こんにちは。加藤隆佑です。
「血圧は“年齢+90”くらいなら薬はいらない」
「最近どんどん基準が厳しくなるのは製薬会社の陰謀だ」
…そんな話を耳にしたことはありませんか?
実はこれは誤解なんです。
血圧の基準は、世界中で長年にわたって行われた大規模な研究や治療試験の結果をもとに、「どのくらいの血圧で病気が増えるのか」を丁寧に調べた上で決められてきました
つまり、基準が変わるのは“新しいデータ”が出たからであって、誰かの都合ではありません。
薬を飲むかどうかは“数字だけ”では決まりません
血圧が140台でも、糖尿病や腎臓病がある方は薬をすすめられることがあります。逆に、他にリスクが少なければ「生活改善から」となる場合も。
つまり、「上が160を超えたら即薬」という単純なルールではなく、その人の体全体のリスクを見て判断するのが今の考え方です。
とにかく危ないのは「180以上」
血圧が180/110mmHgを超えると、年齢に関係なく脳卒中や心筋梗塞の危険が一気に跳ね上がります。
イメージでいうと、坂道を上っている最中にいきなり崖に出てしまう感じです。
研究では「正常な人の5倍以上のリスク」とも言われています。
だからこそ、まずはこの“崖っぷち”を避けることが最優先です。
病院嫌いな人あっても、血圧180以上の時は、受診を強くお勧めします。
ちなみに、
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140〜159/90〜99 mmHg は少し高いに分類
→ 年齢や体の状態によっては、あまり強いリスクにならない場合もあります。 -
160〜179/100〜109 mmHg くらいに中くらいに高い
→ 60〜70代ではリスクがはっきり出ます。80歳を超えると必ずしも強い影響が見えないこともあります。
心臓血管形の病気の既往や危険因子(心電図異常など)がある人も、高血圧によるリスクを高くする要因になります。
薬のメリットは「血圧が高い人ほど大きい」
180以上の人 → 薬を使えばリスクをグッと下げられます。
それより低い人 → 薬の効果はありますが、“得られるメリットの大きさ”は少し控えめになります。
つまり、「高ければ高いほど薬の恩恵も大きい」けれど、「少し高いだけでも薬が全く無意味」というわけではありません。
どこまで下げるかは人それぞれ
「血圧は低ければ低いほど良い」と思いがちですが、下げすぎると脳や心臓に血が回らなくなり、逆に調子を崩すこともあります。これを「Jカーブ現象」と呼びます。
だから目標は以下のような感じです。
~75歳 → できれば 130/80前後
しかし、140台でも許容されるかもしれないというデータもあります。
75歳以上 → 140台でも十分効果的、無理に下げすぎないことが大切
ちなみに、この点をもう少し詳しく解説します。
高齢の方で、血圧をどこまで下げるのがよいのかについては、まだはっきりと結論が出ていません。
特に「上の血圧を140mmHg未満に下げるべきかどうか」は意見が分かれています。
そこで日本で行われた研究では、65〜85歳の高血圧患者(治療前の血圧が160mmHg以上)を対象に、次の2つのグループに分けて2年間比べました。
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厳しく下げるグループ:血圧を140mmHg未満に保つ
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少し緩やかに下げるグループ:140〜160mmHgの間に保つ
比べた結果、確かに厳しく下げたグループの方が血圧は平均で10mmHgほど低くなりました。
ところが、脳卒中や心臓病、腎不全などの重大な病気の発症率は両グループでほぼ同じでした。死亡率や副作用による中止率も差がありませんでした。
結論として、この研究では「140未満まで下げるメリットは明確には示されなかった」とされ、今もなお「高齢者ではどこまで下げるべきか」は議論が続いています。
別の報告では、
過度な降圧は認知症のリスクを上げるという報告もあります。
無理に低くすることに必ずしもこだわる必要はないことは知って欲しいです。
まとめ
血圧基準は陰謀ではなく、科学的な研究に基づいて見直されてきたもの。
180以上は“崖っぷち”の危険ゾーン。ここを減らすことが最優先。
それより低くても薬のメリットはありますが、大きさは少し小さい。
どこまで下げるかは年齢や体の状態に合わせて調整するのがベスト。
「まずは危険なほど高い血圧を減らす」
それが健康寿命をのばすための、いちばん効果的で安全な一歩です。