食道がんのステージ別と、転移した部位別の治療法を、医師が解説!ステージ4や再発でも克服を目指す!
こんにちは。加藤隆佑です。がん治療の専門医として、小樽協会病院という総合病院で勤務しています。
さて、今日は、食道がんについてのお話です。西洋医学の視点から、食道がんを克服するためのコツを書いていきます。
もしあなたが、抗がん剤の副作用で悩まれているならば、その解決の手助けになることも書いていきます。
食道がんの初期症状(自覚症状)と、その取り除き方
食道がんは、初期には自覚症状がないことが多く、人間ドックの内視鏡検査などで発見されることが、20%近くあります。
無症状で発見された食道がんは、早期であることが多く、治る確率が高くなります。
食道が、しみるような感覚は、食道がんの初期の症状です。
がんが、さらに大きくなってくると、食物がつかえるような感覚、胸の痛み・背部の痛み、声のかすれが、でます。
食道がんの治療をしていくことにより、それらの症状は改善します。治療で取り除けない症状は、薬を調節して、症状をとります。
例えば、なかなか取り除けない痛みは、モルヒネといった医療用麻薬を用いることになります。
食道がんのステージの決め方
胃カメラで細胞を採取して、食道がんの診断をします。そして、CT、MRI、PETでステージを決めることができます。
病院によっては、超音波内視鏡というカメラで、リンパ節が何個腫れているか?がんが、心臓や気管に食い込んでいないかを確認する施設もあります。
以上の検査より、以下の状況を把握できます。
食道のがんが、どの程度、食道の粘膜に食い込んでいるか?
転移しているリンパ節の数
遠くの臓器(肺、肝臓、腹膜など)に転移しているか?
そして、ステージを決定します。
あなたの置かれたステージを通して、あなたが、以下のうちの、どの治療がよいのかを知っていただくことが、大切です。
内視鏡治療でよいのか?
手術がよいのか?手術であれば、術後に再発を予防するために抗がん剤治療を受けたほうがよいのか?
手術はしないで、抗がん剤治療がよいのか?
ステージに応じた治療法と生存率
ステージ0の食道がん
内視鏡的な治療で、切除します。それにより、治癒します。
ステージ1の食道がん
手術もしくは、「放射線治療+抗がん剤」が標準的な治療です。どちらも、治療成績は同じです。
おのおのの、治療の長所と短所を、主治医から説明を受け、納得した上で、治療法を選びましょう。
さて、手術や、「抗がん剤と放射線治療を同時併用療法」に耐えられるだけの体力がない方もいらっしゃいます。その場合は、放射線治療のみになることもあります。
放射線治療のみでも、完治する方はいらっしゃいます。
ちなみに、手術に伴う合併症で、死につながるものは、2から3%の確率で発生すると、されています。
体力がないと、合併症は発生しやすいです。体力があって、手術に耐えられることを、しっかりと、評価してもらうことが、大切です。
また、手術のあとは、しっかりとリハビリをしてもらい、体力をつけることも必要です。
病院によっては、手術の翌日から、リハビリを開始します。
ステージ2、ステージ3の食道がん
以下のどれかによる治療になります。
・手術
・手術をしたのちに、抗がん剤治療
・抗がん剤と放射線治療(抗がん剤だけのこともあり)で、がんを縮小させたのちに、手術
前述しておりますが、食道がんの手術や「抗がん剤と放射線治療を同時併用療法」は、非常に体に負担がかかります。
体力の無い方は、放射線治療のみに、なることもあります。
また、手術のあとに、抗がん剤治療を受けることも、多いです。
手術でがんを全部切除できたように見えても、その時点で、がん細胞が別の臓器に転移している可能性があるからです。
一方で、再発率をさげる抗がん剤で、確立したものはないという問題点もあります。
そのような中で、数少ないはっきりしていることの1つが、「手術前に抗がん剤治療を受けなかった方で、手術後に、リンパ節転移が判明した場合」の抗がん剤治療は、再発予防に意義があるということです。
「シスプラチン+5-FU」が抗がん剤として用いられることが多いです。
シスプラチンは副作用が強く、腎臓に負担を与えます。シスプラチンよりも副作用が弱い、ネダプラチンというお薬が用いられることもあります。
「シスプラチン+5-FU/LV」と「ネダプラチン+5-FU/LV」の治療成績は、ほぼ同じとされています。
余談ですが、私は、「ネダプラチン+5-FU/LV」で治療をすることが多いです。副作用が少ないからです。
ステージ4
肝臓、肺、腹膜、複数のリンパ節に、がん細胞がある状態のことです。この状態は、がん細胞が、体に広く散らばっていると予想されます。
抗がん剤治療が中心となります。
以下のような抗がん剤が、用いられることが、多いです。
シスプラチン+5-FU/LV
ドセタキセル+ネダプラチン
パクリタキセル
抗がん剤であれば、体の血流にのって、体中にひろがったがん細胞に、がんを倒す薬の成分を、届けることができるからです。
抗がん剤治療と同時に、食道のがんを、放射線治療で、小さくすることも、多いです。
抗がん剤が効かずに、食道のがんが、大きくなり、食事をとれなくなることを、避けるためです。
もし、それらの治療の甲斐がなく、食事が、通過しなくなったとします。そのような場合は、食道ステントというパイプを、内視鏡で留置することが、あります。
そうすることにより、がんによって狭くなった食道が、広くなり、食事が通るようになります。
食道ステントは、以前はよい商品がなく、ステント留置後のトラブルも、多々ありました。しかし、最近は、良い品質のステントがでてきたので、留置後のトラブルは、かなり減りました。
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食道がんの手術後の再発
抗がん剤を中心とした治療になります。再発した部位によっては、放射線治療を足す事もあります。
再発に関して、ガイドラインより、以下の文章を抜粋しておきます。
—–
長期生存または完治する症例が少なからずあることも明らかであり、積極的治療が望まれる。
食道がん根治切除後の再発の治療法は,再発部位・形式やその範囲に応じて選択される。再発時の全身状態や手術操作範囲内の再発か否か,術前または術後に放射線照射がされているかなどでも治療法が変わる。
—–
「再発=末期」ということでは、ないのです。
ステージ4の時と同様に、以下のような抗がん剤を用いられる事が多いです。
シスプラチン+5-FU/LV
ドセタキセル+ネダプラチン(もしくはパクリタキセル)
副作用に耐えられる体力が残っていない場合は、これらのお薬による治療を受けるかは、慎重に判断しないといけません。
また、抗がん剤の選択肢は、多い訳ではありません。従って、以下のことも、事前に考えておくとよいです。
受ける価値のある治験はないか?
また、「ステージ4」や「再発」の場合ですと、長期にわたる治療になることが予想されます。
そこで、抗がん剤による副作用で、体力を失わないようにしないといけません。副作用を抑えることが、大切になるということです。
工夫をすることにより、副作用をかなり抑えることはできます。
さて、上記のデータは、2005年から2007年の間に、食道がんの診断や治療を受けた患者様に基づいたデータです。
つまり、10年前の治療に基づくものですので、現在の発達した治療であれば、よりよい治療成績になっています。
また、データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての患者様に当てはまるわけではありません。
転移した部位に合わせた治療法
肝転移
肝臓に転移していると、ステージ4の段階になります。したがって、ステージ4の治療に基づいた治療を受けることになります。つまり、抗がん剤治療です。
また、以下の治療が有効なことも、あります。
血管内治療
ラジオ波焼却法(RFA)
放射線治療
リンパ節転移
食道の周りの転移しているリンパ節ならば、手術や放射線で治療することにより、治る可能性がある転移です。
一方で、食道から離れたリンパ節への転移は、切除することが不可能であり、ステージ4の診断となります。その場合は、ステージ4の治療に準じた治療、つまり抗がん剤治療が中心となります。
状況によっては、放射線治療が有効なことも、あります。
腹膜播種
お腹の中に、腹膜という部位があります。そこに、種がまかれるように、お腹の中にバラバラと、がんが広がることです。その場合は、ステージ4の治療に準じた治療、つまり抗がん剤治療が中心となります。
食道がんの抗がん剤の副作用
抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を与えます。
特に髪の毛、口や消化管などの粘膜、あるいは血球をつくる骨髄は、影響を受けやすいです。その結果、脱毛、口内炎、下痢が起こったり、白血球の数が少なくなることがあります。
全身のだるさ、吐き気、手足のはれ、しびれ、心臓への影響として動悸(どうき)、肝機能障害、腎機能障害が出ることもあります。
こうした副作用は、用いる薬の種類によって異なり、その程度も個人差があります。
副作用が著しい場合には、抗がん剤の量を減らしたり、抗がん剤治療の中断を検討することもあります。
あなたが、辛いと思っている副作用を、主治医に、しっかり伝えましょう。あなたが、伝えないと主治医に分かってもらえない副作用があるのです。
副作用対策をしてもらいましょう。
最近は副作用を、かなり取り除けるようになっています。
例えば、以前は、吐き気で悩まれる方が、非常に多かったです。しかし、最近は、そのようなことは、減りました。非常によく効く吐き気止めが、使えるようになったからです。
以前とは、比べものにならないくらいに、吐き気に悩まされずに、治療を受けられるようになってきています。
そのような事実があるにもかかわらず、吐き気に悩まされながら治療を受けられている方がいらっしゃるのも、事実です。
その原因として、以下の理由があげられます。
副作用で苦しんでいることを、主治医が把握できていない。
主治医が副作用対策を熟知していない。
本来であれば悩まなくてもよい症状に、悩まされることがあるのです。
もう一つ忘れてはいけない理由は、過剰な量の抗がん剤が投与されていることがあります。
もう少し具体的にお伝えします。
一般的な抗がん剤は、体重にあわせて、抗がん剤の量を決めます。体重が減れば、抗がん剤を減量しないといけないのですが、従来の体重の量で抗がん剤が投与されていることがあるのです。
それは、過剰な量の抗がん剤になり、強い副作用がでることになります。
体重の1kg程度の増減は、気にしなくてもよいですが、それ以上の体重の増減のときは、主治医に伝えるべきです。
代替療法的な手法を取り入れることにより、副作用を緩和させることも、できます。
ちなみに、食道がんの抗がん剤で、特に注意をしないといけない副作用は、以下のものです。
シスプラチンによる吐き気、しびれ、腎機能障害
ドセタキセル(もしくはパクリタキセル)によるしびれ
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食道がんステージ4は治る?それとも、末期で余命を数える段階?そして末期症状とは?
また、「ステージ4、再発=末期がん」と、思われがちですが、ステージ4でも、完治される方は、います。
私が考える末期とは、自分の力で歩くことも食事をすることもできないほど、弱りきっている段階と考えます。そのような段階にならない限りは、受けるべき治療はあります。
また、ステージ4(もしくは再発)にも、いろんな状況が想定されます。
肺に転移が1つだけある方
肺や肝臓に無数の転移のある方
腹水が多量にある方
すべての抗がん剤治療を試み、治緩和ケアを提案される方
上記の通り、ステージ4(もしくは再発)といっても、いろんな段階があるのです。
さて、ここでは、効果の期待できる抗がん剤治療が提案することができない段階の対応について、詳しくお伝えします。
このような段階は、病気に伴う心と体の痛みを和らげる治療、つまり緩和医療が中心となります。
痛みがあるときは、痛み止めの薬の量を調節する
精神的に落ち込んでいるときは、カウンセリングを受けたり、抗うつ薬の量を調節する
そのような治療を中心に行います。
もちろん、がんと診断された時期から、上記のことは、同時並行でおこなっていくわけですが、「効果の期待できる抗がん剤治療が提案することができない段階」は、そのことを、より強化していくのです。
この段階における治療は、決まったやり方があるようで、ありません。
かなり、医師の力量が問われるところなのです。
そして、緩和医療をうけていただくことも、より長く生きていくことにつながることは、証明されています。
抗がん剤、手術、放射線治療だけが、より長く生きていくための治療ではないことを忘れてはいけません。
ここまでについて、いかがでしょうか?
食道がんの治療の概要を分かっていただけたでしょうか?
あなたが、ちょっとした工夫を取り入れるだけで、食道がんによる症状が楽になることもあります。
他のドクターから、主治医から提案されなかったような治療法を提案してもらったおかげで、完治された事例もあります。標準的な治療とはされていない中にも、それなりの確率で、有効な治療法もあります。
そのようなことも取り入れて、食道がんを克服していきましょう。
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