膵臓がんが腹膜播種の形で再発し、腹水が増えた時の治療法を医師が解説
こんにちは。加藤隆佑です。小樽協会病院というところで、がんを専門に診療をしています。
さて、膵臓がんの手術後、一番気がかりなことは、再発しないかということです。
もし、腹膜播種として再発した場合は、腹水がたまり、場合によっては、お腹がパンパンになることがあります。
本日は、腹膜に再発したときの治療法と、腹膜に再発する理由を、解説いたします。
膵臓がんが、腹膜に再発する理由とは?
お腹の中に、腹膜という部位があります。そこに、種がまかれるように、バラバラと、がんが広がることを腹膜播種(ふくまくはしゅ)と言います。
膵臓がんにおいては、腹膜播種の形態で再発することは、多いです。
さて、膵臓がんが、腹膜に再発する理由は2つです。
1つ目は、手術の刺激で、がん細胞が、腹膜に散らばったという理由です。
もう1つの理由は、手術の際に行われた検査では分からないくらい小さな癌細胞が、すでに腹膜に転移していたという理由です。
そして、腹膜に転移していたがんが、時間とともに大きくなり、検査で分かるようになったのです。
腹膜播種として再発した場合の症状
腹痛が出ることがあります。便秘気味に、なることもあります。
腹膜播種がひどい状況になると、腹水がでます。
その結果、お腹がはります。
このような症状がきっかけで、膵臓がんの再発がわかることは、珍しくありません。
膵臓がんの術後に、お腹がはるという症状がでたときには、早めに病院を受診しましょう。
もし、腹膜播種として再発した場合には、抗がん剤治療が中心となります。
ちなみに、非常に効果的に、腹膜播種を制御する特殊な治療法があります。
お腹の中に、直接抗がん剤を投与するという方法です。腹腔内化学療法と言われます。腹腔内のがん細胞を制御するのに、有効な治療法です。
それによって、腹膜播種が綺麗に、消えるケースも、あります。
問題点として、この治療法が広く普及はしておらず、一部の施設でしか行われていないことです。
膵臓がんで腹水多量で、お腹がパンパンになったときの対処法
腹水でお腹が張って辛いという症状をとるために、小さな針をお腹にさして、腹水を抜くことがあります。
腹水だけを抜くと、体の栄養成分も、抜けてしまうことが、注意点として、挙げられます。
そのことを避けるために、腹水を抜いた後に、腹水を「ろ過+濃縮」して、腹水の中の栄養分だけを体内に戻す、腹水ろ過濃縮再静注法(CART)を行うことがあります。
最後に、本日のまとめです。
腹膜播種になったとしても、がんを制御するために、すべきことはあります。
さらに、症状をよりよくすることは、できるのです。
さて、膵臓がんが再発したときには、抗がん剤だけでは、治療効果に限界が、あります。