治療効果に関する主な報告
・早期乳がん・ランダム化試験(DIRECT, 相当=Nature Communications 2020)
HER2陰性ステージII/IIIで、FMDを化学療法の前後3–4日/サイクル併用。画像上の奏効率の改善、術標本でのMiller–Payne 4/5(腫瘍細胞90–100%消失)割合の上昇。(ITTではpCRは有意差なし)。安全性は許容内。
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本研究は、がん患者においてFMD(断食模倣食)が化学療法の毒性と有効性に及ぼす影響を初めて無作為化比較試験で評価したものである。HER2陰性早期乳がん患者を対象とした結果、FMD群では放射線学的および病理学的奏効率が向上し、特にMiller & Payneスコア4/5(腫瘍細胞90%以上消失)の割合が増加した。ITT解析では放射線学的反応の改善、PP解析では病理学的反応の改善が確認された。
有害事象に関しては、FMD群でグレードIII/IVの増加は認められず、デキサメタゾン非使用下でも毒性は許容範囲内であった。また、FMD群ではTリンパ球のDNA損傷が軽減し、化学療法による正常細胞障害を抑制する可能性が示された。
本試験は当初第II/III相として計画されたが、中間解析でpCR率が想定を下回ったため、第II相で終了した。それにもかかわらず、131例の解析でFMDが腫瘍の化学療法感受性を高める有効性が臨床的・病理学的に示された。
先行する小規模臨床試験や10年以上の前臨床データと整合しており、FMDは化学療法の副作用を軽減しつつ治療効果を増強する可能性がある。
結論:FMDサイクルは、早期乳がん患者において安全かつ有効な化学療法補助療法であることが示唆され、今後さらなる臨床応用が期待される。
・進行トリプルネガティブ乳がん(aTNBC)・サブ解析(INT J Cancer 2024)
初回カルボプラチン系化学療法+FMD(NCT03340935の一部) vs 化学療法単独の院内対照で、全生存期間の延長(中央値30.3か月 vs 17.2か月、HR≈0.40) を報告。観察研究的比較のためバイアスには注意が必要ですが、強く有効性を示唆するデータです。
多癌種・“例外的反応”の集積(Eur J Cancer 2022)
進行がん101例のIb試験サブ解析で、FMD併用下に顕著で長期の腫瘍反応が5例報告されました(小細胞肺がん、膵、結腸直腸、TNBCなど)。
補足)一般的な「ステージIV・再発がん」の化学療法単独の成績
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膵がん:CRはほぼ 0〜1%
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大腸がん(転移性):CRはごくまれ(0〜数%未満)
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非小細胞肺がん:CR 2〜5%程度が報告されるが、多くは短期
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小細胞肺がん:奏効率は高い(50%以上)が、長期CRはほとんどない
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TNBCなど乳がんの一部:CRが数%出ることもあるが、長期持続はまれ
→ 全体として「完全かつ持続的な寛解」は例外的にしか起きないのが現状です。
一方で、今回の報告は、
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進行/再発の多彩ながん101例のうち 5例が「完全かつ長期反応」。
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数字にすれば 約5%。
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これがもし純粋な「化学療法単独の平均的成績」と比較すれば、かなり良いと言えます。
有害事象・耐容性に関する臨床データ(効果の“下支え”)
HER2陰性乳がん・ランダム化パイロット(BMC Cancer 2015)
48時間のSTFで骨髄毒性の軽減、PBMCのDNA損傷回復の速さを示唆。
婦人科がん・クロスオーバー(BMC Cancer 2020)
**修正STF(摂取25%・96時間)**で、口内炎・頭痛・脱力などの低グレード毒性の減少、化学療法延期の減少、IGF-1/インスリンの低下。
乳・卵巣がん・クロスオーバー(BMC Cancer 2018)
60時間のSTFでQOLと疲労が改善。重大な有害事象なし。
プラチナ系化学療法・第I試験(BMC Cancer 2016)
72時間の断食は安全・実行可能で、IGF-1などのバイオマーカー変化や毒性低減の兆候。
機序の裏付け
ヒトでFMDが血糖/IGF-1低下や免疫抑制細胞の減少など、抗腫瘍免疫を後押しする代謝・免疫改変を誘導。