術式で、がんを切除できないか、検討されます。
ステージ1A1、ステージ1A2の子宮頸がん
非常に早期の段階です。
手術で、子宮頸がんを取り除きます。
ステージ1B1、ステージ2A1の子宮頸がん
がんの大きさは、4センチ以下で、膣の壁の下1/3のところや、骨盤の壁には、達していない状態のことです。
放射線治療と、手術が同等の成績です。
それぞれの治療の特徴を主治医から聞き、その上で、あなたの意向にあった治療が、選択されます。
ステージ1B2、ステージ2A2の子宮頸がん
がんの大きさは、4センチ以上で、「膣の壁の下方1/3や、骨盤の壁」には、達していない状態のことです。
「放射線治療と抗がん剤治療の同時併用」と、手術は、同等の治療成績です。
手術による治療を受けた場合は、その結果によっては、再発率を下げるために、「放射線治療」もしくは、「放射線治療+抗がん剤」を追加で受けた方が良いことも、あります。
がんを手術で全部切除できたように見えても、すでにがん細胞が別の臓器に転移している可能性があるからです。
抗がん剤は、「シスプラチン(パクリタキセルという抗がん剤を足すことあり」を用いた抗がん剤が用いられることが多いです。
また、問題点として、手術後に「放射線治療+抗がん剤」や「放射線治療」を受けると、リンパ浮腫や排尿障害の起きる可能性が高くなることです。
そのようになる可能性を少しでもさげるために、放射線治療をIMRTという特殊な手法を用いて行うことがあります。
また、万が一、リンパ浮腫になってしまっても、適切な対処法をすることにより、症状を改善させることができます。
特に、手術でリンパ節郭清をしていたら、100%の方がリンパ浮腫0期と考えるべきです。
リンパ浮腫の症状を、早く見つけて、症状が、重くならないようにする事が大事です。セルフチェックのポイントは、つまむなどして探して、左右差がないことを確認しましょう。太腿の内側に左右差があれば、リンパ浮腫です。
リンパ浮腫との付き合い方として、やっていけない事はなく、運動の種類もこだわらなくて良いです。
しかしながら、重い荷物や、長時間の立ち仕事、高温のサウナなどはNGになります。
ステージ2B の子宮頸がん
がんは、子宮から顔を出し、子宮の隣の組織に食い込んでいる状態です。アメリカでは「放射線治療と抗がん剤治療の同時併用」が、最も推奨されています。
しかし、日本においては、手術も、治療の選択肢の1つになっています。
手術の後は、再発率を下げるために、「放射線治療」もしくは、「放射線治療+抗がん剤」を追加で受けるケースが多いです。
ステージ3、ステージ4Aの子宮頸がん
遠くの臓器に転移はしていませんが、かなり広がっているために、手術で取り除くことはできません。
放射線治療と抗がん剤治療の併用になります。
抗がん剤は、「シスプラチン(パクリタキセルという抗がん剤を足すことあり」を用いた抗がん剤が用いられることが多いです。
約76%の方が、画像上、がんが消失するとされています。
もし、消失まで持ってこられない時は、手術を試みることあります。
ステージ4Bの子宮頸がん
ステージ4Bといっても、いろんな状況が考えられます。
治療によって、根治もしくは、がんの長期にわたる制御の可能性が見込まれるときは、放射線治療、抗がん剤、手術を組み合わせた治療になります。
例えば、大動脈の近傍のリンパ節といった部位に転移している子宮頸がんもステージ4Bになります。
そのような状況であれば、抗がん剤治療と放射線治療で、完治を目指すことも、できます。
また、状況によっては、子宮頸がんの部分を手術で取り除いたのちに、抗がん剤治療を行い、その後、放射線治療を足すこともあります。
体中の臓器に転移している子宮頸がんも、ステージ4Bになります。このような場合ですと、完治を目指す事は難しいです。
抗がん剤だけでの治療法や、症状を緩和する放射線治療が、選択されます。
そのような難しい状況であっても、画像上がんを指摘できない位に、がんを縮小させられることもあります。
そのために、標準的な治療に、代替療法的な治療を加えるとよいです。
どのような治療を加えたら良いかは、こちらで詳しくお話しています。
子宮頸がん再発
症状として、骨盤痛み、股関節痛、背部痛、脚の痛みがあります。そのような症状がある時は、検査を受けた方が良いです。
一方で、症状がなく、再発することもあります。従って、定期的に検査を受ける必要もあります。
もし、再発の診断となったとします。体に負担が少なく取り除けるならば、手術が選択されます。その上で、抗がん剤治療で、再び再発する確率を下げる試みをします。
手術が難しい場合は、抗がん剤治療、放射線治療のどちらか、もしくは併用そして、治療をしていきます。
再発と言っても、再び、がんを緩解の状態(画像上、ガンを指摘できない状態)に持っていけることも、それなりにあるのです。
アメリカのガイドラインでは、40%の方が、緩解にもってこれると述べています。
さて、上記のデータは、2005年から2007年の間に、子宮頸がんの診断や治療を受けた患者様に基づいたデータです。
つまり、10年前の治療に基づくものですので、現在の発達した治療であれば、よりよい治療成績になっています。
また、データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者様に当てはまるわけではありません。
子宮頸がんの抗がん剤の効果
子宮頸がんは、抗がん剤が、比較的効きやすいがんです。
ステージ4や再発の子宮頸がんの治療で最も用いられる、切れ味の良い抗がん剤は、以下の組み合わせです。
パクリタキセル+シスプラチン+アバスチン
(これまでの抗がん剤の使用歴や、全身の状態が良くない場合は、他の抗がん剤に、なることもあります。)
しかし、それが、効かなくなると、切れ味のよい抗がん剤の選択肢は無くなり、以下の抗がん剤のどれかが用いられることが、多いです。
パクリタキセル+アバスチン
ネダプラチン+イリノテカン
トポテカン(製品名は、ノギテカン、ハイカムチン)
エトポシド
UFT
この段階は、治療に手詰まり感を感じます。
そのような段階では、標準的な治療法以外の治療も、検討すべきです。
例えば、遺伝子検査をして、何らかの分子標的薬を用いられないかを調べても良いでしょう。治験を受けることも、選択肢の1つにあがります。
子宮頸がんの抗がん剤の副作用
抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を与えます。
特に髪の毛、口や消化管などの粘膜、あるいは血球をつくる骨髄は、影響を受けやすいです。その結果、脱毛、口内炎、下痢が起こったり、白血球の数が少なくなることがあります。
全身のだるさ、吐き気、手足のはれ、しびれ、肝機能障害、腎機能障害が出ることもあります。
こうした副作用が、どの程度出るかに関しては、個人差があります。
副作用が著しい場合には、抗がん剤の量を減らしたり、抗がん剤治療の中断を検討することもあります。
あなたが、辛いと思っている副作用を、主治医に、しっかり伝えましょう。
あなたが、伝えないと主治医に分かってもらえない副作用があるのです。
副作用対策をしてもらいましょう。最近は副作用を、かなり取り除けるようになっています。
例えば、以前は、吐き気で悩まれる方が、非常に多かったです。しかし、最近は、そのようなことは、減りました。非常によく効く吐き気止めが、使えるようになったからです。
以前とは、比べものにならないくらいに、吐き気に悩まされずに、治療を受けられるようになってきています。
そのような事実があるにもかかわらず、吐き気に悩まされながら治療を受けられている方がいらっしゃるのも、事実です。
その原因として、以下の理由があげられます。
副作用で苦しんでいることを、主治医が把握できていない。
主治医が、副作用対策を熟知していない。
本来であれば悩まなくてもよい症状に、悩まされることがあるのです。
繰り返しになりますが、あなたが、主治医に副作用を伝えたつもりでいても、しっかりと伝わっていないことがあることは、知っておいてください。
そのようなことを避けるために、手紙に書いて、症状を伝えることも良いことです。
もう一つ忘れてはいけない理由は、過剰な量の抗がん剤が投与されていることがあります。
もう少し具体的にお伝えします。
一般的な抗がん剤は、体重と身長から、投与量を計算します。
体重が減ったら、抗がん剤も減量しないといけませんが、減量されず抗がん剤が投与されていることがあるのです。
それは、過剰な量の抗がん剤になり、強い副作用がでることになります。
体重の1kg程度の増減は、気にしなくてもよいですが、それ以上の体重の増減のときは、主治医に伝えるべきです。
代替療法的な手法を取り入れることにより、副作用を緩和させることも、できます。
子宮頸がんでよく用いられる抗がん剤の1つであるパクリタキセルや、ドセタキセルでは、特に注意しないといけない副作用があります。それは、しびれです。専門用語では、末梢神経障害と呼ばれます。
後遺症としてしびれが残り、自分で歩く事が困難になったり、ボタンを自分でつけれなくなることもあります。
しびれに関しては、適切な対処が必要です。主治医には、しびれがでたときには、報告して、適切な対処をしてもらいましょう。
また、しびれの発生を抑える方法も、数年前に論文で発表されています。
まだ広くは普及はしていませんが、簡単にできて効果的ですので、そのような方法を取り入れても良いでしょう。
抗がん剤によるしびれを取り除く方法は、こちらで説明しています。
子宮頸がんの放射線治療の副作用
膣狭窄や、腟乾燥をきたすことがあります。
腟拡張機を用いることができますし、ゼリーで対処することもできます。
最も注意しないといけないことは、2次がんです。放射線を当てた部位(大腸や膀胱)に、10年くらいしてから、別のがんができることがあるのです。
したがって、定期的に、そのような部位の検査を受けることも、必要です。
転移した部位に合わせた治療法
肝転移
肝臓に転移していると、ステージ4の段階になります。したがって、ステージ4の治療に基づいた治療を受けることになります。つまり、抗がん剤治療です。
肝転移が少数の数であり、肝臓以外にがんが存在せず、さらに、肝転移の状態が長期間にわたって落ち着いているときは、以下の治療法が検討されることもあります。
血管内治療
RFA
放射線治療
手術
リンパ節転移
子宮の周りの転移しているリンパ節ならば、手術や放射線治療で制御することができます。
一方で、広い範囲に転移している場合のリンパ節転移は、手術で取り除くことは、不可能であり、抗がん剤治療が中心となります。
腹膜播種
お腹の中に、腹膜という部位があります。そこに、種がまかれるように、お腹の中にバラバラと、がんが広がることです。その場合は、抗がん剤で、治療をしていくことになります。
ステージ4Bに該当します。
子宮頸がんで腹水多量のときの治療法
腹膜播種がひどい状況になると、腹水がでます。腹水の量が非常に多いと、食事量が減り、全身の状態が悪くなることがあります。
そのような状況での、抗がん剤治療は、副作用のリスクが高くなるので、慎重に行わないといけません。
また、腹水がたまって、お腹が張って辛いときは、腹水を抜くことがあります。腹水を抜くと、腹水の中にある体の栄養分まで失うことになります。
そこで、腹水を抜いた後に、その腹水を「ろ過+濃縮」したあとに、腹水の中の栄養成分だけを体内に戻す、腹水ろ過濃縮再静注法(CART)を行うことがあります。
子宮頸がんステージ4や再発の子宮頸部がんは治る?それとも、末期で余命を数える段階?そして末期症状とは?
また、「ステージ4、再発=末期がん」と、思われがちですが、ステージ4でも、完治される方は、います。
私が考える末期とは、自分の力で歩くことも食事をすることもできないほど、弱りきっている段階と考えます。
そのような段階にならない限りは、受けるべき治療はあります。
また、ステージ4(もしくは再発)にも、いろんな状況が想定されます。
肝臓に転移が1つだけある方
肺や肝臓に無数の転移のある方
すべての抗がん剤治療を試み、治緩和ケアを提案される方
上記の通り、ステージ4(もしくは再発)といっても、いろんな段階があるのです。
ステージ4や、再発であっても、寛解にもってこられるケースは、子宮頸がんの場合は、あります。
さて、ここでは、効果の期待できる抗がん剤治療が提案することができない段階の対応について、詳しくお伝えします。
このような段階は、病気に伴う心と体の痛みを和らげる治療、つまり緩和医療が中心となります。
痛みがあるときは、痛み止めの薬の量を調節する。
精神的に落ち込んでいるときは、カウンセリングを受けたり、抗うつ薬の量を調節する。
そのような治療を中心に行います。
もちろん、がんと診断された時期から、上記のことは、同時並行でおこなっています。「効果の期待できる抗がん剤治療が提案できない段階」は、そのことを、より強化していくとういことです。
この段階における治療は、決まったやり方があるようで、ありません。
かなり、医師の力量が問われるところなのです。
そして、緩和医療をうけていただくことも、より長く生きていくことにつながることは、証明されています。
抗がん剤、手術、放射線治療だけが、より長く生きていくための治療ではないことを忘れてはいけません。
ここまでについて、いかがでしょうか?
子宮頸がんの治療の概要を分かっていただけたでしょうか?
あなたが、ちょっとした工夫を取り入れるだけで、子宮頸がんによる症状が楽になることもあります。
他のドクターから、主治医から提案されなかったような治療法を提案してもらったおかげで、完治された事例もあります。
標準的な治療以外にも、より良い治療結果を出すために、取り入れるべき治療法もあります。
そして子宮頸がんを克服していきましょう。
そのためにあなたに知ってほしいことは、こちらに書いています。