癌の遺伝子検査が保険適用に!遺伝子検査のメリットとデメリットを解説
こんにちは。加藤隆佑です。
がん細胞は、いろんな顔つきがあります。その顔つきを決めるのが、遺伝子です。遺伝子は、がん細胞の設計図とも言えるでしょう。
そして、がん細胞の遺伝子を検査することにより、がん細胞を効率的に制御する薬物を見つけることができます。
さて、がん細胞の遺伝子検査で、よく用いられるものは、以下の2つです。
- NCCオンコパネル
- ファウンデーションワンCDx
これまでは、遺伝子検査は先進医療として行われていましたが、2019年の6月より、公的保険が適用されました。
目次
どこで、この検査を受けることができる?
厚生労働省が認める全国11カ所の拠点病院と、連携する135の医療機関で、受けることができます。
どのような患者さんが、この検査を受けることができる?
標準的な治療をやり尽くしてしまった患者さん、小児がん、希少がんの患者さんに限定されます。
遺伝子検査の費用はどのくらい?
約60万円の検査となります。
公的保険の対象となる検査なので、患者さんの費用負担は1割から3割で、すみます。
1カ月の自己負担の上限を定めた、高額療養費制度を利用できれば、自己負担はさらに下がります。
遺伝子検査のメリットとデメリット
メリット
治療法がないとされてきた患者さんに合う薬が見つかる可能性があります。
一方で、がん細胞の遺伝子異常を発見したとしても、その遺伝子異常に関連する部位を制御する薬が開発されていないことがあります。そのような場合は、がんの治療は、できないことになります。
国立がんセンターの事例をあげます。
卵巣がんの方で、すべての標準的な治療をやり終える。
遺伝子検査を受けた結果、AKT1の遺伝子に異常があることが、判明。
AKT阻害薬により5年以上、がんの成長は止まっている。
このように、遺伝子検査を通して、これ以上の治療法がないとされてきた患者さんに合う薬が、見つかることがあるのです。
遺伝子異常が見つかる頻度と、比較的、高頻度に認められる遺伝子異常は?
- TP53
- PIK3CA
- BRCA2
- K-RAS
- ERBB2
- EGFR
- MDM2
注意点として、遺伝子に異常を認めたとしても、がんの成長に全く関係のない遺伝子異常もあるということです。
最近のもう少し具体的なデータは以下の通りです。
・遺伝子検査をして、なんらかの遺伝子異常を認めたのは約84%
・なんらかの抗がん剤を用いてみる価値があるという遺伝子異常であったのは、約60%
・最終的に、遺伝子異常に適合した治療薬が投与されたのは13%
60%の人に、なんらかの治療薬を試みる価値があると、判定されたのに、実際は13%にか投与されなかったのには、理由があります。
その薬が、治験薬であったり、保険診療内で用いることができる薬ではなかったからです。
結論としては、以下のとおりとなります。
遺伝子検査の結果、有効な薬剤の投与ができる患者さんは、10%前後とされています。
乳がんの場合は、適合する薬が見つかる薬が高い
実は、乳がんの場合は、適合する薬が見つかる薬が高い傾向があります。
その結果、遺伝子異常に適合した治療薬が、実際に投与されたのは33%というデータもあるのです。
他のがんに比べて、乳がんの場合は、効果が期待される薬が見つかる可能性が高いのです。
がんの成長に強く関係する遺伝子異常を発見することが、大切です。
デメリット
遺伝子検査をすることにより、遺伝性のがんであることが、判明することがあります。
たとえば、子宮体がんの方が、それ以上の治療法がないために、遺伝子検査を受けたとします。
その結果、BRCAという遺伝子に異常があったとは判明したとします。
そのような場合は、リムパーサ(オラパリブ)という薬が、有効ということになります。
この発見は、治療法が見つかるという視点では、よいです。
しかし、BRCAという遺伝子が陽性であるということは、遺伝性のがんの可能性が高いということになります。
その結果、患者さんの血縁者の方にも、遺伝性のがん遺伝子を持っている疑いが発生します。
遺伝性のがん遺伝子を持っていると、かなり高い確率でがんになります。
つまり、遺伝性のがん遺伝子を持っていると判明した場合は、まだがんになっていない血縁者に対しても、なんらかの医療的なアクションを起こさないといけなくなる可能性が高いです。
そして、遺伝カウンセリングも、必要になります。遺伝子検査には、大きな問題点を抱えているのです。
遺伝性のがんとは?
遺伝性のがんで、有名ながんの一つが、遺伝性乳がん卵巣がん症候群です。
遺伝性乳がん卵巣がん症候群のがん遺伝子をもっている方は、非常に高い確率で、乳がんや卵巣がんになります。したがって、予防的に全乳房切除、並びに卵巣切除を推奨されています。
さて、ここまでの話を踏まえて、1つ架空の事例を提示します。
ある女性のがん患者さんが、遺伝子検査を受ける。その結果、有効ながんの治療法が、見つかる。
しかし、同時に、遺伝性乳がん卵巣がん症候群であることが、判明する。
その検査結果をみて、子どもも、遺伝子検査を受ける。
そして、その子どもも、遺伝性乳がん卵巣がん症候群の遺伝子を持っていることが、判明。
子どもは、がんの予防のために、予防的に全乳房切除、並びに卵巣切除を受けることになる。
このようなことも、今後は、それ相応の頻度で、でてくることでしょう。
遺伝子検査は、新しい治療法を探るのにとても有効ですが、同時に、遺伝性のがんであることが判明した時の、適切なサポートが重要になるのです。
本当に、これ以上の治療がないのか?
これ以上の治療法がないから、遺伝子検査を受けるというのが、今後の新しい治療の流れです。
一方で、遺伝子検査を受ける前に、本当に治療法がないか?を精査する必要はあります。
そして、治療法がないと言われた方にも、複数の治療の選択肢が残っていることが、それなりの頻度であります。